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はじまりの夢

なんとなく妄想を書いてみました。

妄想ですので過度の期待はご勘弁を。

 朽ち果てたとある城。

 城門は破られ、壁は崩れさり、城に隣接している湖は毒の沼地と化している。

 中庭には破壊された石碑、咲く花は枯れ果てている。

 城内のいたるところに兵士と魔物の石像が立っている。戦っているような情景をそのまま映すかのような、かなりリアルな石像である。

 城内には魔物が徘徊している。魔物の攻撃を掻い潜ってようやくたどり着いた謁見の間には、二つの玉座。一つには驚愕に歪んだ表情の王様の石像が直立ている。

そして、もう一つには艶やな漆黒の髪、闇のように吸いこまれそうな漆黒の瞳、朽ち果てた廃城には似つかわしくない美しい女性が妖艶に微笑み座している。

「フッ、クッ、うらぁっ……!?」

 女性の見守る中、二人の男は剣を振るう。

キィン、ギィィイン、キンッ

 剣戟が鳴り響く……

 一人は苦渋の表情を浮かべ

 一人は無感情に

 しかし、突如その戦いは終わりを迎える……

 一瞬の隙をつかれ、親友の振り下ろした剣によって


 俺の物語が終わろうとしていた。。。。





 夏の陽光の差し込む早朝

 窓からはそよそよと吹く風が頬をなでる

 穏やかな寝息の聞こえる六畳間に、静寂を切り裂く電子音が鳴り響く


ピピピピッピピピピッピピピピッ……


「ん~~うるさい」

バシッ

「……すー、すー」

ドタドタドタ、バンッ……ドスッ

「グフッ」

 ベッドの上で仁王立ちして怒声をなげかける。

「お兄ちゃん早く起きないと朝練送れるよ!」

「だからってエルボーはないだろ……」

 俺は腹を抑えて恨みがましい目で訴えた。

「また結衣(ゆい)ちゃんにしぼられても知らないからね!」

「結衣になら本望だ!」

「うわ~ドMだよ~」

 引かれてしまった。そんなしかめっ面で見るんじゃありません!

 ったく、この妹はもっと違う起こし方ができないもんかねぇ。

(お兄ちゃん早く起きないとチューしちゃうぞ。)とか……

 ん?なんかドン引きされてるんだがなんでだろ?

「そんなんだから、嫌われるんだよ」

 いきなりあずかり知らない情報を突き付けられた!

「え!? 俺嫌われてんの?」

「知らない。いいからさっさと準備して行く!」

「へ~い」

 こいつは妹の冬華(とうか)、生意気で決して可愛くはないからな。誰がなんと言おうとも!

 年下萌え~とか妹萌え~とか言ってるヤツ! そんなものは幻想だ! 萌えなんてどこにもない……

 てゆーか、俺、五十嵐空雄(いがらしあきお)は年上好きだから年下には萌えない。もちろん妹にも。

「萌えって……キモッ!?」

 いないと思っていた冬華が嫌悪感丸出しで言う。

「え!?」

 なぜ考えてることがわかった!? ってか汚物を見るような目で見られてしまった。

「なんでまだいんの?」

「二度寝しないように見張ってたの!」

「あっそ」

 冬華はそう言ってまだ部屋を出て行かない。なんか用なのかよ……

 朝から変な夢見るわ、エルボーくらうわ、ドン引きされるわで、今日の運勢最悪か? すっかり目が覚めちまった。とにかく早く準備して出よう。

「着替えるから出て行ってよ!」

 俺はオネェっぽく行ってみた。しかし冬華はそんなものはスルーして言う。

「おじいちゃんがたまには顔出せって言ってたよ」

「それを言うために残ってたのかよ……気が向いたらな~」

「向いたことないじゃん……」

「だったらおまえが行けばいいだろ」

「私は毎日行ってるもん」

「それならいいじゃん」

「お兄ちゃんが行かないと意味ないって言ってんの!」

 まったく小うるさい、小姑か!

「はいはい、じゃあいってきまーす」

「もう帰ってくんなーーー!」

 朝から騒がしいヤツだ……


 まさか、本当に帰ってこれなくなるなんて、この時の俺には思いもよらなかった……


 

「総司、急がないと朝練遅れちゃうよ!」

「ああ、わかってるよ」

 夏の暑い日、蝉しぐれの聞こえる中、二人は学校に向かっていた。

 男の名前は四ノ宮総司(しのみやそうし)17歳、剣道部の主将だ。隣を歩いているのは四ノ宮結衣(しのみやゆい)16歳ショートカットのよく似合うこの男の妹だ。

 総司は腕時計を見て呟く。

「少し急ぐか」

「おーーい!待ってくれーーー!」

 後ろから掛けられた聞き覚えのある声を聞き嫌な顔をする結衣。

「げ、早く行こ!」

 結衣は総司の腕をとり走り出そうとする。しかし一歩遅く先ほどの声の主が横に並び挨拶をする。

「お二人さん、おはよ。結衣ちゃん今日も可愛いね!」

「おう、アキおはよう」

「ちっ、はいはいおはよ(追い付かれちゃったよ)」

「なんか、舌打ちが聞こえたような?」

「そんなことないよ~、気のせいじゃない?……ちっ」

「だよね~」

 総司はいつも通りの二人のやり取りを見て溜息をつく。

『こいつは五十嵐空雄(いがらしあきお)17歳、俺の幼馴染であり親友で、同じ剣道部のエースだ、結衣の彼氏になってくれると安心なんだがなぁ』

「…………」

「アキ、勝手なナレーション入れるな! この腐れ縁男が! いや、腐れ男が! 誰が誰の親友でエースだって? 彼氏なんてもってのほかだ!! おまえなんぞに結衣はやらん!」

 総司はアキの勝手なナレーションに怒りを露わにする。

「そーよ、なんであたしがあんたと付き合わなくちゃいけないのよ! キモイんですけど!」

 結衣も同じく嫌悪感を露わにする。

 二人揃ってそこまで怒らなくても……俺は少し傷ついたぞ……

「ヒドッ!? キモイとかゆーなよ~、冗談だろ~」

「あたしたち兄妹水入らずの邪魔しないでよ! 行こ、総司」

 そう言うと、結衣は総司の手を引いて足早に行ってしまった。

「ほんとに置いてくか~?ったく」

 このブラコンシスコン兄妹め! 仲良すぎだろ! 将来が心配だよ! 二人を心配して言ってやってるのに、わからねぇかなぁ、俺の優しさが……俺みたいな友達持って喜んでもいいと思うんだが、どうだろう? てか、俺の扱いひどくね? ‥‥まさか! 冬華の言う通りホントに嫌われてるのか!?

 俺は若干落ち込みながら二人の背中を見ていると……二人の向かった先の方が揺らいだように見えた。

「……陽炎か?」

 今日はとくに暑いからなぁ。

 足を止めている間に二人は角を曲がって行ってしまった。

「やべっ、ほんとに置いてかれる」

 俺は二人を追って陽炎の中に入り角を曲がると二人の姿が見えなくなっていた。

 学校まであと少しではあるけれど、もう見えなくなるって……あれ? 陽炎の中に入るっておかしくないか? 陽炎って近づくと見えなくなるんじゃなかったか?

 そんなことを考えていると揺らぎがひどくなっていることに気付いた。

「うっぷ、気持ち悪い……世界がグルグル回る……」

 俺はふらつき壁に手を付き体を支える。


「……アキ‥‥そ……ダ‥‥」


 後ろから声が聞こえた気がしたが、俺は立っていられなくなり‥‥その場で崩れ落ち、俺は意識を失った。





グルルルルルゥ

ガウッグルル


 犬の唸り声が聞こえる……


 意識がハッキリしない…


 目が少し開いた……


 世界が横を向いてる……


 地面が冷たくて気持ちいぃ……


ズザザザザーーーーー


 足? ……人?


「……だい‥‥ぶ……」


 ……?何か言ってる……


 横を見上げた……


 ……白だ……純白!!

 俺は飛び起きた……

「へ? ‥‥ここどこ? 森?」


「大丈夫ですか? クッ‥‥お怪我は?」

 声のする方を見ると女性がデカイ犬と戦っていた……

「なに……これ?」

 女性は手に持っているナイフみたいな武器でデカイ犬の攻撃を受け止め、蹴りを入れた。

「あ、白だ……」

 俺は凝視してしまった……

「キャッ!?」

 俺の声に女性は足を閉じスカートの裾を抑えながら俺を見た。てゆーか睨まれた……

 いや、そのスカートの短さじゃ見えちゃうでしょうが。

 その隙をついて、デカい犬が女性に襲い掛かろうとしていた。

 女性は両手でスカートを抑えていたため対処が遅れた。

「あぶない!」

 俺はデカイ犬に体当たりをした。

「ぐっ!?」

(なんだこの犬硬すぎる……)

 肩を抑えて起き上がったと同時に犬の攻撃が直撃した。

 俺は吹っ飛び近くの木にしたたかに打ち付けられて再び気を失った……



 次に目覚めたとき、そこには知らない天井が広がっていた。



読んでくださってありがとうございます。

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