記憶喪失の少女
「まず、イレギュラーというのは他の憑かれ者と比べてどこか特異点が違うことだ。肉体のイレギュラーでひどいのはトカゲの憑かれ者で全身に鱗があったり、哺乳類系統に憑かれて全身毛があったりとその他もろもろ色々ある。精神のイレギュラーとは大体二種類じゃな、一つは完全に自我を持っていかれ元の記憶すらない状態だったり言葉すら通じなくなることもある。もう一つは二重人格のように人格がもう一つ形成されるタイプじゃな。ただしこれは精神の状態で二重人格になったわけではないからな、まず治らないだろう。あの子の場合は最後に言ったタイプじゃな。」
わかったか、とコウがフィルに問いかけるとフィルは理解はできた、と言う代わりに小さく頷いた。
それであの子を引き取って欲しいんじゃが…という老人の一言にコウは首を振った。
「悪いがそれはできない。俺たちは旅をしている。町の外に出ることになるから魔物と戦うことにもなるだろう、そうなるとその子が危険だ。庇いながら戦う余裕なんてないんだよ。」
そう残念そうに俯いた。
「その少女の周りに人や魔物、動物の死骸が大量にあった。おそらくその子がやったんじゃろう。かわいそうじゃがさすがにここに置いとくわけにもいかん、どうにかならんか。」
老人の話を半分も聞かずにフィルとコウの思考は停止仕掛けていた。それはフィルとコウにはとてつもない悪魔をその少女に重ねて見てしまったからだ。




