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美味なる純血  作者: シクル


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第四章「殺戮」

PCルームを出た真は真っ直ぐに食堂へ向かった。

陽と李那が待っていると思ったからだ。

食堂についた真はすぐに陽達を探した。


「真。どこ行ってたんだ?」

後ろから肩を叩かれ、振り向くとそこには陽と李那が立っていた。

「陽、李那」

「もー!心配したじゃん!」

「悪い悪い。ちょっとな」

「お詫びに俺飯頼んでくるよ。いつもと一緒で良いよな?」

真が尋ねると陽は小さく頷いた。

「ああ」

「私も良いよー!」

「了解」

真は軽く答えるとすぐに食事を頼みに行った。

(過去の事件・・・)

(それと酷似した今回の事件・・・)

(と言う事は犯人は・・・同一人物・・・?)

真が考え事をしながら歩いているとドン!と何かにぶつかった。

「!?」

「ああ。すまない。急いでいるんだ」

「あ、すいません」

真が前を見ると、若めの男性教師が立っていた。

彼の名は石川いしかわ雄平ゆうへい

去年教員免許を取り、今年この学校に来た新米教師である。

ちなみに彼の教科は数学である。

(何を焦っているんだ・・・。授業はまだ始まる時間じゃないし・・・)



石川は猛ダッシュで男子の棟のある部屋の前に来ていた。

部屋の前には他の男性教員も立っていた。

「ハァハァ・・・。すみません。遅くなって・・・」

「いや、かまわないよ」

そう言ったのは校長だった。

「それよりこの部屋の中を見てくれ・・・」

校長が部屋のドアを開けると、ドアの反対側は血まみれだった。

「!?」

「こ、これは・・・?」

部屋中には血が飛び散り、床には2人の少年の首と血まみれの肉塊が転がっていた。

「昨日の夜殺害されたようです・・・」

石川は血まみれの床に転がっている2人の少年の首を見た。

「この子は・・・。B組の海原君と小河君・・・」

「そうだ。そして一昨日B組の浅木さんが殺害されたのは知っているね?」

「はい。」

「そしてそのルームメイトの卯月さんも昨日殺害されている」

「もう既にB組だけで四人も殺害されているんだ」

「え・・・?」

「何故警察に連絡しないんですッ!?」

石川がそう言うと校長は少しうつむいた。

「警察を介入させると厄介な事になる。それに殺人事件の起きた学校に誰が入学すると言うんだ?そんな学校の評価を落とすような事はできない」

「そ、そんな!?」

「もしこの学校がなくなりでもしたらどうするんだね!?私はおろか、君たちだって収入がなくなるんだぞ?」

「しかし校長ッ!!」

石川が語気を荒げる。

「まあ良い。とにかく警察には通報するな。この事件は学校で解決する」

校長はそう言うと部屋を去っていった。


その頃食事の終わった真達は教室の中にいた。

「・・・」

真は不審に思っていた。

いつもなら太一が話しかけてくる頃なのだが今日はそれがなかった。

「おかしいな・・・」

キーンコーンカーンコーン!

チャイムが鳴り響き、全員が席についた。

教室のドアがガラガラと開き、石川が入ってくる。

「・・・!?」

「えーと小島先生は体調が悪いためお休みです。代わりに僕が今日は担任をします」

「号令をお願いします」

石川がそう言うと「起立!」と声がする。

「礼!」

「着席」

号令で全員が席に座った。

「それでは出席をとります。今日は四人休みです」

石川がそう言うと真は咄嗟に太一の席を見た。

(・・・。休み!?)

(やはり卯月も・・・。それに小河まで・・・?)

真は自分の中の嫌な予感を抑え切れなかった。


放課後

HRが終わると真はいつもなら陽と部屋に帰るのだが今日は先にする事があった。

「おい。工藤」

そう。出席番号5番の工藤に用事があったのだ。

「?」

工藤くどう弘幸ひろゆき

低めの身長と少し地味な所が特徴で、真の中学時代の同級生でもある。

「山木君?何?」

「工藤。お前のルームメイトって誰だ?」

「僕の・・・?田川君だけど」

「お前。今日は田川と離れるな。常に誰かといるんだ!」

「え・・・?」

突然語気を荒げる真に、弘幸は少し戸惑った。

「何か嫌な予感がするんだ」

「ん・・・。わかったよ。山木君がそう言うなら気をつけるよ」

弘幸はニコリと笑って頷いた。

「そうか・・・」

「しーん!はーやーくー!」

李那の呼ぶ声が聞こえる。

「ああ。今行くー!」

「じゃあ工藤。またな!」

「うん」

真は弘幸に別れを告げた後、すぐに李那達の元へ行った。


夜。

弘幸はルームメイトの田川と部屋の中にいた。

「田川君。僕そろそろ寝るね」

「ああ」

彼の名は田川たがわまこと

太っていて眼鏡をかけたいわゆるポッチャリ系の少年だ。

「あ、ちょっとその前にトイレ」

そう言うと弘幸は部屋のトイレへと入っていった。

弘幸はトイレに入るとまず鍵をしめた。

別に恥ずかしいわけではない。

トイレに入るとまず鍵をしめる。

それが彼の癖だった。

この狭いトイレ、人がギリギリ2人入れるぐらいのトイレだ。

便器の上にちょっとした窓がある。

「ふう」

用を足した弘幸が外に出ようとした時だった。

何かの視線を感じる。

咄嗟に弘幸は真の言葉を思い出した。

 何か嫌な予感がするんだ。

弘幸は恐る恐る後ろを振り向いた。

「何だ・・・。何もいな・・・」

「!?」

一瞬何もないかと思ったが実際そうではなかった。

よく見ると、窓の外に人影のようなものがあった。

本来ならあり得ない。

こんな高い場所に人間が外から上がってこれるわけがない。

あり得ないはずなのだが実際にここにあり得ている。

人間が、あるいは人間の形をした何かが窓からこちらを見ている。

「・・・!?」

その何かは窓をゆっくりと開け、ズルズルとこっちへ来る。

弘幸の本能が弘幸に警告している。

逃げろ。

しかしあまりの恐怖に弘幸は声も出ない。

「あ、ああ・・・・」

足はガクガクと震え、目からは涙が溢れている。

その何かは完全にこっちに入り、弘幸をじっと見ている。

「フフ、フ・・・フフ・・・」

何かは不適に笑い、弘幸の首を絞めた。

「!?」

ギリギリとものすごい力で何かは弘幸の首を絞めあげていく。

そして弘幸が動かなくなったのを確認し、腹部にガブリと噛みついた。

何かはムシャムシャと腸を貪り喰った。

「大便にしたって遅すぎないか・・・?」

その頃部屋では誠が弘幸を心配していた。

最初はあまり気にしていなかったのだがもうかれこれ5分はたつ。

流石に不審に思った誠はトイレのドアを叩いた。

「おーい。いつまでしてんだー?」

返事がない。

「おい!無視するなよッ!」

やはり返事がない。

誠はだんだん不安になってきた。

誠は耳をすました。

中から何かグチャグチャと音が聞こえる。

何かを引きちぎるような・・・そんな音だった。

「ひ、弘幸・・・?」

誠はすぐに部屋の電話で先生を呼んだ。

数分後に石川が到着した。

「田川君・・・!」

「い、石川先生・・・。弘幸が・・・」

それを聞いた石川はトイレのドアを開けようと、ノブをガチャガチャと回す。

「駄目です先生。鍵がかかってるんですッ!」

「そうか・・・。なら力ずくで・・・!」

石川はトイレのドアから少し離れ、助走をつけて思い切り突撃した。

バキッ!と音を立ててドアが割れた。

最初に二人の目に入ったものは引きちぎられた腕だった。

明らかに弘幸のものである。

壁や床には血がベットリと付着している。

便器の上には弘幸の首が乗っていた。

その顔は恐怖に歪んでいた。


続く

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