7. 閃きと直感と極論とデストロイヤー(幼馴染み視点)
パリンと音を立てて、武器が粉々に砕ける。
刻まれた付与魔術の刻印は色を失い、役割を果たせなくなる。
「ダメだ、こんなんじゃ足りないです。ルトの付与魔術に耐えきれない。ミスリルでもダメなら、アダマンタイトかオリハルコンぐらいしかもう……」
アルケミーが作れる最高の素材のミスリルを壊してしまった。
もうこれ以上の付与魔術は無駄かもしれない。強い付与魔術は素材が耐えきれない。
グラトンに渡したあの短剣だって、本来は何度も使えるようにとスミスと協力して作ったのに。能力を盛りすぎて、使い捨ての出来損ないになってしまった。
グラトンは喜んでくれたけど、ルトとスミスは複雑な気持ちだった。
「あと一週間しかないのに」
一週間。それがルト達に与えられたタイムリミット。
グラトンがいつも無茶な要求をしたときは、決まって一週間後にはグラトン自身がどうにかしてしまう。
だから、ルト達は一週間以内に彼の元に行かなければならない。
でも……
「今のままじゃ、無理。どうにかしないと」
ルトのソウルスキルは『付与魔術』。強くなるには、これを利用しない手はない。
ルトは自分の手を見つめて、ふとあることを思いつく。
「付与魔術……能力を付与する魔術。刻印を刻めばどんなものでも可能。どんなものでも……」
ルトはいてもたってもいられなくなって、自分の考えを直ぐに試す。強くなるために。
俺は鍛冶場で鉄を打つ。
俺にできることは武器を鍛えることだけだ。ソウルスキル『鍛冶』の俺は武器を作るのが仕事だ。
「こんなで本当に強くなれるか、よっ!!」
小槌で鉄を真っ二つにする。
少し力を入れたらこれだ。脆い、脆すぎるんだ。俺たちのパーティーは良くも悪くも吹っ切ってる。
そんなパーティーメンバーに合わせた武器が必要なのに、肝心の俺がこの様だ。
「せめて戦闘でも役に立てればと思ったが、火竜と戦って実感した。今のままじゃあ無理だ。力業で誤魔化してきたが、このままじゃあジリ貧だ」
だから頭を使え俺。
力で無理ならば知恵で勝てばいいんだ。考えろ、考えろ。
「嗚呼、もう無理だああぁぁ!!」
爆発寸前の頭を地面に叩きつける。
考えるのは苦手だ。だったら、自分の勘を信じるしかない。
「鍛えるしかない。鍛えて治すのが、俺の仕事だ。武器も防具も俺自身も鍛え抜いてやるぞ、この野郎!! 俺は鍛冶師のスミスだ!!」
俺は俺自身を鍛えることにした。
それが俺が強くなる方法だと、勘が言っている。
ソウルスキル『異次元魔法』を効率的に使う方法を、私は考える。レアスキルだ。
異次元と干渉してマジックバックのように使ったり、転移魔法にも応用可能な強力な魔法だ。
強くなるのも、比較的に簡単だろう。
「ルトがエンチャントした使い捨ての剣を私の魔法で沢山ストックして、使いながら戦う。あとは魔力消費は大きいけど、内部破壊もできる。だけどそれは……」
本当に私が強くなったと言えるの。
私の魔法は便利だ。だけど、それでは駄目なのだ。それをさっき嫌というほど実感したではないか。
火竜との戦い、妖精の悪戯。私はその両方に対処することができなかった。
「私はまだこの魔法についての理解が足りない。」
私以外にこのスキルを持っているの人は、世界でも片手で数えるほどだ。
ましてやソウルスキルとして所持しているのは、私だけだろう。
「確かめるしかありませんか」
次元の裂け目。異次元のその先、誰も見たことがないブラックボックス。
私は異次元に足を踏み入れる。その先に強さを求めて、
僕のソウルスキルは『錬金術』だ。錬金術は錬成と創造の積み重ねがものを言う、急に強くなることはできない。
僕ができるのは積み重ねの成果を見せることだけ。
グラトンさんの無茶振りがいつきても大丈夫なように、準備を重ねてきた。
試行錯誤を繰り返して辿り着いた、僕の錬金術の根本。
「頼んだよ、デストロイヤー」
仕上げの魔石を埋め込むと、それは静かに動き出す。
これが僕の強さに対する答えだ。