素材採取コンビ結成!
【祝】200話達成!
トラップモンキーの巣を荒らした後は、他の素材を採取しつつ帰還の魔法陣へと向かった。
そして屋台でミミとエリカに蔦の種こと『縛り蔦の種』を渡して、暴漢に備えてもらう。
使い方はエリカが知っていたから、ミミに教えてほしいとお願いして後にする。
そして残った素材を組合で買い取ってもらい、組合長からの依頼に対して完了報告をしてから、報酬を山分けにした。
この後どうするのか話し合うために、請負人が汚れた姿のままでも入れるような食事処に落ち着く。
まだ夕食前の微妙な時間だからか、店内は閑散としていた。
喋るにはもってこいだ。
「お疲れ様っすー!」
「お疲れさーん!」
シルヴィアはお酒、ウチは果実水で乾杯した。
入って早々打ち上げでつまめるものをと頼んだからか、まずは茹で野菜の盛り合わせと塩の山が出てきた。
肉類は今調理しているところだろう。
それをつまみつつどちらともなく感想を言い合う。
シルヴィアはウチの固有魔法について。
ウチはシルヴィアの移動速度や採取の速さについてだ。
「いつもなら勢いをつけて1袋、上手く取れたら2袋な素材が、10を超えてたっす!いやー、エルの固有魔法様様っすね!」
「そんなに効率が変わるんか!助けになってよかったわ!」
いつもの5倍以上稼げているということだ。
他にも素材は取っていたから、実際はもっと稼いでいることになるだろう。
アンリは自分の欲しい素材しか集めなかったし、組合には売ってないから、ウチの稼ぎは0だった。
お金を使うのは屋台の仕入れや迷宮に行く時の食料ぐらいで、屋台の売上や掃除の依頼をこなしたことによる報酬を考えると、基本的に日々プラスになっている。
そこに今回の報酬も乗り、さらにはジャイアントスライムの魔石にはまだ値段がついていない。
ここらで大きな買い物をしてもいいとは思うけれど、欲しいものは思いつかないし、武具を新調することもない。
ちょっと体が大きくなったから服を変えたぐらいだ。
「相談があるっす」
「ほうほう。聞こか」
茹でられたブロッコリーにフォークを突き刺しながら聞く。
「わたしと正式にコンビを組んでほしいっす!」
「んー?コンビ?」
今回の指名依頼だけでなく、今後も2人で色々な依頼を受けたいということだろう。
報酬が1人でやる時の5倍以上になるのだから気持ちはわかる。
しかし、ウチ1人では決められない理由がある。
「ウチパーティ入ってんで。アンリさん以外に獣人が3人おるねん」
「そこから抜けるのは無理っすか?」
「ウチの保護者みたいなもんやからなー。無理やな」
ちゃんとした理由があれば抜けられるかもしれないけれど、新しい人と組むから抜けるは理由になるのだろうか。
子どもを放り出すようなものだし、キュークスが許さないだろう。
さらにアンリはウチを観察するためについてくるだろうから、コンビを組むのは難しそうだ。
「むむっ。じゃあじゃあ、わたしをパーティに入れてほしいっす!そして2人で素材採取担当をするっす!」
「パーティうんぬんはウチには決められへんわ。依頼で一緒に行くんじゃあかんの?」
「それだとウルダー限定じゃないっすか。わたしはいつか大迷宮にも行きたいんすよ」
「ウチもいつかは行ってみたいとは思ってるで。いつになるかはわからんけど」
「目的も一緒ならパーティに入れてほしいっす!」
重ねて言われても決める権限はウチにはない。
ガドルフがリーダーだから、ガドルフに言えばいいんだろうか。
パーティのことだから全員の許可が必要そうな気もするけど、アンリの時はさらっと決まったから流れがわからない。
「だからウチには決められへんねんって。しばらくはウルダーおるから、採取行く時誘ってくれたらええやん。ほんで、そのうちパーティの話すれば?」
「……それしかないっすかね」
「そんな急がんでもええやん。それとも急ぐ理由あるん?」
「急ぐ理由はないっすけど、請負人なら早く行動したいじゃないっすか。だって、いつどうなるかわからない仕事してるっすよ」
「まぁ、せやな」
魔物にやられるかもしれないし、大怪我するかもしれない。
急に迷宮が拡大されて、新しいエリアができるかもしれないし、街でいざこざを起こして居れなくなるかもしれない。
考え出したらキリがないけど、シルヴィアの言う通り行動は早い方がいいだろう。
「それに、エルと一緒なら攻略に手こずっている沼地エリアもこう、ざぱーっと分かれて進めそうっす。そうしたら未発見の素材とか取り放題っすよ。あぁ〜!早く行きたくなるっす!」
「ちょいちょい、落ち着いて食べようや」
「あ、これは申し訳ないっす」
いくら閑散としていても数人の客はいるし、店主や給仕もいる。
請負人相手に店を構えているから、こんなことも日常だろうけど、うるさ過ぎるのはよくない。
周囲にぺこぺこと頭を下げて、食事に戻る。
「うーん、とりあえずは結果出してからちゃう?」
「結果っすか?」
「そうそう。ウチと組めばこんなこともできるんだー!って結果出せば、パーティにも入りやすなるやろ。今は一回しか迷宮入ってへんし、成果はすごいんやろうけど、ウチはまだよくわかってへん。説得する材料っちゅうの?それを集める方がええんちゃう?って提案。あ、お肉来たな」
言いたいことを言い切ったと同時にウサギ肉のステーキが出てきた。
赤ワインと血を使ったソースがかかっているけれど、これは大人向けの味でウチは好きじゃない。
ソースをフォークの背で削ぎ落とし、茹で野菜の時に出てきた塩を摘んでかける。
そうして熱いうちに口に含み、肉汁と塩を楽しんだ。
付け合わせの焼き野菜も塩で食べることは忘れない。
「確かにそうっすね……。実績のない今はわたしのわがままっす。それにエルの固有魔法は唯一っすけど、素材採取する人はわたしだけじゃないっす」
「まぁ……せやな」
効率や採取の腕はさておき、身体強化ができれば採取地を回ることはできるだろう。
シルヴィアの強みは身のこなしと、圧倒的な速さだと思う。
他の人より機敏に動けるなら、そこを推せばいい気がする。
「選んでもらえるように努力するっす!」
意気込むシルヴィアにウチの弱点である動きが遅いことや力がないことを改めて伝える。
さっき考えたシルヴィアの強みも合わせて話した。
下手に変なところを伸ばそうとしても意味がないし、どうせならウチに不足しているところを補ってほしい。
一緒に迷宮に行っても楽しかったから、どうせ組むならシルヴィアがいいと考えているのもある。
ちょっと恥ずかしいから、これは言わないけど。
「とりあえずは、また今度迷宮行こ。ほんで色々素材集めてみたらなんか掴めるやろ。なんなら沼行ってもええし」
「そうっすね。じゃあパーティは置いといても、わたしとコンビ組んでほしいっす。つまるところ優先して素材採取協力してほしいってことっすね」
「結局コンビ組むんやな。ええけど」
このやりとりはなんだったのかと思わなくもない。
最初から優先的に素材採取に付き合うだけなら、即答できたのに。
・・・あ!パーティの話したんウチやん!もしかしてややこしくたのもウチのせいか?いや、勘違いさせるようなこと言った方が悪い!ということにしておこ。結果オーライや!




