第参章「疑惑」
「おかしい。何か引っかかる・・・・」
陽と部屋に戻った真はベッドの上で呟く。
「何がだよ?」
「何がって・・・。殺人が起こったって言うのに何でこの学校はいままで通りなんだよ・・・」
「只今捜査中って事なんじゃねえか?」
陽が眠そうにあくびをしながら言う。
「捜査なら警察に任せればいいだろう?何で警察を介入させないんだよ・・・。」
「それに、何が理由で浅木が殺されなきゃなんないんだ・・・?」
「ソレに、臓器がなくなってる・・・って殺人事件・・・。どっかで聞いたことあるような・・・」
「さあな・・・。俺には何もわからねえ。だがこれだけはわかる。俺達が首を突っ込むような事じゃない。こういう事は学校や警察に任せるべきだ」
そう言うと陽は浴室の中へ入っていった。
「何が起こってんだよ一体・・・」
その頃・・・・。
魅華は宿直室に居た。
彼女の部屋は今だにあの状態のままで、使う事が出来ないからだ。
きれいにしたとしても使う気にはなれないだろう。
「卯月さん。シャワー、先に浴びてきたら?」
小島がそう言うと魅華は何も言わずにうなずき、浴室へ向かった。
中に入ってドアを閉め、制服を脱ごうとした時だった。
「!?」
何かの気配を感じる。
「誰!?」
魅華が振り向くと小島が立っていた。
「・・・。先生」
「ごめんね驚かせちゃって・・・」
「いえ、私の方こそごめんなさい」
小島は手を洗った後、すぐに出ていった。
「ふぅ・・・。疲れてるのかな・・・?」
魅華が再び制服を脱ごうとした時だった。
「・・・!?」
やはり気配を感じる。
「だ、誰よ・・・!?先生・・・?」
これが魅華の発した最後の言葉だった。
魅華は突然背後から何か飛びつかれた。
「!?」
言葉を発する前に喉に噛みつかれた。
魅華の喉から真っ赤な血がドボドボとこぼれ落ちる。
(喉が・・・声が・・・出ない・・・!)
魅華の喉からは絶え間なく血が流れている。
背後から飛びついていた何かは魅華の背中から降りた。
そして魅華を前から押し倒し、腹部に思い切りかぶりついた。
(う・・・あ・・・ッ!?)
何かは貪るように魅華の体を喰い始めた。
辺りには血が飛び散っていった。
魅華・・・いや、これはもう魅華と呼べるものではなかった。
原型をとどめていないのだ。
唯一首以外は。
苦痛に歪んだまま魅華の首はコロコロと転がった。
その何かは満足したらしく、窓から外に出ていった。
「シャワー。長いわね・・・」
不審に思った小島は浴室のドアをガチャリと開けた。
「卯月さん・・・?」
「!?」
小島は今の浴室の光景に絶句した。
「い、いやあああああああああッ!!」
小島は驚きのあまり、その場にペタリと座り込んだ。
「どうしましたッ!?」
小島の悲鳴を聞きつけた他の教員が宿直室のドアをドンドンと叩く。
「開けてくださいッ!どうしたんですか!?」
今の小島にはそれすら聞こえていなかった。
ガチャガチャと鍵を開ける音がする。
マスターキーを使ったのだろう。
「小島先生ッ!?」
ガチャリとドアが開き、他の教員達が入ってくる。
「な・・・どういう事だこれは・・・!?」
1人の男性教員が放心状態の小島と魅華の死体を見ながら言う。
「なんて事だ・・・。二人目の犠牲者が・・・」
翌朝、目を覚ました真はすぐにベッドから降り、制服に着替え始めた。
「んあ・・・。何でそんな早いんだよ・・・?」
今目覚めたばかりであろう陽はとても眠そうに真に問いかける。
「ああ。ちょっとな・・・」
真は着替え終わると陽に「遅れるなよ」と言い残しすぐに部屋を出た。
「なぁーに焦ってんだぁ・・・。あいつぁ・・・」
陽は頭をボリボリとかきながら、ベッドから降りた。
陽が制服を着替え終わり、真を追いかけようとした時、ふいにドアが開いた。
「・・・。山本か」
「おはよう。陽!真は?」
「あいつぁ先行ったぞ」
「えー。3人で行きたかったのにぃ・・・」
「まあ食堂で会うだろ。行くぞ」
「うん!」
その頃PCルーム。
PCルームと言うのはパソコンの置いてある部屋の事で、技術の授業などで使われている。
真は早朝から先生の許可をとり、PCルームで調べ物をしていた。
カタカタカタ・・・
真のキーボードを打つ音が部屋に響く。
「・・・」
カタカタカタ・・・
「やっぱり・・・。似ている・・・。残虐性、猟奇性においても・・・」
「半年前の事件と・・・」
「Z県高校生連続惨殺事件・・・」
「被害者の殺害された順番がそのクラスの出席番号順になっている・・・」
「浅木の出席番号は・・・1番」
真がふと時計を見ると食事の時間が近づいていた。
「・・・。もうこんな時間か・・・」
真はパソコンの電源を切り、PCルームを出て食堂へ向かった。
続く




