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修行

 サラさんが旅立って翌日

 今日の俺のスケジュールは!

1.朝飯

2.魔法に関する勉強

3.筋トレ

4.昼飯

5.剣の稽古

6.晩飯

7.魔物に関する勉強

8.寝る!!

 以上


 という予定だ。

 今は2番目勉強中だ。朝飯を食べた後そのままその部屋で勉強しているのだが、使えもしない魔法の勉強ほどつまらないものはないな。知れば知るほどガッカリ感が増していく。なに? この風属性魔法、空飛べるとか人類の夢じゃん! 乗り物なしで飛べるなんて最高じゃん!攻撃とかできなくていいから飛んでみたいよ!


「飛ぶことは無理じゃが跳ぶことはできるぞ」


 不意に後ろから声を掛けられた。振り向くとばあちゃんが呆れ顔で立っていた。

「へ? なんで俺の考えてることがわかるんだ!? まさかエスパー!?」

 いや魔法使えるからエスパーみたいなものか。

「エスパーとはなんじゃ?」

 ばあちゃんは疑問符を浮かべている。

「なんでもないです」

「心を読んだわけではないぞ、おぬし声に出ておるぞ」

 ばあちゃんはやれやれと言った感じで言う。

 衝撃の事実!? お約束が露呈した!

「マジ!?」

「マジじゃ、結構な頻度で声に出ておるから気を付けた方がいいぞ。サラに聞かれたらまずいこともあろうに……」

 確かに心秘めておきたいことの一つや二つや三つ……いっぱいあります!

「えっと、なんかまずいこともらしてましたか?」

 俺は下から探るように聞いてみた。 

「さぁのぅ、それよりもじゃ」

 ばあちゃんは切り捨てるようにスッパリと話を変えた。

「いや、結構重要なんですけど」

 聞かれちゃまずいこと結構言ってませんでした?

「跳ぶことはできるぞ」

「スルーされた!? ……そりゃあ跳ぶことくらいできるけども?」

「おぬしの言う跳ぶはせいぜい腰くらいまでじゃろ? 頑張って身長くらいか?」

「まぁ、助走つければそのくらいかな」

 走り高跳びでもそこまで跳べるかわからないけど……

 ちなみに俺の身長は175cmくらい超平均。180はほしかったなぁ。

「ふむ、でじゃ。昨日おぬしに魔力なしの汚名を着せたが……」

「そんな汚名着せられてたのか!?」

「全くないというわけではない。魔法を使用できるレベルの魔力がないだけじゃ。おぬしのようなのは稀有なケースで忘れておったのじゃが、魔力は生きている限り微量ではあっても誰にでも流れておるのじゃ。もちろんおぬしにも流れておるが、その程度の微量の魔力じゃ。全くないとは死を意味するからのう。」

 ばあちゃんは丁寧に説明してくれたが、結局どういうことだろう?

「ん~? つまり?」

「普通の魔法を使えばそれだけで即死じゃな」

「……そんな身も蓋もない」

 さらっと嫌な事言うんだよなぁこのばあちゃん。

「じゃから放出しなければ使えなくもないとゆうことじゃ」

「おーーーーって、それって魔法なの? ほんとに死なない?」

「魔法ではなく『魔力制御』じゃ。魔力を体内に留めておくから死にはせん。まぁ普通は使わない方法なんじゃがな」

「へ~なんで?」

「制御が難しいのじゃ、静かに流れているものを強引に動かすようなものじゃからな。うまいことやらなくては体への負担が大きくなる。それに普通に魔法を使う方が簡単じゃし安全じゃ」

 俺は腕を組み唸りつつ訊ねる。 

「それはつまり安全ではない、と?」

「まぁ、気にするな。早く強くなりたかったら覚えるしかないのじゃし、うまくやればよいだけじゃ」

「ん~それはそうだけど……とにかく概要(がいよう)を教えてよ」

 聞いてみないことにはなんとも言えないしな、ほんとにヤバイことならやらなきゃいいんだし、と思い俺は話を聞くことにした。まあ、興味の方が強いんだけどね。

「うむ、魔力は生きるため、体を動かすために体中を駆けめぐっておる。じゃから魔力の流れが滞ったりすると体の不調につながるわけじゃ。これは無意識下で働いておるからボーッとしておっても勝手に循環し続ける。この流れを自分の意志で制御できれば、普段以上の身体能力を引き出すことができるのじゃ」

 俺は黙って頷きながら続きを待つ。

「例えば、流れのスピードを上げれば反射速度が早くなる。ジャンプの際に足に瞬間的に強く流せば、高く跳べる。元々の身体能力が高ければその分上昇率も上がり、流れの速さや強さを上げても上昇する。当然難易度も上がるがの」

「マジで!? じゃあみんなそれ使ってるの?サラさんも?」

 サラさんがこう見えて強いって言ってたのを思い出し聞いてみる。

「普通は使わないって言ったじゃろうが、魔法の使えるものが制御に失敗したら留めておかねばならん魔力まで放出してしまうやもしれん。そうなったら後遺症どころか、下手したら……」

 ばあちゃんは話を聞いてなかったのかと呆れながら言うが、途中で口を噤んだ。

「……?」

「というわけでこれを扱えられれば、おぬしにとって強力な武器となると思うのじゃが、どうする?」

 ばあちゃんは肝心なところをスルーして話を進めた。

「下手したらのあとが気になるけど確かにおいしい。リスクは高そうだけどかなりおいしい」

(男ならハイリスクハイリターン!! 自滅への近道! それダメじゃん!?)

 でもここは掛けてみるべきだろう。身を守る術がないことには、この先どーなるかわからないわけだし……

「うん、それ俺のものにする! 教えてください!」

「ふむ、では外で修行じゃ!」

「はい!」



 というわけで


3.筋トレから魔力制御の修行へ変更


「はっ、ふっ、とうっ……」

 ひたすらジャンプする俺……しかしなにか違う……

「跳べねぇじゃん」

ボカッ

「痛ってーーーーーー」

 俺が跳ぶ代わりに薪が飛んできた。

 ばあちゃんは薪を投げた体制のまま俺に指を差し声を上げる。

「バカもん、それはただ飛び跳ねとるだけじゃ! 体内の魔力を制御せんか!」

「制御って言ってもなぁ。どうやってやるんだよ~」

「まず、自然体で体を楽にせい。そして、集中し体内をめぐる魔力を感じるのじゃ」

 俺は足を肩幅に開き両腕をだらんとたらし、肩の力を抜いて目を閉じ深く深呼吸した。

「スーーーーっ、ハァーーーーーーー」

 息を吐きながら、体の力を抜いていく……

「……」

「…………」

「………………わからん」

「じゃろうな」

 わかっててやらせるなよ!遊ばれてるの?

「もともと魔力も魔法も知らなかったのじゃろぅ? おまけに魔力はほぼなし」

「うっ」

 ばあちゃんは辛口だ、俺のガラスの心をかち割る

「そんな相手に感じろというのが無理な話なんじゃがな。魔力があれば今までとの違和感で感じられるはずなんじゃがな」

 ばあちゃんはそこでニヤリと笑う。

「でじゃ……」

 ばあちゃんは懐をゴソゴソしだした……変なもん出すなよ~ドキドキ

「これじゃ」

 ばあちゃんが懐から取り出したのは指輪だった。

「……お気持ちはうれしいのですが、ごめんなさい。俺にはサラさんという心に決めた人がいますので」

 俺は丁重にお断りした。

「なにを言っておるかわからんが、サラはまだまだおぬしにはやれんからな」

 俺も断られてしまった。

「これは、俗に言うマジックアイテムじゃ」

「これが?」

 普通の指輪に宝石みたいなのが付いてる……普通の指輪じゃ……いや、

「魔石か!」

「うむ、アイテムの中には魔法を発動できるものがあるのは……知っておろうな?」

 ばあちゃんは疑いの眼差しで俺を見る。

「あ、あ、あ当たり前でしょう、やだなぁもう……」

 たしか魔法が使えなくてもかざすだけで発動するとか、威力は本物よりも劣るみたいだけど。まぁ、ゲーマーにはこの手の知識は一般常識だよな(仕組みはわかんないけど)。

 ばあちゃんはため息交じりに話を続ける。

「まぁよい、これは回復系の魔法を発動できる指輪じゃ」

「へぇ、で?」

「はめてみよ」

「はぁ……ちっさ!?小指にしか入んないんだけど」

「どの指でもかまわんよ」

 仕方がないから左手の小指にはめてみた。

 ばあちゃんはそれを見届けると、俺の右腕を持ち上げ自分の右腕を上げる。そして指を二本のばすと……おもむろに勢いよく振り下ろした。

バチッ

「いったーーーーーーーーーー」

 しっぺをくらった! しっぺをくらった! 2回言っちまったよ!

(異世界でしっぺだとーーーーー!)

「なにすんだ!?」

 俺はフーフーしながら腕をさする。見事に腫れ上がっている。

 ばあちゃんは満足げに見ている。

「よし」

「よしじゃねーー痛いよ!」

 俺は声を荒げて抗議する。

「まぁ怒るな、何のために指輪をはめたと思うておる?」

「?……あ!?」

 俺は指輪をはめた左手を腫れた右腕にかざした……しかしなにもおこらなかった。

「なんでだ!?」

「じゃろうな」

(またか!? おい!)

 俺は心の中で叫んでいた。

 そんな俺をばあちゃんはアホな子を見るような目で見る。

「ただかざしただけで発動するものか!あぶないじゃろうが!」

 たしかに。これが攻撃系の魔法だったら、手を振っただけで発動することになる。感動の別れのシーンが大惨事になるわ!

「どうすればいいんだ?」

「イメージじゃ、傷癒す、腫れを癒す、元の状態に戻す、そんなイメージを強く念じてかざすのじゃ」

「う、うん」

 強くイメージし念じてかざす……すると指輪が淡くひかり腫れ部分を包みこんだ。

「おーーー!? 少しづつ腫れが引いてく! ……キモッ」

 腫れが引くと光は消えていった。

「すげーーーーー! これが魔法かぁ、ほかの魔法ねぇの?」

ボカッ

「イタッ」

 興奮してほかの魔法を催促したら、また薪が飛んできた。

「目的を忘れるでないわ、バカもん」

「目的? マジックアイテムの使い方だっけ?」

「!? ウソウソッ! え~~~っと、そう! 魔力制御!」

 ばあちゃんは薪をおろした。あぶね~また薪の餌食になるところだった。

 俺は胸をなで下ろしつつ訊ねた。

「マジックアイテムとなんの関係が?」

「魔法を使うにはイメージが必要じゃ。強くイメージし、それを魔力で具現化、具象化したものが魔法じゃ。魔力の制御も同じじゃ。そして、回復魔法は外からの魔力で内側、体内の魔力を活性化させることで治癒する」

「へぇ、指輪の魔法だけで治したのかと思った」

「今、内側の魔力を活性化させたのじゃが、そのとき魔力は感じられたかの?」

「え?」

「魔力を感じてもらうためだったのじゃが……」

「……」

「……」

 ばあちゃんの目が鋭くつり上がって行くのがわかった。

「もう一度腕を出せ! 今度は加減なしじゃ!!」

「だって、そんなこと言わなかっ!? わーーーーっ、ごめんなさいごめんなさい! 手加減してください!! 優しくしてーーー!」

 そして加減なしのしっぺをまたくらったのだった。

「イッターーーーーーーーーーーーーー」





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