第百四十七話 自負
伊良拓斗らが目を覚まし、ダークエルフ達を迎え入れた森林地帯――大呪界。
この広大かつ他者を寄せ付けない深い森を有する大地を、この大陸に住む者たちは暗黒大陸と呼ぶことがある。
すなわち人が住むにはあまりにも不毛で農業などの生産能力に乏しく、かつ凶暴な蛮族や人族に有害な地帯を端的に表したある種の蔑称の様なものである。
だがそのような過酷な土地であってもなお、大地の試練を乗り越えたくましく生きる者達にとってはかけがえのない故郷となる。
様々な人が住まうその暗黒大陸にて最も国力を有する国家。
暗黒大陸の東の果てにある沿岸部と小島や岩礁地帯を領土とする海を愛する国サザーランド。
ドワーフと呼ばれる背丈の低く膂力にあふれるこの特徴的な人種は、普段は豪胆で大雑把なその気質からは信じられないほど混乱の最中にあった。
「あまりにも無謀だ! 相手は邪悪な存在だぞ! いくら北の奴らに対抗するとは言え、邪神と手を組もうだなんてありえねぇ!」
「じゃあどうすりゃいいんだ? このまま放っておいてもいずれオレらの国まで彼奴らがやってくるのは間違いねぇ。手をこまねいてる暇なんてないぞ? それともなんだ? お前さんが以前言っていたみたいに船にみ~んな乗せて逃げちまうか?」
「どう計算したって無理だって馬鹿にしたのはテメェだろうが……」
酒と魚料理の濃い匂いがむせかえる雑多で手狭な会議室の中、車座に座ったドワーフたちが唾を飛ばしながら品悪く罵り合う。
彼らこそ海洋国家サザーランドの指導者層である船団長と呼ばれる者達。暗黒大陸随一の国力を持つ海運国家のトップ達が今この場に集結していた。
その中で一人、車座から少し離れた場所でこの終わりなき諍いを眺めている人物。
身丈低い彼らの中でひときわ目立つ彼女こそ、フォーンカヴンの杖持ちトヌカポリであった。
(まったく、いつまで続けるつもりだいこの飲んだくれどもは……)
牛頭の老婆はあぐらをかきながら遠目でドワーフたちの喧噪を見つめている。かと思うと、一つだけ大きな大きなため息を吐き興味が失せたとばかりに目を閉じ黙想しはじめる。
無論ドワーフたちもこの場に牛頭の老婆――すなわちフォーンカヴンからわざわざ招いた杖持ちトヌカポリが出席している事は理解している。
この場で口汚く仲間と罵り合うことが国の品位を落とし、他国に軽んじられることもよく理解している。
だがだとしても、この血気盛んで荒くれ者の集団であるドワーフの、それも頭領である船団長達を止めることはできない。
もしその可能性があるとすれば、彼ら自身がこの終わりのないやりとりに飽きてきたか、もしくは樽になみなみと用意された酒が尽きてきたかのどちらかだ。
――今回は、どうやら後者の様だった……。
「まぁ落ち着きな。頭に血ぃ上らせてもなぁんにも案は浮かばねぇよ。……それより総船団長。アンタのことだ、どうせエルフの国にもお得意さまがいるんだろ? どうだ? 何か情報は入ってるかい?」
ようやく話に進展が見られた。
サザーランドでは他の国家に見られがちな氏族や種族といった括りによるグループは存在していない。その代わり船団と呼ばれる一種の営利組合のようなまとまりが存在していた。
それぞれの船団が互いに競争し、時には協力し、鎬を削りながらサザーランドという強大な国家を動かしている。
その船団の代表が船団長であり、その中でもっとも発言力があるのが総船団長である。
総船団長ドバン。最も巨大な船団を持ち、最も豪胆なドワーフたちのリーダーだ。すなわち彼こそがサザーランドの実質的な指導者。
勇猛果敢、判断力と決断力に優れ度胸も十分。加えてドワーフの中でも随一のウワバミ。誰しもが理想的な船団長だと太鼓判を押すドバンであっても、現在サザーランドを悩ませている問題は如何ともしがたいものがあった。
「おいおいオメェら! ただで情報を教えてもらおうたぁ、ずいぶん商いが下手になったなぁ! ……と、いつもなら言ってるところだか、まぁそういう状況じゃねぇわな。いくらか面白い話が入ってきた」
総船団長ドバンの話に各船団長たちがようやく耳を傾ける。先ほどまでの喧噪はどこに行ったのやら、そこにあるのは真剣に己と国家の利益を確保しようとする歴戦の猛者達だ。
「全陣営会談とか言ったか? けったくそ悪い話だが、俺らが予想していた通り余所から来た奴らが我が物顔で舵取りしていたみたいだ。フォーンカヴンもクオリアも借りてきた猫みたいにおとなしくしてたみたいだぜ。まぁあのいけ好かないエルフどもも同じような状況だったってのには清々したがな!」
全陣営会談――イドラギィア大陸の行く末を決めるという体で開催された出来レースの内容はすでにドバンの知るところにあった。
根っからの商人である彼らの情報網を甘く見てはいけない。正統大陸に住まう人々にとってドワーフがどのような地位にあるか等関係無い。
そこに商いがあれば飛び込んでいくのがドワーフであるし、種族問わず金の匂いを嗅がされては口が軽くなるのが愚かな人の性である。
とは言え……だ。情報がいくらあったとしても解決できない問題は常に存在するし、時として知らない方が幸せだったということも往々にして存在する。
今回総船団長ドバンが自らが持つ人脈とコネと金を総動員して得た情報というのは、すなわちそういう知らない方が幸せな類いのものだった。
「聞くのも嫌になるデケぇ問題だ。さっきも言ったとおり会談の内容はまぁ大方の予想通りご破算に終わった。後は各々の陣営が好き勝手振る舞うってところだが、厄介な事に北の国々でがっちり手を結びやがった。正統大陸連盟だとよ。はっ! 明らかに戦力が過剰だぜ」
その言葉に船団長達が顔を顰め、トヌカポリは興味深げに瞳を開く。
いずれ暗黒大陸中に知られる情報ではあったが、この段階で最も情報から遠いと思われたサザーランドが入手しているのは意外と言えたからだ。
「んで、破滅の王はどうなったんだドバン? あの存在は聖なる国と敵対している。いくら何でもこの状況を許しはしないんじゃないか?」
「流石にそこまでは分からねぇよ。デカいぶつかり合いがあったとは聞いているが、向こうの国でも情報が統制されているらしく詳しい話はでてこねぇんだ」
落胆のため息が全員から漏れる。
破滅の王――すなわち邪悪国家マイノグーラは彼らにとって最後の希望とも呼べる存在だった。昨今勢力を増す聖なる善勢力に、未知の能力を持った特異な存在。それらを打倒しうる可能性を持つ存在。
邪悪なる国家であるが故に交渉を持つことの危険性はあまりにも高すぎるが、だとしても現状を座視する事はできない。
なぜなら……。
(前みたいに他所から来た奴らに暴れ回られちゃたまったもんじゃねぇからな……)
そう、すでに彼らはプレイヤーやサキュバスの接触を受けている。
勇者ユウが倒したプレイヤー、鬼剛雅人は元々サザーランドで活動していた。
彼らの戯れによって失われた船団は二つ。内一つの船団長は戦死、もう一人は責任を取って縊死している。
その事実をドワーフたちは忘れてはいないし、部外者がいるこの場でうっかり口を滑らす愚か者も存在しない。
その見た目ややり取りに騙されがちではあるが、彼らの持つ脅威への警戒心は何よりも高かった。
「ちっ、破滅の王があの下品な女どもを纏めてぶっ殺してくれたら一番楽だったのによぉ。そもそもその王は一体何してるんだ? まさかご破算になった会談でぶち殺されたってオチはねぇだろうな?」
当然の疑問が船団長の一人から持ち上がる。
破滅の王に関する情報は少ない。そもそも会談の内容からして詳細を知らないのだから、状況を見てこの様な判断になるのも無理からぬ事だ。
だがここで待ったが入る。
「それはアタシから説明させてもらうよ」
ここに来てようやくトヌカポリはその重い腰を上げた。
彼女の目的はマイノグーラとフォーンカヴンの同盟に新たな仲間を加えること。――否、マイノグーラを盟主とした新たなる軍事同盟の締結だ。
その仕込みの為にやってきていた。
「トヌカポリの婆さんか……そういや俺らが呼んだんだっけか。わりぃ、忘れてたわ!」
「軽口たたく暇があったらその酒で溶けた頭をちゃんと回すんだね総船団長」
ようやく会合に参加してきた牛頭の杖持ちを、ドバンはニカッと小気味よい笑みを浮かべながら歓迎した。
今回の会合は、元々彼女が目的であったというところも大きい。現在未知の国家であるマイノグーラと一番近いところにいるのがフォーンカヴンであり、その中でもより近い場所にいるのがこのトヌカポリなのだ。
今後のドワーフたちの行く末を見定めるためにも、彼女の言葉は今なによりも必要とされていた。
「心配されるまでもなく、マイノグーラの王は存命さね。だが事は国家の存亡に関わる話だよ。アンタら好みに言えば、今後の商いができなくなるかもしれない一大事だ」
「しかし俺たち全員が動いたところでどうにもならないんじゃねぇか? お前さんは見たことないかもしれんが、敵の強さは生半可なもんじゃねぇぞ」
「奴らは……外来者は俺らに手に負える存在じゃねぇからな」
幾人かの船団長が吐いた弱音に対し、軟弱と非難する者はいなかった。
ドワーフたちにとって嘘偽りざる本音であるからだ。
現状では彼我の戦力差は絶望的。漏れ聞こえてくる話だけでも相手にするのが馬鹿らしいと思える戦力だ。それに加えて相手は特異な能力持ち。
いくら暗黒大陸で随一の国力を持つサザーランドといえど、しょせんは善勢力にとっての未開の蛮族でしかないのだから。
いわんや能力者相手では……。
サザーランドがマイノグーラという国家に助力を求めていたのは確かだ。だが状況が変わった。
正統大陸全ての国家および能力者が手を組むとなると、流石に破滅の王と言えども太刀打ちできぬのではないかという当然の予測が、彼らの中に沸き起こってきたのだ。
だがそれすらもトヌカポリは否と切り捨てる。
「まぁ話を聞きな酔っ払いども。まず現状の説明さね。破滅の王イラ=タクトが暗黒大陸に巨大な結界を張った」
いぶかしげな表情を見せるドバン。スケールの大きすぎる到底信じがたい出来事を疑うつもりはない。その程度のこと簡単にやってのける連中だというのは嫌というほど思い知らされた過去がある。
表情を変えた理由は別だ。なぜそんな事を? その場で決着をつけるには何らかの不都合が生じた? これだけの情報では判断に迷うので話を進めるためにわざと合いの手を入れる。
「んん? 俺たちは海に出られねぇってことか? これじゃあ商売あがったりなんだが。なんだ、破滅の王さまは俺たちに嫌がらせをしたいのか?」
「バカをお言い、ウチラの陣営を守る為のもんだよ。想像を絶する力を持つ結界らしくてね、敵対する相手はどのような手段を用いても絶対にマイノグーラと同盟国の領内に侵入することができないらしいよ。まったく、アタシの魔法観が根底から覆されるよ」
なかなかに面白い情報だった。少なくともマイノグーラが会談の場で決戦を避けたことは決定。
ここでトヌカポリがこちらから招いたとは言えわざわざサザーランドまで出向いてきた事を考えたら戦力が不足している可能性が高い。
数多くの商い、そして海の魔物との戦いで培われた総船団長ドバンの勘が下した判断は、現状ほぼ正鵠を射ているものだった。
「なるほどなぁ。結界を張っちまえばクオリアの聖騎士だろうがエルフどもだろうがこっちの大陸にはやってこれないって寸法か! あのサキュバスどもも含めてな! こりゃいいぜ酒が進む!」
「アンタたちはまだ同盟関係結んじゃいないだろ? おこぼれに預かろうってのは流石に欲が深いよ」
「まぁ、道理だわな。んじゃあ何か? 今現在、もっとも危険なのが俺たちってわけだ。まぁ大陸の接続領域はおたくらが支配しているから普通に考えれば入ってはこれねぇが、海から来ないとも限らないしな。アイツラはどうするつもりなんだ?」
「サキュバスたちがどう行動するかはアタシも知らないよ。少なくともマイノグーラとフォーンカヴンは暫く安泰な事は確かだよ」
「ふんっ!」
(現状の戦力じゃあマイノグーラはエルフやサキュバスどもに勝てないと判断した。というわけか)
ドバンは口に出さず内心でそう毒づいた。
これは少々予想を超えてきた。本来なら戦力差はそう変わらないと踏んでいた。その上で自分たちをどれだけ高く売るかの算段をつけていたのだ。その土台が覆されようとしている。楽観的な状況ではないことは確かだった。
ドバンはチラリと周りの船団長たちの様子をうかがいながら、もう残り少なくなった酒をぐいっと飲み干す。
「暫くといったなトヌカポリ。お前らのその結界とやらはどのくらい持つんだ? その焦りよう、永遠って訳じゃあねぇだろ?」
「猶予は1年。その間にこっちの大陸をまとめ上げ、向こうに対抗する必要がある」
「なるほどねぇ。確かに、正統大陸の連中とぶつかり合おうと思えば、道理だわな」
(その間に戦力を増強しようって算段か? そもそもそれが可能なのか? 相手を直接知らねぇ分、やりづれぇなぁ)
「……いけるのか?」
「やるんだよ。やらなきゃ全員おしまいさ」
不確定要素は大きい。相手が邪悪な存在という点も問題だ。だがサザーランドが一国でサキュバスたち、正統大陸連盟に対抗できる余裕などどこにもない。最初からサザーランドが取れる手は限られている。
人生は時として大きな博打にでなければならない時がある。
初めて借金して船を買ったときもそうだったし、お宝を求めて危険な水域に突入したときもそうだ。嵐の日に大商いの為に船を出したことも片手ではきかない。
どれもこれも危ない橋だ。だがその全てで勝利してきた。
本来なら避けるべき事柄。だが得てしてそういう時こそ、恐怖とそれ以上の興奮で身体が震えるものだ。
ドバンは自らの手を見る。先ほどからしこたま飲んでいるためこの震えは禁断症状によるものではない。
震える手をぐっと握り、ドバンは各船団長をぐるりと見渡す。
どいつもこいつもふてぶてしい笑みを浮かべている。酒とギャンブルが好きなろくでなし者どもの目だ。
全員が自分にやれと言っている。ならばここで芋引いて何がサザーランドの総船団長か。
ドバンはバシッと膝を打ち鳴らし、トヌカポリに視線を向ける。
「海は俺たちの第二の故郷だ。一度目は山を追われ故郷を捨てた。だが二度目はない。海を守るためなら、俺ぁいくらでもケツを差し出すぜトヌカポリ! なぁそうだろう皆!」
ゲラゲラと船団長たちが笑い、下品なヤジが飛ぶ。
トヌカポリはまた大きなため息を一つ放ち、手をパタパタと振って了承の意を示す。
「とは言えだ! ケツ以外にも差し出すもんは差し出さねぇとな! ちょうどうってつけの貢ぎ物を俺ぁ思い出したんだ!」
ドバンが思いついたように突然破顔する。
「あ? どうするつもりだ総船団長 そんなもんあったか?」
船団長の一人は思わず不思議そうに尋ねた。この年老いてなお覇気衰えぬドワーフが突拍子もないことを言い出すのは常ではあったが、今回彼が言い出した内容に心当たりがなかったからだ。
わざわざもったいぶった口ぶりで切り出すのだ。そうそう普通の貢ぎ物ではなかろう。
だが現状サザーランドには貢ぎ物として適切な価値あるものは存在しない。一応あると言われればあるが、それは今回の戦争で役立つようなものではなかった。
だが、この船団長の予想は大きく外れる。それも悪い方向に。
「おい、ブルーノ!! お前この前の航海で向こうの大陸からずいぶんと面白いもん連れて帰ってきたみたいじゃねぇか」
問われたブルーノは途端に顔をギョッとさせ、酒で赤らんだ顔を青ざめさせて首を左右に振る。その様子は演技でもなんでもなく、本心からのもののようだ。
目ざとい船団長たちはその様子に何か娯楽の匂いを嗅ぎつけると、ニヤニヤしながら事の成り行きを見守る。
「お、おいおい! やめてくれよ総船団長のオジキ! アレは借金までしてやっとこさ手に入れたんだ! 大事に育ててこれから繁殖させようと思っていたんだよ! 万が一何かあったら俺ぁ母ちゃんに殺されちまう!」
「死んだら借金も返せねぇぞ」
「どっちにしろ嫁に殺されるのは確定なんだからさっさと言え」
「男なら嫁に隠し通せ」
他の船団長がヤジを入れる。
どうやら他の船団長も思い至ったらしい。顔を青ざめさせている船団長ブルーノとしては自分が持つ船団の奥の手として隠し通していたつもりだったが、海千山千の猛者達がひしめき合う海で彼は残念ながら新参の部類だった。
「一体何を用意しようってんだい?」
トヌカポリの問いに待ってましたとばかりに総船団長が声を荒らげる。
「ドラゴンだよ! それも中位の! 番で仕入れてきたんだよ、向こうの大陸から!」
ドワーフたちの歓喜にも似たヤジが飛ぶ。どれもブルーノを賞賛する声だ。
トヌカポリも思わず驚きに目を見開く。
ドラゴンとは高い知能を持つ魔物の一種で、強力な戦闘力を有している。
鋭い爪と牙。高い運動能力。そして強力な生命力。
特に中位ともなれば会話はできないものの人と意思疎通が可能で、ブレスなどの強力な攻撃手段も持っている。
専用の装備などを用意し軍に組み込めば非常に強力な手札となるだろう。
少なくとも、以前のフォーンカヴンであればサザーランドがドラゴンを手に入れたとなれば徹底的に友好的な関係を継続しようと努力するだろう。
だがマイノグーラという存在を見てしまった後では、少々見劣りのする存在だ。
「おいトヌカポリ。うちの全船団でこのドラゴンを戦力に仕立て上げてやる。中位のドラゴンともなればその力は生半可なバケモノじゃ太刀打ちできねぇ。俺たちの底力と誠意を示すにもうってつけだろ!」
「ドラゴン……ねぇ」
自信満々に言い出す総船団長ドバン。
正直そんなことをするよりも彼らが知らない技術や別大陸由来の商品を渡した方が喜びそうな気がするが……。
言うかどうか迷うが、あまりにも相手が盛り上がっているためとりあえず話を合わせておいてやる。
「なんだ? 何か文句あるのか? おっ、いいこと思いついたぜ! ちょうどいい、奴さんの実力見るためにもうちのドラゴンと一度手合わせしてみようぜ! 下手したら俺らの方が強い可能性があるからな! なぁに、手加減はさせるさ!」
「そ、総船団長のオジキ! ようやく大人しくなってくれたばっかりなんだ! 手加減なんて器用な真似できねぇよ!」
「うるせぇなんとかなるだろ! なっ、トヌカポリ。いけるってよ!」
「はぁ、そうかい。……まぁ向こうにはうまく伝えておいてやるよ」
これはマイノグーラ王に手加減してもらうようよく言っておかないとダメだなと内心で考えるトヌカポリ。
ドラゴンを手に入れたことで少々気が大きくなっているようだ。
だが彼らは忘れたのだろうか? この世界で起きている戦いが人知を超えた、常識では到底太刀打ち出来ないものであることを……。マイノグーラもまた、そのような超常の存在が治める国家である事を。
(まぁ、ドワーフたちはマイノグーラを直接見たこと無いからねぇ。いずれこの飲んだくれどもも理解するだろうさね。世の中にはどうにもならない存在がいるって事を……)
いずれ訪れる邂逅の時。その時豪快に笑うこのドワーフたちがどんな表情を見せるのか少し楽しみだと、トヌカポリは意地の悪い考えを抱くのであった。
=Eterpedia============
【サザーランド】国家
属性 :中立
志向 :《海洋志向》《貿易志向》
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~~海にたどり着き者たちの、第二の故郷~~
サザーランドは沿岸地域と海に適応したドワーフによって作り上げられた中立国家です。
海洋貿易や海産資源の獲得などを主要産業としており、一般的なドワーフ国家とは一風変わった性質を有しています。
ただドワーフとしての元々あった気質が完全に失われた訳ではありません。
その性質は造船や建築などにも受け継がれており、強力な海軍戦力を有しています。
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