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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
請負人見習い

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39/305

状態異常耐性も抜群

 

 いちゃもん君たちのパーティが出発してから少しして、ウチらのパーティも森へ入る。

 先頭にカイン、真ん中にウチ、後ろにネーナ、少し離れてアンリの順だ。

 魔物と遭遇したわけではないので、2人とも周囲を警戒しつつも、剣は腰に下げたままだ。

 ウチはハンマーを下げたら持ち手が地面に当たるので、短めに持って進んでいる。

 いきなり目の前に魔物が出てきたら、思わず殴ってしまいそうだ。


「ここはまだ歩きやすいな」

「言われてた草や木の根っこ、ぬかるみとかは見当たらへんな」

「入り口だからですよね」

「そう」


 入って少し歩いたけれど、森の中を歩く注意点として言われたような場所はない。

 まだ入り口が近く、過去に入った人たちによって踏み固められているからだ。

 注意された足が取られるほどの草や、またぐほど大きな根っこは、もっと奥の日常的に入らない場所からになる。

 ぬかるみは水場や雨が降った後、朽ちた木の近くにあるらしいけど、草原に近いと伐採されたり廃棄されたりするので、やはり奥になるそうだ。


「エル、2人に説明」

「説明?何を?」

「固有魔法。パーティを組むなら言っておくべき」

「あぁ!せやな!」


 説明だけではわからなかった。

 馬車に乗っている時はパーティを組むと思っていなかったので、狩りの方法や固有魔法については伝えていない。

 隊列も自然とウチを守るようになっているし。


「2人に言わなあかんことがあんねん」

「どうした?忘れ物か?」

「ちゃうわ!必要なものは全部袋に入っとる!そうやなくて、ウチ固有魔法使えるねん」

「はぁ?!」

「凄いね!」


 話しながら歩いていたのに、驚いた2人は足を止めてウチを見る。


 ・・・おーい。警戒警戒。よそ見は良くないやろ〜。いうタイミング間違ったわ。


「だから一人で行動してるのか」

「紹介状を書いた商人さんも正解ですね」

「そのおかげでアンリさんとも出会えたしな」


 警戒しないといけないことを伝えて、歩きながら固有魔法の内容を話した。

 ついでにどんなふうに草原ウサギを狩っているかも。

 その結果、2人は納得してくれたし、アンリさんの指導方針も固有魔法を使いこなすためならありかもと、納得していた。


「実演を手っ取り早くするなら……。お!スライムおった!」

「げっ。面倒だな。避けよう」


 固有魔法について盛り上がりながら進んでいると。森に入ってからずっと探していたスライムが、木の根付近でうにうにしているのを見つけた。

 それを報告すると、カインは道を変えようとする。

 武器が溶かされるので、避けられるなら避けたほうがいいと教わるからだろう。

 だけど、ウチにとっては脅威ではない。


「いやいや、ここでウチの出番やで」

「何するんだ?」

「こうするねん」

「はぁ?!」

「ちょっと!」

「さすがエル」


 言った側からスライムに駆け寄り、手を突っ込んだ。

 驚くカインとネーナ、なぜか頷いて納得しているアンリ。

 そんな事は気にせずスライムの中で手を動かし、魔石を掴み取った。

 途端に崩れるスライムの体。

 液体が地面に吸い込まれつつ、一部を溶かしていた。


「すげぇ……」

「これが固有魔法……」


 2人は無傷のウチの手と、手のひらの上にある大きなスライムの魔石を見て、目をキラキラさせていた。

 今回の訓練で得た報酬はパーティごとに頭割りになり、素材が欲しい場合は交渉することになっている。

 なので、スライムをウチが倒しても、2人の報酬が増えることになる。

 そうなると……。


「お。あそこにもスライムがいるぞ。エル頼む」

「任せとき」


 魔石を抜く。


「こっちにスライムがいました」

「了解や」


 魔石を抜く。

 アンリと一緒に草原で活動している時には見かけなかったスライムが、森に入ると探せば見つかるようになった。

 草原よりも魔力があって、食べるものも多いから数が増えやすいのだろう。


「スライムが対象じゃない」

「うっ。そうだった……」

「ごめんなさい」


 2人は採取物よりスライムに目が向いていたので、アンリに注意されてしまった。

 自分の常識が覆ったので、興奮も相まって動いてしまったようだ。


「ちなみに既に何個も見逃してる」

「えぇ?!」

「気付きませんでした」

「ウチもわからんかった」


 アンリの言葉に驚き、3人で周囲を見回したけれど、よくわからなかった。

 そもそも羊皮紙に描かれた絵を見たのは出発前だし、なんとなくでしか覚えていない。


「依頼品の絵があるなら見比べないとダメ」

「そうか!」


 カインが急いで羊皮紙を取り出し、近くにあった大きく育っている草と見比べる。

 ウチとネーナも後ろから覗き込んだけど、どうやら違うようで、カインも首を傾げている。


「確認は1人だけ。残りは警戒」

「そうでした」

「せやった」


 覗き込んだウチとネーナが注意される。

 慌てて少し距離を空けて警戒したけど、特に何かが近づいてきているような事はなかった。


「スライムがいると素材が見つかりやすい」

「何でだ?」

「スライム……。あ!わかりました。魔力を食べるからですね!だから、スライムの近くに素材があるかもしれないと」

「正解」


 歩きながら探し方のコツを教えてもらう。

 スライムを探していたので、あと一歩注意深く探すことができれば、見つけれていただろう。

 最初から教えてくれてもいいのではとも思ったけど、一気に言われたら覚えきれない。

 こうして経験しながら少しずつ学ぶ方が身についてる気がする。


「あった!薬草だ!」

「おぉ!」

「やった!」


 道中の木に目印の傷をつけながら、スライムを見つけた所を中心にして周囲を探した。

 その結果、カインが薬草を見つけることができた。

 その数5本。

 一気に半分集めることができた。


「ん?これ痺れキノコちゃう?」

「あ。直接触るのは……」

「え?」


 さらに移動していると、黄色いキノコが生えている倒木があった。

 羊皮紙に書かれた絵に似ていたので、掴んで2人に見せると、ネーナが驚き固まった。

 毒キノコなので素手で触るのは良くないと言いたかったらしいけど、ウチの行動が早すぎて止められなかった。

 でも、問題はない。


「固有魔法あるから大丈夫やで」

「毒キノコにも有効なのかよ」

「便利すぎますね」


 2人の驚きの声を聴きながら、小さめの布袋にキノコを放り込み、軽量袋に入れる。

 薬草も同じようにして、ウチの袋に入っている。

 普通は作業用の革手袋を使って集める物でも、素手で集めることができるので、薬草は2人、キノコはウチが担当することになった。


 ・・・ついでに固有魔法が反応するキノコは小分けにして集めとくか。何かいいものもあるかもしれんし。ん?反応しないキノコは危なくないってことやから、それも集めといた方がいいな。美味しいかどうかは別として食べられるかもしれんし。


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