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美味なる純血  作者: シクル


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第弐章「不審」

朝。

目をさました真はどことなく嫌な予感がしていた。

具体的にはわからないがとにかく嫌な感覚。

「何だろう・・・。嫌な予感がする・・・」

真が隣のベッドを見ると珍しく陽は既に目を開けていた。

「・・・。珍しいな。もう起きてんのかよ」

「まあな・・・。何か知らんが目が覚めた」

「何でベッドから出ないんだよ?」

「まだちょっと眠い」

陽は眠そうなまぶたをゴシゴシとこすっている。

「そろそろ時間だぜ?」

「わぁーったよ。起きりゃいいんだろ?」

陽は不機嫌そうに言うとベッドから降り、制服に着替え始めた。

「なあ陽。今日は何か嫌な予感がしねえか?」

真がベッドから降りながら言うと、陽は眠そうにあくびをしながら答えた。

「ああ?別にしねえよ・・・。でもお前がそう言う時は大体ろくな事がねえのは確かだが・・・・」

ベッドから降りた真も制服に着替えた。

「今日はあいつこねえのか・・・?」

「さあな。どっちにしたって途中で会うだろ?」

着替え終わった真と陽は後部屋を出て食堂に向かった。

しかし珍しく2人は李那に会わなかった。

「何であいつ今日いねえんだよ?」

真がそう言いながら食堂の席に座る。

「あいつが調子崩すなんて事あんのか?」

「いや、ないだろ・・・」

真が笑って答えると隣に気配を感じた。

「おはよ!おいてくなんてひどいよぉ・・・」

「李那ッ!」

真の隣にはまだ眠そうな李那が立っていた。

「・・・。寝坊したのか?」

「うん」

李那が恥ずかしそうにうなずくと、陽は「ガハハ!」と笑った。

「早起きのお前でも寝坊する事があんだな!」

「もう・・・・!私だって眠い時はあるんだよ!」

真がふと近くの机を見ると、1人の少女がさみしそうに座っていた。

「おい、陽。あいつって確かいつも浅木と一緒にいた奴だよな?」

「ああ。確かな。名前は・・・・」

卯月うづきさんだよ」

李那が思い出したように言うと陽もやっと思い出したようだ。

彼女の名は卯月うづき 魅華みか

優とは対照的に長い髪と内向的な性格が特徴である。

「何であいつ今日1人なんだよ?」

真が李那に尋ねると李那は首をかしげる。

「わかんない」

「ま、いっか」

「それより早く何か頼もうよー!」

「真、今日はお前が行って来い。俺は米だけで良いぞ」

「わかった」

そう言いながら真は食べ物を注文しに行った。



いつも通りの笑い声の絶えない教室。

しかし真だけはその教室に少しだけ違和感を感じていた。

「どーした山木!何かあったのか?」

「え?いや別に何もねーけど・・・・」

真に話しかけてきた少年の名は海原うなばら太一たいち

丸坊主の頭と長身が特徴だ。

彼は真と仲が良く中学時代からのつき合いだ。

「いーや!その顔は何か考え事をしている顔だ!」

太一は何故か真の感情を表情で読みとることが出来る。

付き合いが長いせいなのだろうか・・・?

「ふぅ・・・。何でお前は俺の考えが読めるんだよ・・・・・」

真は呆れたようにため息をついた。

「で?で?で?何について考えてたんだよ?好きなでも出来たのか?」

太一は真の顔を下から覗き込むようにして尋ねる。

真はうっとおしそうに顔を上げ、太一の頭を軽く叩いた。

「痛ェ!何でぶつんだよ!?」

「うっとおしい」

そんなやりとりをしているうちにチャイムが鳴り響いた。

「おッ!?俺席帰るわ!」

太一は走って席に帰っていった。

太一が席に座ると同時に先生が教室に入ってきた。

「号令をしてください。」

彼女の名は小島こじま真央まお

後ろで縛った髪と眼鏡が特徴で、性格はいたって冷静沈着。

そして生徒に対してかなり厳しい事から「こじまおう」と影で呼ばれている。

「起立!」

(あれ・・・?)

真は1つの空席に気がついた。

ソレに号令はいつもあいつだったハズ・・・。

「礼!」

「着席!」

全員が席に着く。

真は空席を見つめ、その空席が誰の物かわかった。

(浅木・・・・・!?)

「出席をとります。」

そう言って小島は出席簿を出した。

「・・・・。卯月さん。」

「は、はい・・・」

魅華が返事をすると同時に太一が「先生!」と叫ぶ。

「何ですか?」

「浅木さんは休みですか!?」

「・・・・・。はい。彼女は授業を欠席しています」

「それでは続けます」

(真の言ってた嫌な予感ってこれの事か・・・?)

陽は少し不思議そうに真を見ていた。



放課後。

魅華は職員室にいた。

「では卯月さん。あなたはこの件については何も知らないんですね?」

「はい・・・。私が部屋に入った時には既にあの状態で・・・・・」

その時ちょうど真と陽は未提出だった宿題を提出しに職員室に向かっていた。

「あのこじまおう絶対キレるぜ?」

真が笑いながら言うと陽も笑いながら言い返す。

「だな。でもお前も怒られるんだぜ?」

「まあそれもそうだな」

職員室のドアの前に来た真と陽は中からヒソヒソと話し声が聞こえる事に気がついた。

「おい、ありゃうちのクラスの卯月とこじまおうの声だぜ・・・」

陽が真にささやくと真は真剣な顔で頷いた。

「それでは、あなたが部屋に戻った時には既に浅木さんは殺害されていたのですね?」

「!?」

真と陽は正直自分の耳を疑った。

昨日は元気だった彼女が、今日は休んでいただけのはずの浅木優が・・・・

殺害されていたとは夢にも思っていなかったからだ。

「しかし何故臓器がなくなっているんだ・・・?」

教員のそんな呟きが、真達にも聞こえた。

「マジ・・・・かよ・・・」

陽が呟いた時、職員室のドアが開き、魅華が外に出ていった。

真と陽はあたかもさっきここに来たかのように装い、職員室へ入った。


続く

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