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一週間後の約束

悠さんが彼女の家に遊びに来てから1週間が経った。

相変わらず彼女は「また遊びに来るかな?来るよね?ね?ね?ね?ねぇねぇねぇー!」と僕に話しかける。何回目だろうか。いや、何回どころの話じゃない。何十回、何百回とこの会話が続く。(主に一方通行で)

「そんなに会いたいなら会いに行けばいいじゃないですか。恋人なんでしょう?家ぐらい知ってるんじゃないんですか?」

何回も繰り返されるこの会話に辟易してきた僕はそう切り出した。

彼女は「悠の家にお呼ばれされたこと一回もないんだよぉ…。彼女なのにさぁ…。他の女でも連れ込んでイチャコラやってるのかなぁ。まぁ、別に嫉妬じゃないですけどね!!!!!!!寂しいなんて一言も、これっぽっちも思ってませんよーだ!!」とリスみたいに頬を膨らませる。なんとも言えないが、彼女のやっている事は可愛すぎる。


「そんなに寂しいなら連絡取ればいいのでは?」

「この時期、向こうめっちゃ忙しいって言ってたから無理だと思うよ。昨日電話してみたけど繋がらないしさぁぁぁぁぁぁぁぁ!はぁ…。飽きられたのかな?とうとう、飽きられたかな?飽きられたんだよねぇ?捨てられる寸前ですかこの状況は!」

ネガティブ思考が止まらなくなってる彼女は、「飽きられてるの?」と答えられない質問を僕に投げかけてはむくれ、投げかけてはむくれ、最終的には料理中である僕の胸ぐらを掴んで前後に揺らし始める。

包丁持ってる身として、危ないことこの上ないので辞めて欲しいのだが、今この状態の彼女に何を言ってもダメなことは何回も経験してるので、彼女に刃が当たらないように頑張って料理するしかない。

「危ないですから離れてください。包丁持ってるから離して!」

でも、彼女はやり続ける。

「鬼の肌は頑丈だから、人間が作った刃物なんかで切れやしないよ!だぁいじょうぶだって!ここは年上の私の言葉を信じて料理続けてよ。」

んな無茶ぶりやめてほしい。

チリッ…。

「っあ、いったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

案の定、包丁で指を切りました。

猫の手してたのに親指を切りました。

第1関節を切りました…。

患部から滴る紅いのが美味しそうで………ジュルリ…

いや違くて!!!!!!!

「うわぁああああああああぁぁぁ、待って待って待ってええぇぇえええええ!ほ、ほ、ほうれん草が勿体無いぃぃぃぃぃぃぃぃ。1番新鮮なやつ見つけてきたのにぃぃぃぃ。もう!貴女は酷いです!食べ物粗末にして!僕が料理してるときは嫌なことがあっても近づかないでください!食材ダメになるんで!……………ぁぁぁぁぁぁぁあ、今日は貴女が大好きと言っていたほうれん草の胡麻和えをやろうと思っていちばん新鮮なやつ見つけてきた僕の苦労が水の泡です。今洗ってるので多分大丈夫だとは思いますけどね、味は保証できませんよ。」

自分の親指、怪我の心配より食材の心配が大きかった僕は彼女に自分の血が付かないように気をつけて彼女を剥がした。

彼女は「ごめんなさい………」と、さも謝ってます感出してる、けれど、僕は知っている。

これは、絶対反省してないやつだってことを。


~夕食後~


僕の奮闘虚しく、ほうれん草の胡麻和えは出来ませんでした。

彼女の好物作れませんでした。

ほうれん草が血を吸って(養分と間違って?)赤黒く変色したので無理だなこれはと判断して生ゴミにポイっと……。


彼女はというと………。

愛しの彼との連絡がようやっとついたようで、お話中です。

「あ、ねぇねぇねぇー!今度遊びに来る?」

「悠の家に遊びに行かせて!いいでしょー?」etc.....楽しそうですね。

「しーちゃん!」

僕の名前を呼んだ彼女。

「なんですか。」

僕は呼び掛けに応える。

「来週の木曜日、悠の家に遊びに行くからしーちゃんも一緒に行くよ!」

満面の笑みで僕に言った彼女。

「どうして僕もなんですか?恋人なんでしょう?2人仲睦まじく過ごしてくればいいじゃないですか。なんで僕まで…。行く必要性ありませんよ。」

お二人の仲を邪魔したくない、いや、本当に。

おじゃま虫でしかないのに。

「悠もしーちゃんに遊びに来てほしいんだって!向こうからお願いされたの初めてだから!聴いてよほしいなー!」

悠さんが?なんですとぉ………。

「邪魔じゃないんですか?」

邪魔だろ絶対に。

「邪魔じゃないってよー!ね?一緒に行こ!」

いや、他の回答返ってきたよ。マジすか。

「わかりました。そのリス顔やめてください。笑うからww」

僕が行かないって言うと思ったのか、彼女はまたリス顔をかましてきた。

「笑った!OKってことでいいね!」

笑ったのをOKと捉えた彼女。

「どんな服装がいいかなー?後でショッピング連れてくから、ついてきてね!」

彼氏さんの家に行く予定ができた彼女。

ルンルンだ。楽しそうだ。嬉しそうだ。

見てるこちらまで嬉しくなるような笑みを浮かべて携帯を持ったまま跳ねる跳ねる。

遠足行く前日の幼稚園児みたいで可愛すぎるのだが。


一週間後の木曜日、悠さんの家に行くことになった僕と彼女。


一週間後の僕は一週間前の僕を恨むことになる。

なんであの時……!!!!!!!と。

それは、何故か………。

最悪の出来事が起こってしまったからだ。


………僕は、僕らは、まだそれに気づくことも、知ることも出来ない。

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