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美味なる純血  作者: シクル


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第壱拾壱章「連鎖」

「出席番号31番、山木真・・・」

李那は真にジリジリ近づいてくる。

「李那・・・!」

「イタダキマス・・・」

バッ!

李那は真に飛びかかってきた。

真はそれを避けると李那の後ろに回り込んだ。

「李那。自主しよう!」

真がそう言っても李那は耳を傾けない。

もう真を喰べる事しか考えていないようだ。

「シン・・・シン・・・!!」

「糞ッ!聞こえねーのかよ!?」

李那は真にまた飛びかかってきた。

今度は真も避けきれず、左腕を噛みつかれてしまった。

「あ・・・・ッ!!!」

真の左腕に言いようのない激痛が走る。

李那はすぐに左腕を離した。

左腕からドボドボと血が流れている。

李那は倒れた真の腹部に噛みつこうとする。

「ッ!!」

真は右にゴロリと転がると、すぐに立ち上がった。

そしてそのまま李那とは逆方向に逃げようとした。

しかし李那は大きく跳び、真の逃げようとした方向に着地した。

「!?」

「シン・・・シン・・・!!」

真は後ろに退こうとするが、足が震えて思うように動かない。

「う、おおおおおおッ!!!!!」

真はポケットの中からカッターを取り出し、刃を出した。

ズブリ

「!?」

カッターが突き刺さる感覚。

真はカッターを李那の心臓部に思い切り突き刺したのだ。

思い切り。

「かつての親友」に向かって・・・

いや、「かつての親友」ではない。

真にとって彼女は今でも親友なのだ。

そう、今この瞬間さえも・・・。

突き刺さったカッターの先からかすかに感じる体温。

それは間違いなく李那の物だった。

証拠はないがそう感じられた。

真はどこかでこの人物が李那ではない他の誰かであったら・・・

そう考えていた。

しかしカッターの先から伝わる体温は確かに彼女の物だと感じた。

真の目からまた涙がこぼれた。

「真・・・」

李那のかすれた声が聞こえる。

気がつけば李那の目からも涙がこぼれていた。

李那の心臓部からは血が流れ、その血がカッターの刃をつたわってしたたり落ちていく。

「ありがとう・・・」

そう言うと李那はそっと目を閉じた。

ありがとう・・・。

そう言った李那の顔は、何故か笑っていた。



8年・・・。

あの日からもう8年の歳月が過ぎた。

真はその後、警察に自主した。

当然だ。

犯人とは言え、殺人を犯したのだ。

自主するのは当然の事だった。

全ての理由を説明し、決まった判決は5年間の有期懲役。

犯罪ではあるが事件を解決した事には変わりない。

本来なら真の言うことなど信じてもらえるはずがない。

しかし真が殺害した山本李那の検死の結果、体内から人間のものと思われる肉片、臓器などが検出された。

これが証拠となり、真の刑も軽めで済んだのだ。

真は釈放されてからは医者になろうと日々努力した。

理由はどうあれ、人を殺してしまったのだ。

だからせめて人を救う仕事がしたいと考えたのだ。

そして真はついに今年医師免許を取った。

努力の成果である。

真は今アパートで一人暮らしをしている。

不便な所は特にない。

1部屋しかないが、気に入っている。

1つの部屋だけで暮らしていると学校での寮生活を思い出すのも気に入っている理由の1つかもしれない。

真は部屋に帰ると安堵のため息をついた。

ついに医師免許を取ることが出来たのだ。

色々と疲れているせいかすぐに眠くなった。

真は布団をひくとすぐに寝ようと思った。

真が布団を用意しようと思ったその時だった。

ガサガサ・・・

「鼠・・・か?」

物音が聞こえる。

一瞬、真はある事を思い出した。

「まさか・・・な・・・」

しかし背後から感じる威圧感は半端な物ではなかった。

真は恐る恐る振り返った。

「李那・・・!?」

一瞬そう思ったが違った。

李那ではない。

李那ではないがあの時の感じと同じ。

「そうかよ・・・。そういう事かよ・・・」

李那はもういない。

しかしあの日感じた狂気は今もここにある。

「イタダキマス・・・!」


連鎖する狂気。

連鎖する恐怖。

連鎖する事件。

この事件は、まだまだ終わらない。

今始まったのかも知れない・・・




既に書ききっていたとはいえ一週間程度で終わるとは思っていませんでした^^;

ここまで読んで下さった読者の皆様ありがとうございます。

よろしければ評価感想等をいただければと思います。

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