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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
ライテ小迷宮

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迷宮騎士の任務化

 

 ビッグトラウトカツは知る人ぞ知る幻のメニューになってしまった。

 料理長が試した結果を領主の料理人に報告。

 ちょうど訪問に来ていた他領の領主がそれを食べて虜に。

 しかも、その領主がビッグトラウトだけでなく通常のトラウトも多く獲れる領地の人だったから小さな騒ぎになったそうだ。

 元々あまり数が入ってこないライテ小迷宮都市では、他所の貴族が気に入った料理として噂が立つ程度。

 実食した料理長と組合長近辺では、ビッグトラウトの取引希望が急増。

 ウチには小迷宮伯からお礼兼レシピ代として金貨5枚が渡された。

 お世話になった分のお返しだったのだけど、貰えるものは貰っておく。

 また何か思いついたらお裾分けすればいい。


「おぉ?なんか知らんけどお揃いの装備の人多いな」


 スライム階層へと続く階層主部屋前の広場はとても賑わっていた。

 吸い取るくんが山のように用意されていて、請負人たちが列をなして受け取っている。

 そんな中、以前は見かけなかった揃った鎧の集団がちらほら混じっていたので、気になってしまった。

 そのウチの呟きに反応したのは、仲間が依頼を受けに行っているから手持ち無沙汰なよく見かけるおじさんだった。


「お?魔石狩りじゃねぇか。あれか?階層主倒しに来たのか?」

「せやで。おっちゃんはずっとここおる気がするねんけど、ちゃんと帰ってる?」

「もちろんだ。ある程度依頼を受けたら帰って酒を飲んでるさ」

「それなら良かった。で、あの人たちはなんなん?」

「何ってそりゃ……迷宮騎士だろう」

「おぉ!言われてみると確かに!普段会えへんから気づかんかったわ!」

「そうなのか……」


 おじさんに呆れられた。

 迷宮都市で二つ名がつくほど活躍しているのに、迷宮騎士を見たことがほとんどないのは、ある意味品行方正らしい。

 自分から悪いことはせず、巡回されている変なところにも近づかず、朝潜って夕方には出るような攻略だからだそうだ。

 出る時間はジャイアントスライムを倒し終わったタイミングなだけで、以前はそこに騎士が来ていなかっただけな気がする。


「迷宮騎士たちはな、誰かさんのせいで求められているスライムの皮を採取するために動員されたそうだ。依頼を受けている請負人もいるけどよぉ。全く数が足りてないらしいぞ」

「へぇ〜大変やな。誰かさんは反省するとええな」

「いや〜、誰かさんは反省してないな。俺の目で見てるから間違いない」

「せやな。別に悪いことちゃうし、街が潤うならええんちゃうかなって誰かさんは思っとるやろな」

「違いない。俺たちも割りのいい依頼を受けられてるし、誰かさん万歳だ。まぁ、迷宮騎士の皆さんは依頼じゃなくて特別報酬って形で働いている分大変だろうけどな」

「それはまぁ……なんというか、そういう仕事を選んだんやから仕方ないと諦めてほしいわ」

「そうだな。貴族は色々しがらみがあって面倒そうだ」

「同感やわ」


 請負人は自分で依頼をこなさないと稼げない。

 迷宮騎士は上から命じられたら依頼関係なくスライムの皮を取らされる。

 安定した仕事と将来性は迷宮騎士だろうけど、やっぱりウチは請負人として自由に生きたい。

 お金なら固有魔法で稼ぐことができているし、ここが無理になっても何とかなるだろう。

 危険すぎて人が近づけない場所の採取とかで稼げば。

 そんなことを考えつつ、おじさんと別れたウチはスライム階層をのんびり歩く。

 少し前とは違って、耳を澄ませるとどこかで誰かが戦っている音が聞こえるのがとても嬉しい。

 1人で進むしかなくても、周りに誰かいるのはいざという時に安心できる。


「お?迷宮騎士の皆さんやん。ちょっと覗いていこ」


 鼻歌混じりにスライム階層の3階を歩いていたら、曲がり角の先に迷宮騎士がいた。

 どうやら数体のビッグスライムが出てくるこのフロアで皮を集めているようだ。

 せっかくだから見習いではない人がどう戦うか見せてもらうことにした。

 水生みの魔道具でのんびり美味しい水を飲みながら。


「押さえる!左右から魔道具を!」

「は!」

「了解!」

「伸びてくる触手は私が!」

「2体はこちらで倒しておきます!」

「頼んだ!」


 3匹いるうちの1匹から皮を取ることにしたようで、盾で押さえている間に左右から吸い取るくんを差し込んでいる。

 1つだけでも吸い取るよりも減りが早く、押さえる負担が軽くなるのだろう。

 それでも伸ばしてくる触手は別の騎士が切って援護している。

 残り2匹は採取に参加していない騎士が、剣で切って簡単に倒していた。

 剣技に詳しくないけれど、ただ倒すだけならば同じようにスライム狩りをしている請負人より強い。

 練度が違うのか、装備のおかげかはわからないけれど、武力のある請負人たちが好き放題しない理由が何となくわかった気がした。


「む?子ども?」

「隊長、魔石狩りです」

「あぁ、そういえば子どもだと報告があったな」


 ウチが見ていたように、向こうもウチに気がついた。

 変に絡まれることなくお互いの情報を交換するだけで終わったけれど、騎士に話しかけられるのは理由もなく緊張するな。

 ちなみにセーラと副官のお兄さんは例外。


「ほな!」


 迷宮騎士と別れた後も、いくつかの騎士と遭遇した。

 請負人は複数で出てくるこのフロアで狩ることはせず、1匹ずつ確実に。

 迷宮騎士は複数の中から素材を取る相手を決めて残りを殲滅。

 どちらも安定を取っているようだけど手段が違う。

 いろいろなやり方があるんだなぁと感心しながら、ウチはジャイアントスライムをいつも通り倒して帰還した。


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