第二ボタン
掲載日:2016/04/30
「あ、あのっ」
思わず、呼び止めてしまった。
だから、彼は私を振り返る。
「あれ」
見覚えがあったのか、私の顔を見るなりそう言ってくれる。
「確か、一つ下だったよね」
「はい、そうですっ」
私の気持ちが揺るがないうちに。
私は卒業したてで、胸に小さなバラのコサージュが入っている先輩に尋ねる。
「第二ボタンを、いただけませんか」
ハサミは片手に入るぐらいの小さなものを持ってきていた。
彼は一瞬周りを見渡すように遠い目をする。
だが、すぐに戻ると私に近づいていった。
「まだその風習続いていたんだな」
彼は言いつつも来ているブレザーを私に見せる。
「ハサミはあるかな」
「は、はいっ」
チョキンと慌てて糸を切ると、ペコペコお辞儀をしながら私は彼から離れた。
それが、私と彼の最後の思い出。
第二ボタンは、まだ大事に取ってる。
あれから大学へと入って、結婚もして、子供もできたけど。
何十年経っても色褪せることのない、大切な1ページだから。




