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予兆2

 ……


 ……闇


 ……闇の中、広い部屋にボワッと光が拡がる


 ……部屋の中央、透明な円柱状の容器に管が繋がれている

 その容器の中には、液体が入っており、そこには人型のシルエットの闇の塊が弱々しく漂っている

 光はここから溢れたようだ

 その容器の前に、それを見つめる男がいる

 その男は歪に顔を歪ませると、闇の塊に語り掛ける

「お前のおかげで、随分と研究が進んだ。感謝する」

 言葉とは裏腹に、見下したような、蔑んだような視線を向けている

『クッ……に、人間風情に、俺の力を……』

 人型の闇の塊は衰弱しているのか言葉を最後まで言い切ることができなかった

「ふふふ、なんとでもほざくがいい。さて、向こうの仕込みも済んでいる。そろそろ検証実験をしてみるとするかな」

 男はそう言葉を残すと、部屋を出て行った

『くそ……こんなところで……』


 ……


 ……




 カレンは今、数名の護衛をつけてもらい里帰りしている。ということになっている。

 里帰りすると言うのは、あくまでもカモフラージュのためだった。カレンにはリオル村経由でシドー村へ向かってもらうことになっている。

 なぜこのような偽装を施さなければならないのかと言うと、それは嵐三の話が関係してくる。

 今、ローズブルクでは、ロマリオの意思に従うロマリオ派と、戦力を外に出すべきではないと言う、保守派とに分裂しつつあった。その為、ロマリオ派を押さえるため、いや、正確には光輝たちを城に留めるための工作が準備されつつあると言うのだ。

 それを耳にしたアルマが嵐三たちに相談してきたのだ。しかし、あくまでも噂レベルの話のため、証拠もなく、糾弾することもできなかったのだ。

 どんな工作かはわからないが、光輝たちを留める方法としては、人質が考えられる。そしてその候補として、光輝や4戦士以外の人物が上げられる。つまり、汐音と結衣、そしてカレンだ。

 結衣はすでに総司と共にシドー村へと出しているため危険はないだろう。問題は汐音とカレンだった。汐音は光輝から離れるつもりはないため、光輝が目を光らせていれば問題ないだろう。問題なのはカレンだった。個人の戦闘力が他よりも低いため、一番標的とされやすいだろう。狙われたなら抵抗もできないまま幽閉されてしまうかもしれない。

 あくまでも仮定の話だが、もしそれが実際に行われれば、面倒なことになる。

 そこで嵐三はロマリオ、マーサ、アルマと相談し、カレンを外に逃がすことにしたのだ。里帰りという名目ならば怪しまれることはないだろう。そしてそのままシドー村へ向かってもらい、総司たちと合流してもらうつもりでいた。総司の体調が回復し、結衣の修行が完了し次第、エルメティアへ向かってもらうつもりでいいた為、回復役であるカレンを同行させようと言うのだ。

 しかし、その道中で狙われるかもしれない為、アルマに信頼できる兵を数名護衛につけてもらったのだ。


「カレンちゃん、大丈夫でしょうか」

 ロマリオの執務室に集められ、現在の情勢について話していると、汐音が心ここにあらずと言った面持ちで呟いた。

 こんな話を聞かされた後では心配になっても仕方がないだろう。

「カレンちゃんならきっと大丈夫さ。あの子はしっかりしているからな」

 確かに年の割にはしっかりしている。が、しっかりしていようと、危険なことに変わりはないのだ。

「ああ、護衛もつけている、彼らなら余程の手練れでない限り遅れは取らないさ」

 アルマは安心させるように告げる。余程選出した兵士たちの実力に自信があるのだろう。

「まあ、すべてが噂で、何事も起こらないと言うこともあり得るしのう」

 嵐三はそうあってほしいと言う希望を籠めてそう口にした。裏を返せば、それが起こる可能性がかなり高いと言うことを意味している。

 麻土香は、不安そうにしている風音の肩を抱いて安心させるようにしている。

 まだ年齢的にも子供な風音には、今の情勢は理解が追い付かないほどにショックな事態だろう。


コンコン


 不意に扉がノックされた。

 マリアが扉を開くと、一人の男性が入ってきた。年のころは嵐三たちよりも若干若いくらいだろうか。この国の宰相の職に就いているロイドという男だ。

 ロマリオはロイドの顔を見ると、一瞬表情を険しくした。が、すぐに元の表情に戻した。

 それもそうだろう。このロイドこそがその噂の中心人物、保守派の筆頭なのだから。

「どうしたのだ? 急に来るとは珍しいではないか」

 ロマリオがロイドの要件を聞き出そうと口火を切った。

「なに、皆さんがこちらにお集まりだと聞きまして、例の件について話しているのかと思いまして」

 例の件とはなんのことだろう?

 光輝は怪訝な視線をロイドに向ける。

「いや、その話ではない」

 ロマリオは否定する。一体何の話だろう?

 ロイドはロマリオの机に広げられた地図に目を向けた。

 地図にはいくつかの印と矢印が書き加えられていた。

 それはカレンが無事にシドー村へたどり着くために考えられた経路であり、待ち伏せがありそうな箇所だった。

 ロイドは目敏くそれを見つけ注視していた。

「それは?」

「うむ、これはドラゴンの行動予測と、潜んでいそうな場所を上げたものだ。いつまでも後手に回っているわけにもいくまい」

 ロイドの問いかけに、ロマリオはうまく誤魔化して答えた。

「確かにそうですな」

 ロイドは地図から目を離すと、さらに続ける。

「それで、ドラゴンを討伐した後、やはり光輝殿たちは向こうの世界へ?」

「うむ、奴らを向こうの世界に逃がしてしまったのは我々の落ち度だ。早いうちに手を打たねばなるまい。そなたもそれはわかっておろう?」

「ですが、奴らがいつこちらに戻って来るやも知れないのですぞ? その時に光輝殿たちがいなくては、我らだけでは対抗できますまい。向こうの世界の事は向こうの世界の住人に任せてはどうですか?」

 ロイドは厄介事が他所の世界に行った事を良しとしているようだ。そしてその隙に国の防御を固めようと言うのだろう。

 国を支える者としてはごく自然な考えなのかもしれないが、自分たちで拡げてしまった厄介事を他人に任せると言うのはどうだろう? ひとでなしと罵られてもおかしくはない考え方だ。これでは精霊たちに嫌われても文句は言えないだろう。

「そういうわけにはいかん! そのような人道を外れたような考え方は認められん!」

 ロマリオはロイドの考えをきっぱりと否定した。

「しかし、それでは皆の反感を買うだけですぞ。これ以上は私でも抑えきれませんぞ」

 ロイドは言うに事欠いて、自分が皆の反感を抑えているのだと(のたま)った。自分がその中心人物だと言うのにだ。

「(よくもぬけぬけと……)」

 マーサが小声でつぶやいているのを嵐三が押さえている。

 ロイドのその言葉は、暗に脅迫しているのかもしれない。これ以上意見を聞き入れてくれないのなら実力行使も辞さないと、そう言っているのかもしれない。

 ロイドの不敵な笑みがそれを物語っている。

 しかし、ロマリオの考えは変わらない。

「私は考えを変えるつもりはない」

「そうですか……残念です」

 っ!?

 光輝は、いや、光輝だけではない、嵐三もロイドを見据え身構えていた。

 一瞬ロイドから不穏な気配が発せられた気がした。

 しかし、次の瞬間にはそれが気のせいだったかのように、その気配は消えていた。

 ロイドは部屋を出る前に振り返り告げる。

「なるべく抑えてはみますが、そう長くはもたないでしょう」

 ロイドは最後通告のように告げると、頭を下げ部屋を出て行った。

「あのクソ狸めが!」

 マーサは口悪くロイドを罵っている。

 それを「まったくじゃ」と同意すると思われた嵐三は、何やら考え込んでいた。

 光輝は嵐三に訊ねる。

「師匠、さっきの気配、あれは……」

「うむ、何か嫌な予感がするのう」

 嵐三は険しい表情で宰相の出て行った扉を睨みつけていた。



 カレンはリオル村のすぐ近くまで来ていた。

「もうすぐリオル村ですね。自分リオル村に来るのははじめてなんですよ」

「あ、私もそうだよ。どんな村なの?」

 という二人は、冬華を師匠と慕うシルバと、冬華が一緒に魔法の修行をした魔法士、冬華の友達のケイトだった。

 カレンと共に行動しているのは、アルマが選出した兵3名と、見知らぬ兵でカレンが緊張するといけないと思い、裏切る心配のない冬華の知り合いで年の近いこの二人をつけていた。

 年が近いと言うことですぐに打ち解けることができ、二人のおかげで、緊張することもなかった。

「どんなって、普通だよ。普通の田舎の村だよ」

「でも私の育った村に比べたらきっと賑わってるんだろうなぁ。私の村、ローズブルクの東にあるんだけど、山の麓で森に囲まれてるから人が滅多に来ないんだよねぇ」

 ケイトの村はシルフィにトラウマを植え付けたセシリアのいる村のようだ。これはこの3人も知らない情報である。知っているのはシルフィとセシリアだけだった。

「自分、生まれも育ちもローズブルクだから、田舎って興味あるんですよ」

 シルバは意外と都会っ子のようだ。

「田舎の村は小さいから、みんな顔見知りで家族みたいなものだよ」

 カレンは村のみんなの顔を思い浮かべてにんまりする。早く会いたいと思っているのだろう。

「だよねぇ。でもそのせいで、昔の恥ずかしい思い出も一生村全体で共有することになるんだよねぇ」

 ケイトは嫌な思い出でもあるのは表情を曇らせる。

「ねぇねぇ、それってどんな思い出?」

 カレンは興味深々と言った表情で訊ねた。

 シルバは聞いてはまずいかと思いつつ、聞き耳を立てていた。

「シルバ君が聞いてるのに言えるわけないよぉ」

 なるほど、異性には聞かせられない話のようだ。

「自分、聞いてないですから大丈夫ですよ」

 とシルバはそっぽを向き告げる。しかし、

「聞いてるじゃない!」

 すかさずケイトは突っ込んだ。

 3人に笑いが起こる。

 周囲を警戒している護衛の兵士たちも、クスリと笑っていた。

 カレンは束の間の楽しいひと時を過ごしながら、リオル村を目指していた。


カレンエピソード、はじまります?

ていうか、このメンツで大丈夫か?

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