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美味なる純血  作者: シクル


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第七章「帰宅」

「明・・・」

陽は立ち尽くしたまま明の首を見つめ、雅夫は放心状態のままだった。

「何で・・・何でだよ・・・?」


その頃職員室ではまた職員会議が開かれていた。

「だから言ったじゃないですかッ!早く警察に連絡するべきだとッ!」

職員室に石川の声が響く。

「け、警察にはさっき連絡しておいたよ。落ち着きたまえ石川君」

「落ち着いていられるわけないでしょう!?これで8人目ですよ!?」

「それに今度は死体を生徒が目撃しています!どう収拾するつもりなんです!?」

かなりの勢いで石川が喋るので、校長も焦っている。

「石川先生。校長をせめても解決しません。落ち着いて下さい!」

小島が必死に石川を止めた。

「す、すいません。ついカッとなってしまってしまいました・・・」

石川はそう言うと静かに席に座った。

「それより校長。彼の言う通り、どう収拾をつけるおつもりで?」

富山が問い詰めるように校長に言う。

「・・・」

「生徒達を、一度家に帰しましょう」

それが校長の決断だった。



「陽の奴・・・。どこ行ったんだ・・・?」

真がパソコンをつつきながら呟いていると突然バタンとドアが開いた。

「陽ッ!どこ行って・・・」

真が言いかけた時だった。

ガッ!

陽は真のむなぐらを勢いよく掴んだ。

「な、なにすんだッ!?」

「犯人は・・・!?」

「犯人は誰だかわかんねーのか!?」

陽は真に顔近づける。

その時の陽の顔は怒りに歪んでいた。

真は多少恐怖を感じていた。

「し、知らねえよ」

「・・・。そうか」

そう言うと陽は真を離した。

「すまん・・・」

「いいよ。気にしてねえ」

陽は少しふらつきながら自分のベッドの上に座った。

「陽。何か・・・あったのか?」

「・・・」

「明が、殺された」

陽は少しうつむいて答えた。

「!?」

「お前の言ってた事も嘘じゃねえみてえだ・・・」

「先生には言ったのか!?」

「ああ。石川が出てきてすぐ来るってよ・・・。一応俺はその部屋の人間じゃねえから帰ってきたがな」

「そうか・・・」

「なあ真・・・」

「何だ?」

「何で俺らのクラスの奴らが殺されなきゃなんねえんだよ・・・?」

真はその時、陽が目に涙を浮かべている事に気づいた。

「おかしいだろうがよ?クラスは他にもあるし、第一殺す理由がわかんねえ・・・」

「陽・・・」

真がどう答えれば迷った時だった。

コンコン・・・

ドアを叩く音がする。

「山木君。真桜君。出てきてくれ」

真がガチャリとドアを開けると、富山がいた。

「富山先生・・・」

「玄関ホールに集合だ。荷物をまとめて来るんだ。わかったね?」

「あ、はい」

真が答えると富山は静かにドアを閉め、どこかへ行った。

「陽。荷物まとめるぜ」

「あ、ああ」

陽は制服の袖で涙をゴシゴシとふくと、すぐに真とともに荷物をまとめた。



「B組。全員そろいましたね?」

小島が集まった生徒を見渡す。

明らかに減っている。

生徒の数人は泣いていた。

恐らく殺された生徒の友人やルームメイトだろう。

李那もその一人なのだろう。

目から大粒の涙を流している。

「今回は本当に残念で悲しい事になりましたが、みなさん一度自宅に戻り、心と体を休めてください」

小島はそう言って生徒達をバス停まで引率した。


数時間後、真はやっとの思いで自宅に到着した。

懐かしい景色。

懐かしい家。

「ワンワン!」

「ジロウ!」

この犬はジロウ。

真の家で飼っているゴールデンレトリバーである。

毛並みもよく、よほどの事がないとほえないように教育されている。

つまりジロウにとって真、つまり主人が帰って来た事はこのうえなく嬉しい事なのだ。

真がジロウをなでていると家のドアがガチャリと開いた。

「真!」

「おうおふくろ!今帰ったぜ」

彼女は真の母、美代子みよこである。

美代子は真に駆け寄るとすぐに抱きしめた。

「うわ、な、なんだよッ!?」

「よく帰ってきた!先生から話は聞いてる・・・!無事でよかった!!」

美代子は泣いていた。

「おふくろ・・・」

美代子の気持ちを察した真は美代子の背中に手を回した。

「無事だよ。ありがとうおふくろ・・・」


その後、真は久々の自宅へと戻っていった。

「おふくろ、何か腹減ったな。飯作ってくれねえか?」

「なに言ってんだい。帰るなり。今作ってる所だよ」

さっきの涙はなんだったのかとつい思ってしまう。

「おお、真。お帰り」

今では父、光春みつはるがソファに座って新聞を読んでいた。

「ああ。親父。ただいま。」

真の家は真、光春、美代子の三人暮らしだった。

光春は顔に出さないが、真がいない日々は二人にとってさみしいものだった。

「なあ親父、おふくろ」

「なんだい?」

「帰っていきなりなんだけどさ・・・。明日行きたい場所があるんだ。バス代くれない?」

「行きたい所って・・・どこよ?」

「Z県」

「そんな所まで行くのかい?」

「ああ。どうしても・・・調べたい事があるんだ・・・」

そう。

真が調べたい事とは他ならぬあの事件。

Z県高校生連続惨殺事件の事だった。


続く

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