表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
ウルダー中迷宮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

274/305

野菜の魔物と食魔植物

 

 救援を求めた村人は馬に乗っていたけど、ウチらは馬車での移動のためあまり早くない。

 それでも太陽が真上にきたぐらいには到着することができた。

 着いた村は宿が1軒しかなく、村の周囲のほとんどが畑になっていて、人もあまり多くないところだった。


「魔物がいる場所は村の外れです!こっちです!」

「各自警戒!いつでも武器を抜けるようにしろ!」


 ガドルフの号令で村の中を進んでいく。

 ちらほらある家の周りには人がいて、ウチらをジッと見つめていた。

 警戒されているけれど、素早く駆けつけたから安心しているようにも見える。

 ウチと同じぐらいの子どもは同じ場所に集められているようで、遠いけれど目が合った気がする。

 そうして進むことしばらく、魔物が出た割には村にほとんど被害がない。


「家とか壊されてへんけど、結界の魔道具があるから?」

「違うはずっす。野菜の魔物なんであんまり移動しないからっすよ。きっと」

「それに、結界の魔道具といっても魔物の侵入を阻むものを生成するわけではない」

「そうなん?」

「うん。結界の魔道具は魔力を定期的に放って、魔物に対して魔力のある物がこの地にあると警戒させるためのもの。弱い魔物は強力な魔力のところに近づかないし、強い魔物でもずっと魔力が放たれているわけではないから警戒して近づかない、らしい」

「へー。名前変えたらええのに」

「今更無理」

「せやろな」


 話している間に村の端まで進み、畑ばかりの開けた場所に出た。

 そこからもさらに進んでしばらく、案内の村人が足を止めたのは1番奥の畑だった。

 道中の畑には何も植えられておらず土が剥き出しだったけれど、この畑には緑が広がっている。

 そして畑の向こうには、どう考えても栽培するはずがないほど大きな白い蕾が鎮座している。

 立ったままのウチがすっぽり入れそうなほど大きい。


「あの蕾が魔物です。そして、畑の緑が野菜です」

「ここにしか野菜がない理由は?」

「周囲の畑にも野菜を植え、魔力を与えながら育てていました。しかし、少し前から野菜が萎び始めてしまい、遠くの森にある土を与えたり、魔力を込めた水を撒いたりと色々行いました。ですが、効果は出ずどんどん痩せ衰えていきました。原因を探しているうちにここまできたところ、数年前に放棄したこの畑で大量に育っていたのです」

「ここは放棄された畑だったのか」

「はい。不作が続いたので、畑を捨てて村を出て行った者が管理していたのです。一度は恨みか何かと考えましたが、あの蕾が出た場所は畑の外。恐らくあの魔物の種か何かが風で飛んできて、野菜に込めた魔力で育ったのでしょう」

「その影響が他の畑にも出たのか?」

「はい。この畑付近は全滅ですが、村に近い畑は影響ありません。他にも北側や東側も影響なしです。被害に遭ったのは南側の畑ばかりですね。ですが、日に日に影響範囲が広がっているようで、早めに対処して頂かなければ村が滅んでしまいます」

「なるほど。とりあえず一当てしてみるか」


 そう言ったガドルフが数歩進むと、蕾の近くが蠢き、緑の(つる)がグネグネと動き出した。

 その(つる)は枯れ果てた畑にも伸ばされていたようで、土を撒き散らしながらボコボコと飛び出してくる。

 恐らくあの(つる)を使って畑の魔力を吸い込んだのだろう。

 撒き散らされた土の中には、カラカラに乾いた野菜らしき物が混じっていた。

 蕾の近くにある枯れていない緑は野菜の魔物らしいけれど、なぜそこから魔力を奪わないのかはわからない。

 ウチが周りを見ている間に皆んなが武器を抜き、迫り来る(つる)に対処し始めた。

 びゅんびゅんと振り回される(つる)を切り裂いて減らす。

 しかし、どれだけ切っても土の中から新たに飛び出してくるし、迫る(つる)を意識しすぎると、足元を這って近づいてくる(つる)に巻きつかれ、宙吊りにされる人もいた。


「一度下がるぞ!固まって真っ直ぐ進んだら囲まれる!」

「エル!固有魔法は?!」

「ばっちり!問題ないで!」

「殿を頼んだわ!」

「任せときぃ!」


 ウチを残して皆んながジリジリと下がっていく。

 ガドルフが襲われ始めたところより下がっても攻撃は止まず、先頭に立ったウチに向けて四方八方から(つる)が叩きつけられる。

 固有魔法のおかげでバシバシと叩かれても全く痛くないけれど、周囲が緑一色でよくわからないことになっている。

 さらに足元ではウチを掬おうと何度も巻きつこうとしてくるものもある。


「エル!もういいぞ!」

「わかった!」


 囮の終了とともにハリセンを出し、周りとパシパシと叩いていく。

 叩かれたところから力が抜けてくたっとなる。

 根元に近い方は魔力が抜けていないから、異変を感じたのかズルズルと引きずられて蕾の方へ。

 途中からは別の(つる)が持ち上げるように、蕾へと運んでいった。

 そして蕾の真上まで持ち上げると。


「うわっ!蕾開いたで!外白いのに中真っ赤や!」


 開いた蕾はハリセンで一時的に動かなくなった(つる)を内部へと流し込む。

 他にも請負人たちが切り落とした(つる)も飲み込んでいく。

 その結果なのか、切られたところからテラテラと滑った(つる)が生えてきた。

 見た目は良くない。


「なんなんやろなあの花」

「たぶん食魔植物。魔力のあるものを食べて育つ。花は魔力が豊富で香料としても使える。葉っぱは甘みが強く、乾かしてからお湯で煮込むと美味しいもの」

「美味しいんやったらしっかり確保せんとな!ちなみに、なんで近くの野菜は食べへんの?」

「それはわからない。仲間なのかもしれない」

「野菜が?」

「野菜が」


 子育てでもしているのだろうか。

 全部食べ終えたのか、花が閉じて(つる)が土の中へと潜っていった。

 ウチらと距離もあるから落ち着いたのだろう。

 この後は休憩を取りつつ作戦会議だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ