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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
ライテ小迷宮

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固有魔法のコツを掴んだかもしれない

 

 固有魔法が使えなくなった、いや、魔力が尽きてから1日目は街医者のところに入院。

 翌日は請負人組合に行って、ジャイアントスライムに挑んだ見習いを痛ぶる炎刃(えんじん)のセーラを見てのんびり過ごした。

 3日目には何となくぼんやりした感じが薄れた気がしたけれど、アンリが魔力を見てもほとんど変わっていなかった。

 その日も外で食事を楽しむ程度しかできなかった。

 そして4日目。


「おぉ!固有魔法発動したんちゃう?」

「胴回りだけ」

「手足に力入らんしそんな気はしたわ。ハリセンは……()っさ!手のひらサイズやん!持ち手なんて指二本でいけるわ!」


 少しだけ固有魔法が発動したので、退魔のハリセンも出してみた。

 手のひらに収まるほどの大きさで出てきたハリセンは、効果こそ変わらないものの威力はサイズ相当まで落ちていた。

 アンリが出したウチの顔ほどもある水の玉を消し飛ばすことができなかったぐらいだ。


「今日は仰ぐのにちょうど良いサイズやな」


 5日目のハリセンは片手で持てる小ぶりな物で、風を起こすのにちょうどよかった。

 守りは肩や腰回りまで広がっていたけれど、完全とは程遠い。

 穴が空いていなければ、そろそろ完全復活するはずだけど、ウチの場合まだ半分といったところだった。


「完全復活!やんな?」

「まだ。魔力があまり溢れ出てない」

「え〜。手足にしっかり魔力流れてるはずやで」

「それは合ってる。背中から出る量が少ない」

「そうかぁ……」


 10日で攻撃を弾けるようになったし、退魔のハリセンも元の大きさに戻ったけれど、アンリからすると万全ではないらしい。

 ウチの感覚としては全身に力が入る上に、危険なところは感覚でわかるから問題ない。

 今の状態だとウチを装備できないだけだから、ジャイアントスライムを倒しにいくことはできる。

 保護者が行かせてくれないけれど。


「今度こそ完全復活?」

「そう。実感ない?」

「ウチからすると10日目と同じやもん」


 アンリから完治の判断が下されたのは、ウチが暴走してから12日目だった。

 長い間休んでいたけれど、ウチ必須の仕事は掃除依頼ぐらいしかなく、ミミも屋台で忙しく働いていた。

 スライムフィーバーは相変わらず続いているし、組合長の読みでは迷宮王国の需要を満たすだけでも数年から十数年。

 周囲の三国に輸出することを考えればもっと長い間続くだろうと言われた。

 そこまで続くと立派な産業だろう。

 小迷宮伯も何やら考えがあるようで、空いている土地に大きな建物を作り始めていた。


「見て見て!小さいの出せるようになった!」


 体の調子を確かめながら、魔力が不足している時のハリセンを出そうとしたらできた。

 手のひらサイズから、ぱたぱたと仰ぐのに最適なサイズ、いつものハリセンサイズに細かく微調整もできた。

 さらに細長くしたり、逆に極太にすることもできた。

 ハリセンの形を変えることはできないけれど、細長くすれば高いところの掃除に役立つ。

 固有魔法が使えない間は暇だったけど、こんなことができるようになったから良い経験だったと言える。

 そんな風に1人納得している横では、アンリがウチの魔力を見ていた。


「魔力は安定している。形を変えるのは問題ない」

「そかそか。じゃあ溜まってる掃除の時にさっと使ってみるわ」


 休んでいる間にウチを指名した掃除の依頼が3つ増えていた。

 迷宮ですることもないから、しばらくは掃除を頑張るつもりだ。

 合間に何か閃かないかと市場にも行くつもりだけど、寒くなってきたから食べ物よりも毛皮製品や織物が増えていてピンとこない。

 そう考えると固有魔法が使えない間は寒かった気もするけれど、厚着させられた上にほとんど室内だから印象が薄い。


「まだ確認することがある」

「え?なんかあったっけ?」

「魔力を放出できるかを試してほしい」

「あぁ、見習い助ける時に使ったやつか。う〜ん、やってみるけど咄嗟やったからなぁ……。体に力入れたぐらいしか覚えてへんわぁ」


 むんと力を入れてみても体が強張るだけで、背中から魔力が放たれることはなかった。

 ハリセンを背中から出すようなものかと考えてやってみても、ハリセンは手の中にしか出てこない。

 ハリセンを出した状態で力を込めても結果が変わらなかった。


「あかん。無理や」

「仕方ない。なら、ハリセンを大きくすることはできる?」

「形変えるんやなくて?やってみよか。……むむむっ……」


 背中ではなく、ハリセンを持った右手に力を込めてみた。

 しかし、手の震えでハリセンがブレるだけで大きさは変わらない。


「もう少し」


 諦めようとしたらアンリが続けろと言ってきた。

 見えている魔力に変化があるのだろうか。

 言われたとおりにしばらく続けて見たけれど、結果は変わらなかった。


「あかんなぁ〜」

「ハリセンを振る前に背中に近づけてみて」

「ええけど……。なんか起きてるん?」

「エルが力を込めている間、背中から出てくる魔力の密度が変わった。少し纏まっていた」

「ほー。ならやってみよかな」


 何も起きていないならあまり回数をこなすつもりはなかった。

 しかし、魔力がまとまっているのならやってみてもいい。

 纏まることで何が起きるのかはわからないけれど。


「グッとやってシュッと持ってパーン!」


 力を入れたままだと上手く振れなかったから、振る前に力を込めてサッと背中にハリセンを回して振り抜くやり方になった。

 その結果、ハリセンの見た目は変わらないけれど、纏った魔力が増えて威力が上がった。

 しかも、纏わせた魔力は振ることで飛ばすこともできている。

 残念ながら見えないけれど、ウチの攻撃が少しだけ遠くにまで及ぶようになったということだ。

 大体扉2枚分ぐらい。

 使い所が思い付かないけれど、明日からの掃除で試してみるつもり。

 魔力をぶつけるだけだから壊れない……はず。

 対象に魔力がこもっていないイスや机を相手にすれば問題ない。


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