表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美味なる純血  作者: シクル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/11

第壱拾章「人格」

あれからすぐ、真は陽の家へ向かった。

その時は既に警察が駆けつけており、中には入れなかった。

しかしこれだけはわかった。

陽は殺されたのだ。

陽の言う、あいつに。

そのあいつが誰なのか・・・?

り・・・?

真は陽の最後の言葉を思い出していた。

真にはまだわからなかった。

真は家に帰ると、しばらく泣いた。

陽や太一、親友が、クラスメイトが次々に殺されていく。

もう出席番号最後の自分しか残っていないのかもしれない。

そんな事も考えた。

しかし悲しんでいる場合ではない。

解決しなければ・・・。

真は急いで生徒名簿を探した。

「確か入学式でもらったはずだ・・・!」

1年以上前の物だが捨てたおぼえはない。

とにかく見つけなくてはならない。

陽が最後にくれたヒント「あいつ」と「り」。

そして玲奈がくれたヒント「生徒名簿」。

この2つの指す真実は、クラスの中に犯人がいる。

それしかなかった。

「あ、あった・・・!!」

真は1番から順番に見ていった。

「浅木・・・園部・・・浜田・・・・・・陽。」

「え・・・?これって・・・?」

真は何かに気づいた。

何故見落としていたのだろう。

簡単な事だった。

何故誰も気づかなかったのだろう・・・。

「嘘・・・だろ・・・?」

真はバタリとベッドに倒れ込んだ。

「ありえねえ・・・よ」


翌日。

真は朝早く起き、身支度を始めた。

「これは持ってた方が・・・良いよな」

真は部屋にあったカッターを取り出した。

真は刃が出るかどうか確認すると、ポケットにしまった。

護身用だが、あまり役に立つとは思えない。

ないよりはマシだが・・・。

「よし」

真は1階に降りた。

美代子が台所で朝食を作っている。

「あら、真。おはよう」

「おはよう」

「朝食、できてるわよ?」

「ありがとう。でも食欲わかないよ」

「そう」

真はそう言うと玄関へ向かった。

「どこかへ行くの?」

「ああ。ちょっとな」

「それとおふくろ・・・」

「何?」

「ありがとな・・・」

真はそう言い残すと靴をはき、外へ出ていった。

「真・・・?」


(絶対に逃げない。どうせ逃げられないのなら、立ち向かう!)

真は近くの廃屋に向かっていた。

あそこなら誰にも迷惑がかからないからだ。

そう、真は闘うつもりなのだ。

陽を、クラスメート達を殺した何かと。

そして真は知っている。

その何かが何なのか。

真は廃屋につくとすぐに中に入った。

本当はいけないのだがやむをえない。

中はかなりボロボロだった。

壁の所々がはげ、家具という家具がほこりをかぶっている。

真はここで待つつもりなのだ。

「あいつ」が来るのを。

その「あいつ」は真のよく知っている人物だった。

「あいつ」・・・いや、彼女はいつもそばにいた。

まさか彼女だとは思わなかった。

信じられない。

信じたくない。

しかし玲奈の言葉が何度も蘇る。

生徒名簿をよく確認する事ね・・・。

そして確認した生徒名簿。

そんな事を考えていると、ガチャリとドアがあいた。

「!?」

「真・・・」

李那だ。

「李那・・・」

「どうしてこんな所にいるの?」

「聞きたいのはこっちだよ。お前こそ何でこんな所に来るんだよ?」

「そ、それは・・・」

李那がうつむく。

「少し昔話をしようぜ。お前と出会った時の話を・・・」

「半年前だ。お前と出会ったのは。廊下で出会って、いきなり話しかけてきた」

「うん」

李那はコクリと頷く。

「それからお前はよく俺と陽と話すようになったよな?」

「うん」

「半年前だぜ・・・」

真は懐かしそうに言う。

「半年前、Z県で何があったか知ってるか?」

「え・・・?」

「連続高校生惨殺事件だ。あるクラスの生徒達が出席番号順に殺されていったんだ」

「今回の事件とそっくりだよな・・・?」

「それが・・・何なの・・・?」

「李那・・・。お前、出席番号何番だ?」

「32番・・・だよ」

「おかしいんだよ・・・」

「え?」

「ないんだ。生徒名簿には・・・」

真の目から涙がこぼれる。

「32番なんて数字はどこにもないんだッ!!出席番号の最後は31!俺なんだッ!!32番なんてないんだよッ!」

「存在しない出席番号、半年前の事件、そしてお前・・・!犯人は・・・お前しか考えられないんだ・・・」

真は大粒の涙をこぼしながら近くの机を叩いた。

「俺の言ってる事が嘘ならそう言ってくれ・・・」

「やっぱりすごいよ」

パチパチパチパチ・・・!

李那が突然拍手をし始める。

「まさかここまで推理できるとは正直思っていなかった」

「ふふふ・・・」

李那が笑い始める。

「そう、全部私。白凪校の事件も、この事件も・・・。全部私」

「正確には、そうじゃないんだけど・・・」

「え・・・?」

「もう1人の・・・私」

「な、何言って・・・」

動揺している真とは裏腹に、李那は淡々と話し続ける。

「知ってる?多重人格って。自分の中にまったく違う人格ができちゃう精神病」

李那はそっと自分の胸に手を当てた。

「居るの。私の中にももう1人。私じゃない私。言ってる意味、わかるかな?」

「前の事件の時、私は何度も止めた。誰も殺さないで。でも止まらなかった」

「どうしてもタベタイタベタイって・・・。言うことを聞かないの」

李那の目からも涙がこぼれる。

「だから約束したの。クラスのみんなを喰べたらもうやめるって。でも約束は守られなかった」

「お、おい。ちょっと待てよ。でもお前は生徒じゃなかったんだろ?何で学校に?」

「私は親もいないし、学校にも行けなかったから・・・。人並みの事がしたかったの」

「だから少しの間だけでも、バレるまでの時間だけでも、学校と言う空間にいたかった」

「集団って不思議だよね。知らない内に1人増えても、知らない内に減ってもあまり気づかないんだよ?」

「でももう終わりだね。真以外はみんな私が喰べてしまった。前の時だってそう」

「でも、お前は渡部玲奈だけは殺さなかった。何故・・・?」

「玲奈ちゃんはね、私の唯一の親友だったの。私が生徒じゃないってわかっても、仲良くしてくれた。だから無理矢理私を止めたの。私は、真だって喰べたくない。だけど・・・」

「もう、ダメ」

「え・・・?」

「多分、この後玲奈ちゃんも喰べちゃうかも」

李那の表情が変わり、真を睨みつけた。

その顔はさっきまでの悲しい李那の顔ではなく、獲物を前にした肉食獣のような・・・

そんな顔だった。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ