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美味なる純血  作者: シクル


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第壱章「喰事」

どうでもいいと思う人は前書きなんて無視しちゃってくれて構いません(笑)


この小説は「小説家になろう」で過去に使っていたアカウントで投稿したものの加筆修正版です。(基本的にはあまり変わってませんが)

投稿する際に非常に迷ったのですがこの作品にはとても思い入れがあり、過去のアカウントで全話投稿しきれなかったので投稿することにしました。

既に全話書ききってあるものに加筆修正し、話を追加するだけなので前作の「〜夢は現となりて〜」よりも早く更新できるかと思います。

ちなみに過去のアカウントでの名前は「針金」です。


それでは「美味なる純血」をお楽しみ下さい。

「真・・・」

李那のかすれた声が聞こえる。

気がつけば李那の目から涙がこぼれていた。

「ありがとう・・・」

そう言うと李那はそっと目を閉じた。




「ッ!?」

気がつくとそこはベッドの中だった。

「夢・・・・か。それにしても変な夢だ」

今ベッドから飛び起きた少年の名は山木真やまぎしん

やせても太ってもおらず、身長も高くも低くも無い。

普通の高校二年だ。

「んだよ起きちまったじゃねーか。夢ぐれえでピーピー騒ぐんじゃねえ!」

隣のベッドで真を怒鳴りつけている男は真桜陽まさくらよう

肩まで伸びた髪と、髭が特徴だ。

彼は真のルームメイトである。

真のいる学校は寮生活で、真と陽は同じ部屋である。

「おお、悪い。でもそろそろ朝食の時間だぜ?」

真は笑いながら言う。

しかし陽は眉間にしわをよせたまま真を睨んでいる。

「うるせえ。後20分もあんじゃねえか。お前に起こされなきゃまだ後15分ぐらい寝れたんだぞ」

「まあそう言うなって!な?」

真はベッドから降り、服を制服に着替え始めた。

「チッ!わぁーったよ。起きればいいんだろ!?」

陽もベッドから降り、制服に着替える。

「それより真。そろそろ来るんじゃねえのか?あいつが・・・」

「ああ。そろそろだな」

真と陽がそんな会話をしているうちに廊下からドタドタと足音が聞こえる。

バタンッ!

ドアが勢いよく開けられ、1人の少女が部屋に駆け込んできた。

「しーん!おっはよ!」

彼女の名は山本李那やまもとりな

左右に縛った長い髪と少し高めの身長が特徴である。

「バッカお前ここ男子の棟だぞ!?毎朝毎朝早くからッ!」

「いいじゃん別に。だって私は真と陽と一緒に朝ご飯食べたいんだもん」

「だったら食堂で会えばいいだろ・・・」

真は呆れて呟いた。

「何か言った?」

「別に」

真はそっけなく答え、制服の上着を着た。

「それより・・・早く食堂行こ!」

「ハイハイ・・・・」

李那を先頭に真と陽は部屋を出て食堂に向かった。

真達が男子の棟を出て食堂へ向かう廊下を歩いている途中だった。

1人の少女が真達の前に立ちふさがった。

「そこのあなた。どうして女子のあなたが男子の棟から出てくるのかしら?」

「出た。アホ木・・・」

「真桜君は黙っててくれない?」

少女にギロリと睨まれ流石の陽も言葉を失った。

彼女の名は浅木優あさぎゆう

黒縁眼鏡と短めの髪が特徴だ。

彼女は真達のクラスの学級委員長で、何かと規律に厳しい。

「あたしはそのがどうして男子の棟から出てきたのかって聞いてるの。校則では禁止されているはずよ?」

「まあそうかたい事言うなって!だからガチガチ委員長って言われんだぜ?」

真がケラケラと笑いながら言うと優は真を睨みつける。

「あ、すいません」

圧倒された真は黙ってうつむいた。

「で、どうなの?」

「え、え〜と・・・・」

李那は困ったようにうつむき考え込む。

「あら。そろそろ朝食の時間だわ。悪いけど失礼させてもらうわ」

そう言って優はスタスタと食堂の方へ歩いて行った。

「おっかねえな・・・。大丈夫か?李那」

真と陽が李那の方を見ると思いの外笑顔だった。

「うん、大丈夫だよ。早く食堂行こう?」

「ああ」

真達は食堂へ向かって行った。



「ねえ。何食べる?」

李那は嬉しそうにメニューを眺める。

「そーだな・・・。じゃあ俺は米だけで良い。梅干しもあるしな」

陽が髭をさすりながら言う。

「やっぱお前和食なのな・・・。どれだけ梅干し好きなんだよ・・・」

「やかましい!人の好みをとやかく言うな!それにこの梅干しはうちのばあさん特製の・・・・」

「あー。わかったわかった。もーいいよその話は」

真は陽をなだめるように黙らせた。

確かに陽の持っている梅干しは彼の実家から送られてきたもので、市販のものよりはるかにおいしい。

「じゃー私はねー・・・。オムライスとチャーハンとラーメンとカレーライスとうどん!」

「相変わらず大食いだな・・・。炭水化物ばっかだし」

「えへへ・・・」

李那は少し恥ずかしそうに笑った。

「真はー?」

「俺は目玉焼きと米で良いよ」

「じゃあ俺が全員分頼んでくる」

そう言って陽は席から立ち上がった。

「おお。そうか悪いな」

陽が立ち去った後、優が真達の机に近づいてくる。

「あら、席空いてるわね。ここいいかしら?」

優が陽の座っていた席を指さす。

「悪いな。ここ陽の席なんだ・・・。他あたってくんねーかな?」

真が申し訳なさそうに言うと、優は少し頬を赤らめた。

「べ、別にいいわ。他の席を探すから・・・・」

「そっか。悪いな」

真がそう言うと優は近くの空いている席を探し、そこに座った。

それから数秒たった頃、陽が席に戻ってきた。

「もう少し待てってよ。山本、お前頼み過ぎだ」

陽が呆れたように言う。

「仕方ないじゃん!全部食べたかったんだもん!」

「そういう問題か?っつーか太るぞ?」

真は半笑いで言う。

「もー!馬鹿!」

そんな他愛のない会話をしているうちに食事が運ばれてきた。

真達の机に大量の料理が運ばれてきた。といってもほとんどは李那の物だが。

「やったー!いただきまーす!」

そう言って嬉しそうに目の前の料理を食べる李那を見て、真と陽はやはり驚かされているのだった。



「あー。駄目だあたし・・・。今日も山木君に何も言えなかった・・・」

放課後、自分の部屋に戻った優はため息をつく。

「あたし山本さんに嫉妬してるのかな・・・。今日もつらくあたっちゃったし嫌な女だなぁ・・・。あたしって・・・」

そう言って優はベッドに倒れ込んだ。

「遅いな・・・。魅華みか・・・」

優がそう言ってもう一度ため息をついた時「ガタッ!」と物音が聞こえた。

「誰?魅華?」

優がそう言って周りを見渡した時はすでに遅かった。

背後から感じる威圧感。

優の背後で何かがうごめいている。

「!?」

優が振り向くと同時にその何かは優の首筋にガブリと喰いついた。

恐怖を感じる暇さえ、その何かは与えてくれなかった。

そのままその何かは首を喰いちぎった。

悲鳴すらあげさせず・・・。

今まで胴体に接続されていたその首は無惨に宙を舞い優のベッドの上に転がり落ちた。

そしてその何かは優の体に喰いつき、むさぼるように喰った。

飛び散る鮮血。

転がる肉片。

残酷にも少女の体は血塗られた肉片へ変わっていった。

残ったのは首と喰い散らかされた肉片だけだった。

何かは満足したのか、部屋の窓から飛び降りて行った。

それから数分後のことだった。

ガチャリとドアが開き、中に少女が入ってくる。

魅華だった。

「な、何よこれ・・・・」

「優ッ!!!!」

魅華は無惨に喰い散らかされた優の体を泣きながら見つめていた。


続く

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