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美味なる純血  作者: シクル


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第伍章「加速」

早朝。

職員室で職員会議が開かれた。

もちろんあの件についてだ。

「何か意見のある人はいますか・・・」

校長が言うと、すぐに石川が手をあげた。

「石川君」

「何度も言うようですが、警察に通報するべきです!これは我々の解決できる範囲ではありません!」

「私も何度も言います。警察を介入させる訳にはいきません」

「しかし・・・!」

「その意見には・・・私も反対だ」

突然石川の反対側の席から声がする。

「富山先生・・・」

「今さら警察に通報してどうする?亡くなった命は今さらかえらないというのに・・・」

「これ以上の被害を止めるためですッ!!」

「果たして警察にこの事件が止められるとでも言うのか!?」

「止める、止められないの問題ではありません!止めなければならないんです!」

ガタンッ!

石川は勢いよく席から立ち上がる。

「・・・。石川君。少し落ち着きたまえ」

校長が静かに言うと、石川は「すいません」と言い、席に座った。

その後会議は難航し、結局何も解決しないままに終わった。

会議が終わると、石川は「ふぅ」とため息をつきながら職員室を出た。


その頃教室。

真は教室を見渡し、やはり人数が減っている事に気がついた。

(工藤・・・。それに小坂と佐々木まで・・・)

結構ノンキに考えていた陽も流石に同様を隠せない。

「真、何か考え事?」

李那が心配そうに真の顔を覗き込んだ。

「ああ、このクラス・・・。昨日より人数が減ってないか?」

「そういえば・・・そうだね。浅木さんもこないだからずっと休みだし・・・」

真は浅木が殺害された事や、恐らく他の休んでいる生徒も殺害されているかも知れないことを李那には話していない。

彼女を怖がらせたくないのだ。

「私、なんだか嫌な予感がする・・・。とても怖いの・・・」

「・・。」

真としては「大丈夫だ」と言ってやりたいのだが何とも言えない。

キーンコーンカーンコーン!

突然チャイムが鳴り響き、全員が席についた。

数秒ほどたつと、小島が教室に入ってきた。

どうやら復帰できたようだ。

「号令をお願いします」

「起立!」

「礼!」

「着席!」

ガタガタッ!

号令が終わると、真は改めて教室を見渡した。

もう既に7人もいない。

「はい。それでは出席を取ります」

「笹川さん」

「はい」

真は恐らく次の犠牲者となるであろう彼女を見つめた。

笹川ささがわ千香ちか

少し高めの身長と、後ろで1つに縛った髪が特徴だ。

こんな平凡な少女がこれから無惨な死に方をするとは思えない。

しかし実際にそうなるのだ。

奇妙だが真には確信があった。

朝のHRが終わると真は千香に話しかけた。

「なあ・・・」

「何?」

「あのさ。今日は1人になんない方が良いと思う・・・ぜ?」

「何それ?どういう事?新手のナンパ?」

「いや、そうじゃなくてさ・・・」

「そう。ならどこかへ行ってくれるかしら?目障りよ」

「な、なんだとッ!?」

「本当の事を言っただけじゃない。何を興奮しているの?」

千香は「フン」とそっぽを向くと、席を立った。

「用が済んだのならどけてくれるかしら?次は移動教室なの」

「あ、ああ」

真がどけると千香は授業道具を持ち、機嫌悪そうに教室を出ていった。

「チッ。人が心配してやってんのによぉ・・・」

真はすこしふてくされた顔で授業道具を用意した。

「遅ぇぞ」

「あ、悪い悪い。今行くよ!」

真は急いで陽と教室を出た。


「ごめん、私トイレ」

「じゃあ先行ってるね」

「うん」

千香は2人の友人と別れると、トイレへ入っていった。

ふと、真の言葉を思い出す。

だが千香はあまり気にしないことにした。

用を足すと千香はトイレの個室から出ようとした。

その時だった。

ペタ・・・ペタ・・・

素足で廊下を歩く動くような音がする。

「!?」

音は近くから聞こえた。

怖くなった千香はすぐにでもこの場を離れたかったが、出る気にはなれなかった。

音は次第に近くなってくる。

「何・・・この音・・・」

全身が震えているのがわかる。

怯えているのだ。

自分では落ち着いているつもりなのだが、ソレとは関係なく体は震えている。

ペタ・・・ペタ・・・

音は、止まった。

少し安心した千香は個室から出ようとして、ノブに手をかけた。

「ん・・・!あれ?」

開かない・・・という訳ではなく、何か重たい。

裏側で何かがノブに乗っているような・・・

千香は上を見た。

何故だかはよくわからない。

最初に目に入ったのは垂らされた長い髪。

長い髪が上から垂らされているのだ。

長い髪に隠れてよくは見えないが、人の頭があった。

そこから長い髪は垂らされている。

人間・・・なのだろうか?

ソイツは個室の中に飛び降りてきた。

千香は、握ったままのノブが軽くなったことを感じた。

「だ、誰・・・!?」

自分でもわかっていた。

その質問が何の意味も持たないことに。

ソイツはガブリと千香の肩に噛み付いた。

「あっ・・・!」

肩の肉を喰いちぎると長い髪を振り乱し、喉に噛み付いた。

そして、腹部に喰いつく。

貪るように喰う。

そして一通り喰い尽くしたあと奇声を発して、その場所から出て行った。


続く

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