神になった罪人
寝ている時に神が降りてきました!(笑)
自分の頭がよろしくないのでシリアスな感じにしようとしましたが難しいです(笑)
此処はどうしてこうなの?つまらん、など感想どんどん書いてください!
評価もよろしく!
―「囚人1313番出ろ。」
ナイフを持っていればすぐに殺せそうな刑務官に命令され私は痛んでいない綺麗なパイプベッドに下していた腰を上げた。これから私の死刑が執行される。
近づいてくる死を感じられない。しかし少しばかりの恐れはあった。死に対しての恐れは皆持っている。きっとこの刑務官にだってある。神にだって。
通路のコンクリートで塗り固められた壁を見ながら刑務官に連行される。
ふと、自分の人生を振り返る。思えば私は他人よりも怖がりだった、虫が怖い、オバケが怖い、夜のトイレが怖い、犬が怖い、雷が怖いと怖いものを挙げて言ったらきりがない。とにかく私は無類の怖がりだった。いや、今も怖がりだ、他人の目が怖く、他人の動きも怖い、だがこの刑務所に服役している受刑者には恐怖を感じなかったそれどころか落ち着いた気持ちになれた。
初めてこの刑務所に入所したとき隣になった部屋の男から声を部屋越しにかけられた。
――「おまえ新入りだな?これから後輩って呼んでやるよ。」
「どうも・・・」
「おまえ何してここに入ってきたんだ?反逆罪か?特殊殺人か?おれは特殊殺人だ!罪のねえ人間を殺しちまったのさ!すごいだろ?」
「・・・」
「いやぁうっかりしてたよ、興味本位でちょっといたずらしようとしたら死んじまうんだびっくりしたぜ。人間ってあんな簡単に死んじまうもんなんだな~」
「どんな人間を殺したんだ?」
一人で長く話すものだから私は質問を隣の部屋の男にしてやった。
「おお!興味あるかい?しょうがねぇな。聞かせてやるよ。」
質問をしたのは間違いだった。男はまた長々と武勇伝を子供に聞かせるように話し始めた。
「そうだな、魔が差したってんのかな?女が暗い夜道を歩いてたわけよ、脚がきれいでモデルみたいな体型の女だった。男だったらそりゃ目で追うよな?んで女を目で追っていたわけよ。そしたらまぁ~これも男心か~?ちょっとイタズラしたくなっちまったんだよ。そいでちょっと驚かせたらその女の子予想以上に驚いて履いていたハイヒール脱ぎ捨てて逃げ出しちまったのよ、んで、逃げてる途中でトラックに轢かれちまったってわけよ。いや~あれは悪いことした。」
とてもつまらない、よくありそうな殺人だった。被害者が気の毒だ。こいつは死神だな。
「そして他にも人を殺しちまったんだよ!これも悪気はなかったんだが~~~~」
男と話した会話はこれしか覚えていない、話は殆ど聞き流していたし興味のない話を延々としていたためすぐに眠っていた。
翌朝には隣の部屋から男の声は聞こえてこなかった。後から知った話だが私に話しかけてきた後に何故だか突然死刑執行されたようだ。まあ、神の意思には逆らえない。
人間も見えない神を崇拝し、供物を供え神の機嫌を窺がう。見ていて面白いよ、神が絶対と信じている哀れな人間が。
つまらない奴もいれば面白い奴もいる。
そうだな、こいつだ。入所して三日目にはその面白い奴の噂が耳に入ってきた。どうもこいつは侮辱罪でここにぶち込まれたらしい。「神は人類を救う存在ではない!人類を滅ぼす存在だ!」こんな事言ったらお偉いさんが黙っちゃいない、ぶち込まれるのは当たり前だ。
私は早速自由時間にそいつに会うことにした、実際会ってみると小柄で汚れのない青い瞳、色白の肌、金色になびく綺麗な金髪、華奢な身体、女の子のような優男だった。
”15~16ぐらいか若いな、可哀想に。”初めて会った時そう思った。
そいつは15歳くらいなのにもうこの刑務所に服役していたのだ。神のご意思か?素晴らしいね。
―「君かい?神は人類を救う存在ではないって言ってここにぶち込まれた奴は。」
「神が人類を救う存在ではないのはこの刑務所に服役しているならば分かるはずだ。神は裁きが好きなのさ。」
「確かに、この刑務所で毎日裁かれてる。」
神が嫌いな奴が居たことに少しばかりの安らぎを得て話しが弾んだ。
「人間の神に対する認識が問題の始まりだ、人間は神を人それぞれ絶対不変の唯一神と考えている。そこから現在のような問題に発展していったんだ。」
「確かに神が多いよな、俺のとこも八百万とかブッタとかいたよ。」
今現在一体何人の神が存在するのかわからない。まあ、3万はいるだろう、この刑務所に2500人ほどいるんだから。
「あなたはいつ死刑執行されるんですか?」
囚人らしい会話だ。
「まだ決まっていない、私のはちょっと特殊でね。」
一ヶ月以内には執行されるだろうがな。
「僕はあと四日後です。」
伏目がちに自分の死の時を私に伝える。
「そうか、」
三日前に入所したのか、つまり私が入所した日と同じ日にぶち込まれたんだな。
殆どは入所して七日後には死刑が執行される。回転率の高い刑務所だ。
そいつとは自由にできる残りの三日間いろんな持論や評論を論じ合った。
―そいつはもう二ヶ月前には死刑執行されたがな、面白い奴だった、顔もかわいい顔してたしな。
う~んそうだな、次は私の嫌いな奴の話でもしてやろう。丁度この辺りの通路で会ったやつだ。
―そいつとのファーストコンタクトは自由時間に運動場で軽く体を動かそうと運動場へと移動している時に突然後ろからガタイのいい囚人に押しのけられ倒れた時だった。そいつはすぐさま倒れた私に歩み寄り手を伸ばしてきた。
「大丈夫ですか?」
心配そうな声で無事を確認してくる。
「別に、大丈夫さ、」
刑務所なんだ、これくらい珍しくないだろう。逆に倒された私の心配をしてくるこいつが珍しい。
「あんた何してここにいるんだ?」
大方、反逆罪か転覆陰謀罪だろうと踏んでいたがそいつの罪は重いものだった。
「上級大罪です。」
「上級!?本当か?」
上級を犯すやつなんて初めてだ、こいつは相当の悪だな。
「どんな奴を殺したんだ?」
上級大罪なんて珍しい、相当な恨みを持って殺したかよほど残虐な方法で殺したんだろうな、静かな奴ほど爆発したら恐ろしい。
「つい、カッとなってね、殺してしまったんですよ。わたしの上司・・・ですかね・・・」
上司?もしかしてこいつ役員だったのか。なるほど、それもあって上級大罪か。
「どんなことで?」
「わたしが悪いんです、いつも小さなミスをして怒られていたのですがそれが積もりに積もって風船の空気が一気に抜けたように怒りを抑えられなくなって・・・そして上司を殺めてしまったのです・・・」
「死刑の執行日はもう決まっているのか?」
こんな大罪を犯しているんだ七日で死刑は執行されないだろう。
「十日後にわたしは死刑になります。」
「いつ頃この刑務所に入ったんだ?」
「十三日前です。」
上級大罪なら死刑まで約二十三日か長いな、私のはもっと長くなりそうだ。三ヵ月かな?
「じゃあ九日間は最後に楽しめるな。」
普通の囚人は七日間しかないのだ、つまり六日間しか最後の限られた自由を使えない。そう考えると大罪を犯して良かったかもしれない。
「いえ、わたしは残りの時間を懺悔のために使います。」
「なぜ?神にでも祈るのか?」
神に祈ろうとするのならこいつは相当な馬鹿野郎だ。神に祈りを捧げるのに意味なんてない。
「神に祈るなんて意味がない、やめとけ。時間の無駄だ。」
「わたしの為に祈るのではありません。神の為に祈るのです。わたしは神の子であるにもかかわらずこのような大罪を犯してしまった、きっと神はこんな私を見て悲しんでいるはずです。罪深き私に背を向けているでしょう。しかし私は、それでも!神の為に祈りを捧げます。」
こいつは真性の馬鹿だ。右の頬と左の頬をぶん殴りたくなった。
「はいはい、アーメンアーメン。」
それっきりそいつとは通路で会っても話さなかった。
―あいつはやっぱり真性の馬鹿だった。死刑の執行日に嬉し涙を流して死んでいったそうだ。
神が親であると信じ神が絶対であると信じている。
まったく吐き気がする。神を信じる奴らは全員「神の御言葉が~」とか言って自分の心を安定させるために見えないものに縋りつくし神の御言葉で自分の正当性を保とうとする。見えない神の御言葉は便利だねぇ~
ん?そろそろ死刑台が近くなってきたか、そうだな最後に怖がりな大罪人の話をして締めくくろう。
その大罪人は約二ヶ月前にこの刑務所に入所した奴だ。
長い話になるから順を追って話そう。
――「囚人3131番、来い、時間だ。」
少し古いパイプベットに腰かけていた細いが筋肉質の若い男は若干年配の刑務官の声に耳を傾けていた。
「囚人3131番!早く出ろ!」
男の命は今日で終わる。今日が男の死刑執行日。男の命日だ。
刑務官は男の両手に手錠をかけ男を死刑執行する部屋へと連行する。
まあ、死刑になるのは当たり前だ、人間を四人惨殺、一人に傷害を負わせたんだからな。
しかしやっと解放される。この恐ろしい世の中から。
死が近いのに安堵の表情を浮かべる男は他人の目にはどう映っているんだろうか。まあ、そんなことも死ねば気にしなくなる。
――男は小さい時から怖いものが多かった。虫、オバケ、夜のトイレ、犬、雷、ピエロ、他にも怖いものが沢山あった。だが、一番怖かったのが他人の目だ。他人の目は男を観察し、舐め回し、蔑み、嘲り、嘲笑する。それが毎日続き毎日が苦痛だった。
ある時大学で前の席の奴が男を嘲笑する目で見てた。男は怖くてそいつの片目にシャープペンシルを刺した。周りから悲鳴が上がり周りのみんなの目には恐怖が映っていた。その恐怖が自分である事に気づいた事と周りの目が恐ろしくて男はその場所から逃げた。逃げている途中でも他人の目が男の事を監視しているように感じられて恐ろしかった。
道を歩いている通行人の目が男を監視している目をしていた。男はそいつに襲い掛かり喉を前の席の奴の片目を潰したシャープペンシルで刺した。暖かな血が刺した喉から溢れ出てきた。通行人は動かなくなっていった。
そしてまた周りの目が自分に向いていることに気づき逃げた。そして逃走中に三人殺してしまっていた。
――私は罪人だ。これから死ぬんだ。神にどんな裁きを受けるのだろうか想像できない。
刑務官は部屋の中心に配置されている椅子に私を座らせ男の顔に布を被せた。死はすぐ目の前に迫っている。
「―――!」
一瞬の強い刺激の後、男の意識は無くなった。
―とまあ他人の目が怖くて毎日目におびえているっていう神経質な奴だったんだろうな、ちょっとした事から過ちを犯し犯罪を重ねちまったらしい。
さて、私の死刑を執行する死刑台がもう目の前だ、
私の目の前には両手と頭を固定するための厚い板、上には大きな切れ味の悪そうな刃が付いていた。
ギロチンか、本当にこの世界は何から何までやり方が古いな。
さあ、二度目の死刑執行だ。
私は刑務官に連れられギロチン台の隣に乱暴に座らされた。
「被告は上位の神を殺したとして超上級大罪の刑により死刑、及び下界流しの刑とする。」
この世界では死刑の直前に罪が読み上げられる。
最後の言葉も言えないまま私はギロチン台に両手と頭を無理やり刑務官に固定される。
そう、私は神を殺してしまった神だ。この世界では皆が神様で人の願いによって生まれる。そして何の間違いか罪人の神が生まれてしまったらしい、そいつが私だ。
この世界の犯罪は特殊殺人、下界の罪のない人間を神の意志で殺す事だ。
始めに話したあの男は下界の女性を殺したため此処にぶち込まれた。
次に重いのが中級大罪、他の神を殺してしまう罪だ。その上が上級大罪。私が嫌いだったあいつはこの世界と下界の均衡を保つために働く役人で上司の神を殺したことで役人でもあるにも関わらず神を殺したとして上級大罪になったのだろう。
そして一番上に位置するのが超上級大罪、私が犯した罪だ。上位の神殺しやこの世界、下界の均衡を崩すような大罪を犯した者の罪だ。
その他には神を侮辱する侮辱罪、この世界の均衡を崩す者の罪、反逆罪など色々な罪があるがどの罪も最終的には死刑に行きつく。
”生まれ変わって神になっても神様を殺しちまうとは私はとんでもない罪人だな”
「執行!」
合図でギロチンが落ちてくる。
「――――――――――」
私の視界は衝撃を受けた後パソコン画面がフリーズするように動かなくなり視界はシャットダウンした。
”全く、また人間に戻るのか、”
身体の無い白い空間で意識だけになった私は呟く。
”人間は生まれながらにして罪人だ”こう言った奴が居たがその通りだ、下界にいる人間は神の世界で罪を犯した者が落とされる場所なのだ。
神になった罪人は再び人間へと生まれ変わる・・・