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大人になるために必要な幾つかの事柄

作者: 霜月叶手

今年度から社会人になった作者が一ヶ月経って思ったいろいろなことをまとめました。たった一ヶ月しか経ってなくてまだまだ新米ではありますが、それでもわずかばかりに感じたことを忘れたくなくて書きました。今後いくらでも気持ちが変わることはあるかもしれませんがそれはそれで悪くないことなのだと思います。

 通勤途中のバスの中。雨ということもありいつにも増して人が多い。つり革を掴んだ手とは反対の手でスマホを弄りつつ、学生時代に比べ早い朝に一つ欠伸をした。


 子供の頃になりたかった幾つかの夢の一つすら叶えることのないまま大人になった。でもそれを大して悲しいことだとは思わなかった。ある種の諦観といえばそうなのかもしれないが、とりあえずその気持ちに気づいた時、それが大人になることなのだと結論づけた。


 子供の頃抱いていた大人への憧れなんてものも幻想だと悟った。20歳になれば飲めるお酒は美味しいものだと思っていた。煙草は魅力的なものだと思っていた。いざ自分が大人になって感じたのは大人だから好きになれるわけではないということだ。何度も飲んだがビールを美味しいと思ったことは一度もないし、煙草は臭くて吸おうとも思わなかった。

 

 自分を大人だと言ってはいるが、自覚があるのかと問われれば自信を持って答えることはできないだろう。とりあえず就職して働いて、親の扶養から外れたら自動的に大人になるのだから。いや大人にされるのだ。


 昨今の状況を鑑みて研修はオンラインになった。まるで味気なくて、監視もない個室に閉じ込められて、ラッキーだと言わんばかりに画面を見ながらカメラをオフにしてスマホを触っている。これのどこが大人なのだと我ながら笑った。


 定時になると残業をする先輩上司にお構いなくすぐに帰宅する。どうせ残ったところで出来ることなんてないし、だったらとっとと帰った方がまだ生産性があるというもの。


 職場を出ると雨は上がっていた。晴れてはいないけれど頬を撫でた生ぬるい風は悪くなかった。帰りのバスも相変わらずそこそこの人で座ることすらできない。けどそれも慣れてしまえば割と気にならないものだ。


 一人暮らしだと申告したのに何故か世帯用の宿舎にされた。そのおかげで馬鹿みたいに多くて広い部屋を持て余して、それもまあ話のネタになるかと雑に納得して日々を過ごす。


 溜まった食器を洗うとき、洗濯物を干すとき、掃除機をかけるときに自然とお気に入りの歌を口ずさむ。


 そんな当たり前の日々を過ごすだけで大人の条件とか難しいことの殆どがどうでも良くなって、それこそが大事なことなのだと気づかないままでいる。変わろうと変わるまいとそんなことはどうだって構わない。


 昔も今も例え未来でも、僕は依然僕のままなのだから。


 今日は金曜日。やることは全部済ませて風呂にも入った。母親が置いていったキンキンに冷えたビールを片手にテレビの電源を入れ、ヘッドセットを装着し、いつものゲームを起動する。


「やるかー」


 学生時代の友達との弾む会話に高揚し、久しぶりに飲んでみたビールはあいも変わらず少しも美味しいとは思えなかった。


 





年齢近い方いたら話してみたいですね。正直言って僕にとって働くことはお金のため以外理由は何一つないと思っています。面倒で仕方がなくて、でもだからこそわずかばかりの幸せにすら心動かされることができると思いました。でもよくよく考えると苦しいとかめんどくさいことってないに越したことないんですよね。あれ?一ヶ月しか経ってないけどもう働きたくないです...

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