MERILLA(輪廻 終)
念の為に大量購入したロキソ◯ン。
念の為に。だ。
万が一にも我がおしりに問題が起こることは避けたい。
おしりが裂ける事も避けたい。
閻魔はそんなことを考えながら、ゴリラとして転生して行った彼らを思っていた。
だって、転生後は関われないから。
何にもしてあげられないから。
どこの動物園で、幸せそうな家族に写真とか撮られてるのか。
はたまた、野生のゴリラとしてガッツリグループのアタマを張っているのか。
「あぁ、また胃が痛い…」
「オ、オエーップライズメ!!」
そう、閻魔、彼もまた、懲りない。
明らかな胃薬のオーバードーズである。
飲まれる側の胃薬でさえ、袋から出るのを躊躇しているレベルである。
めちゃくちゃカッサカッサしても最後の方まで出てきてくれやしない。
今日は部屋がやけに静か。
それもそのはず、地獄にも、いや、地獄なのに夏休みとかいう制度がありやがる。
司命、司録、ともに母方のお婆ちゃん宅で親戚たちとの炎会をするらしい。
おかげで閻魔は今1人、静かな空間で寂しさと嬉しさの中間地点を取ったつもりで取れていない可能性の高い時間を過ごしていた。
「これはこれで寂しいな…
ドムンッ!ドムンッ!
ドアがリズムよくノックされる。
!?
「何事だ?入れ。」
そこには、通称「更年期障害」と呼ばれている飲み会等にはなるべく誘わないタイプの鬼が新たな被害…生贄を連れて立っていた。
「いーつまでもブツブツ言ってんなよ!おーとこだろ!おーんななのかよ!バシッと生きろよ!イライラすんだよ!お前にじゃねえぞ!俺にだよ!」
えらいこっちゃ。
「閻魔様!こいつはね、自分は何にもしないのに人にばっかり仕事押し付けてね!刺されて死んだの!イライラするう!」
これには閻魔も困惑。
何せ今は1人だ。
「あ、うん、ありがとう。じゃあその罪人は責任持ってルレる(ルーレットさせるの略)から、あなたは持ち場に戻ってくれるかな?」
「あー!!イライラする!なんだろう、腰が尋常じゃないくらい痛いわ!」
「あ、あの良かったらロキソ◯ン、いる?」
「閻魔様、ありがとう!ロキソ◯ン効くんだよね!ね?ありがとう!」
スタスタスタ…ギュゥアリィィィン
バタン。
「ふう」
そして、何も知らずに連れて来られた刺された者はもちろん疑問を問いかける。
「あの、転生できると聞いてきたんです。本当でしょうか?私は生前と同じく、ガツガツ仕事がしたいのですが」
(今日は1人だ…不安だが、平常心平常心)
「あれをみよ」
「!?」
【1.ゴリラ、2.何かしら丸い形のやつ、3.ゴリラ、4.メリラ、5.ルーズリーフ、6.変な消しゴム】
しまった…なんだ?メリラってなんだ?ゴとメの書き間違いなんてあるのか?疲れすぎてるな…うーん
「あ、あの、これは?で、メリラって…
「メゴラだ!」
「は?え?」
「メゴラっていう顔がすごい気持ち悪い怪物だ!アフリカとかにたまにいるやつだ!細かいことはいいから早くルーレットを回すのだ!」
よし、押し切った。
回り出すルーレット。
「ストップは自分で言うのだぞ。良い転生を祈る。」
「ぐ、ぐぅ、す、ストップ!!」
ランプの回るスピードがおちる。
真っ暗になった部屋の中、ルーレットランプが止まり、灯りが灯る。
止まった場所は…
メリラ。
「あ、あの…生態的には…
「ごたくはよい、お主はメゴラ、良いな、メゴラとして生きてゆくのだ。気にするでない、気持ち悪いのは顔だけだ」
「え、閻魔様、ちょ、ちょっとそれはさすがに…
「ザ・転生!!」
ふぅ、一応記録帳には書いておくか。司録も司命もなんだかんだわかってくれるであろう。
プルルルル、プルルルル
「あ、司録、明日来るとき胃薬買ってきてね。お疲れ様〜」
地獄はまだまだ続くのである。