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兵士の心得

「光輝! 光輝!」

「うっ……」

 汐音の悲痛な呼びかけに鼓膜を刺激され光輝は目を覚ました。

「光輝! よかった、回復しても目を覚まさないから打ち所が悪かったのかと心配したんですよ!」

 光輝は、光輝を心配し涙目になっている汐音を目の当たりにし、バツが悪くなり夢を見ていたなどとは言えなくなってしまった。もちろん言うつもりはない。

「ああ、心配かけてすまない。大丈夫だ」

(それにしてもなんだったのだろう? あんな昔の夢を見るなんて。何かを暗示しているのか? そもそもあれは夢だったのか? あれは確かに昔にあった出来事だ。あそこまで鮮明に覚えていること自体驚きだが、なぜこのタイミングで? 今の状況と何か関係があるのか?)

 光輝が考え込んでいると、急に黙り込んでしまった為汐音が心配げに様子を窺ってくる。

「光輝? 大丈夫ですか? やはりどこか打ちましたか?」

 汐音は光輝が頭を打ち、その後遺症でボーッとしているのではないかと心配しているようだ。

「え? いや大丈夫だよ。それよりもドラゴンはどうなった?」

 光輝は汐音の心配をよそに、考え込むことを止め現状の確認をする。

 汐音は心配げな視線はそのままに現状の報告をする。

「光輝が気を失ってからシルフィさんが押さえてくれています。あのアーサーという男の子は力尽きた様でミュウさんの下に、現在シルフィさん一人で押さえていますのでそろそろ限界かもしれません」

 光輝は汐音の報告を聞き、風が吹きすさぶ門の方へ視線を向ける。

 ドラゴンは竜巻に囚われ動きを封じられていた。

 その竜巻の前にシルフィが光輝たちに背を向ける形で宙に浮き、竜巻が消えドラゴンが逃げ出さないように魔力を供給し続けていた。

 しかし、次第に竜巻の勢いが弱くなっていき、ドラゴンは竜巻を振り払おうともがきはじめる。

『くっ、はあぁぁぁぁっ!』

 シルフィは魔力を籠め竜巻を維持しようと試みる。

Gugya!?

 ドラゴンは再び体の自由を奪われるが、それも完全ではなかった。

 魔力不足のためか、ドラゴンがもがいたのが原因か、竜巻の座標が若干ずれ、ドラゴンの羽が竜巻から外れていた。

 正面に位置取っているシルフィはそれに気づいていないようだ。

 ドラゴンは羽を力の限り羽ばたかせ、その巨体を竜巻から引きずり出した。

『し、しまっ……』

 竜巻の牢獄から逃れたドラゴンは尻尾を振りまわすと、竜巻を斬り裂きその延長線上にいるシルフィをも打ち付けた。

『ぐっ、キャァァァァァッ!?』

 シルフィが結界内に吹き飛ばされると、進行を妨げるものがいなくなったドラゴンは結界に向け突進する。

ドゴッ

ピキッ

 そして、腕を振り上げ鋭い爪で斬り付ける。

ガガガガガガッ

パキキンッ

 ドラゴンの突進による体当たりと爪の一撃で、結界の亀裂が稲妻が走るように拡がる。そしてドラゴンはくるりと回転すると、渾身力を籠め尻尾を振りまわし打ちつけた。

ズドンッ

 結界に重い一撃が加えられると、亀裂がさらに拡がっていき、


バリンッ


 と、音を立てるように結界は砕け散り、結界は消滅した。

 ドラゴンはその勢いのまま、塀を破壊し、乗り越え、城下へと侵入していく。その先にはシルフィが横たわっており、このままいけば踏みつぶされてしまう。

「シルフィ様をお守りしろ———!」

「おぉぉぉぉぉぉっ!」

 シルフィを信奉する兵士たちがシルフィを囲うようにドラゴンに立ちはだかる。そしてドラゴンの進行を妨害するように槍を投擲し、矢を放ち、剣を振り上げ駆け出して行く。

『ダメよ! 下がりなさい!』

 いくらアキと冬華、身内以外の人間に興味がないとはいえ、さすがに自分を守ろうとする者を見殺しにはできなかった。ましてや、自分が助けた人間が再び負傷し、あまつさえ死ぬようなことにはなってもらいたくなかったのだ。何のために助けたのかわからなくなる。

 シルフィがいくら呼びかけても、兵士たちの勢いは止まらなかった。

 兵士たちはドラゴンの足を斬りつけていく。しかし硬い鱗に覆われた足には傷一つ負わすことは叶わず、振り上げられた足に蹴り飛ばされて行く。

「「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

『お願いだから下がって!』

 シルフィは声を張り上げる。

 その叫びに答えるように側にいた兵士が口を開いた。

「それはできません! 我々は兵士です。守られてばかりはいられません! シルフィ様が退避されるまで我々で押さえてみせます! おぉぉぉぉぉぉっ!」

 兵士は気勢を上げドラゴンへと特攻を仕掛けていく。

 兵士たちはドラゴンに蹴り飛ばされ、尻尾で薙ぎ払われようともその勢いが衰えることはなかった。

「シルフィさん! ここは一旦引きましょう!」

 駆け寄ってきたサラがシルフィの体を支え後退しようとする。

『しかし、このままでは彼らが!』

「彼らはこの国の兵士です! この国を守ることが、この国にいる人々を守ることが仕事なのです。たとえ相手がドラゴンだとしてもその使命は変わりません。だから少しでいいので彼らを信じてあげてください」

 サラは兵士のありようを解きシルフィを説得する。

 しかし、シルフィには信じることが難しかった。彼らがアキにした仕打ちを忘れてはいないからだ。それでも彼らを守ったのは、アキが彼らの身を案じてここを去ったからだ。アキが守ろうとしたものをシルフィが見殺しにできるはずがなかった。シルフィの行動はいつでもアキの為、冬華の為だ。二人が望むのであれば、人間であろうと助ける。だからと言って信じることは出来ない。信じてほしければアキに謝れ! である。

 しかし、悔しいがアキの選んだサラが言うのだ、不本意ではあるがここは言うことを聞き引くことにした。

『わかりました。後退しましょう』

「ありがとうございます」

 シルフィはサラの肩を借り後退していく。

 それに合わせ、兵士たちも後退をはじめる。

「よし、我々も後退するぞ! 負傷者を優先して後退させろ! 動ける者はドラゴンの注意を引きつけ攻撃を分散させろ!」

 アルマの声が響く。体が弱いのに、そんなに声を張り上げて大丈夫なのかと心配になる。

(折角アキが助けたというのに、大声を上げて倒れないでくださいよ)

 シルフィは内心でそんな心配をし頬を引き攣らせる。 

「おらおら! トカゲ野郎! 俺を狙ってみやがれ!」

 カルマの無駄にデカイ声が聞こえる。どうやら無事のようだ。

(あ、生きてましたね。さすがにしぶとい。これで冬華も安心でしょう)

 シルフィはホッとし胸を撫で下ろす。


 後退していくと、さら地が終わり、街並みが見えはじめる。

 さら地、今現在ドラゴンが暴れている場所は、以前操られた麻土香とアギトによって破壊された場所だった。これ以上後退すればさら地を拡拡げることになってしまう。それだけは避けなくはならない。

 アキに合わせる顔が無くなってしまう。

 シルフィはそう思い、サラを止めようと声を掛けようとすると、見慣れないものが目に入ってきた。

 それは町とさら地の境目に等間隔で並べられていた。

『あれは、まさかバリスタ?』

 シルフィは訊ねる。

 固定型の超大型のボウガンをイメージしてもらえればいいと思う。それが一方向に向けられ並べられていた。

「ばりすた? ですか? よくわかりませんがあれは大型強弓です。魔法が発展したため使う機会が減り倉庫に保管されていたのですが、ドラゴンが現れたと聞き引っ張り出してきたのです」

 確かに魔法が大して効かないドラゴンにはうってつけの武器である。最初からこれを使えばよかったのでは? とも思うが、倉庫に保管されていたというからには、メンテナンスはされていなかったのだろう。使えるのかも怪しいところだ。その確認をしていた為出番が遅くなったのだろう。

 退避が済むと、アルマがバリスタの指揮に入る。

 しんがりを務める兵士たちは一人を残し蜘蛛の子を散らすようにドラゴンから離れていく。

 その残った一人というのは言うまでもなくカルマだった。

「こっちだこっちだ! トカゲ野郎殺せるもんなら殺してみやがれ!」

 この無駄にデカイ声ですぐにわかる。

「カルマ!? あいつ何やってんのよ! 早く逃げなさいよ!」

 冬華の叫ぶ声が聞こえる。カルマには聞こえていないようだが、いや、そんな余裕がないだけだろう。

 カルマはその無駄にデカイ声を張り上げドラゴンの注意を引き、誘導していく。固定砲台であるバリスタの照準に入るように……

 そしてその時が迫る。

「撃ち方よ———い!」

 アルマがドラゴンの位置を確認し右手を上げ号令をかける。

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! まだカルマが残ってるでしょ!」

 冬華がカルマの身を心配し声を上げる。

 しかし、アルマは聞く耳を持たない。一人の命と大勢の命、天秤にかけるのであればどちらが重いかは一目瞭然である。第一カルマは兵士、民の為命を投げ出す覚悟はできているはずだ。

 アルマは表情を変えることなくドラゴンを見据える。

「待てって言ってるでしょ!」

 冬華は今にも暴れ出しそうな勢いだが、それを総司が押さえているようだ。

 そして、アルマは手を勢いよく振り下ろし命令を下した。

「放て!」

ヒュンヒュンヒュン…… 

 アルマの号令で巨大な矢が放たれて行く。矢は軽く放物線を描きドラゴンへと迫っていく。その範囲内にはカルマも入っていた。

 矢は容赦なくドラゴンとカルマへと降り注ぐ。

ガキンガキン、ザシュザシュッ

 矢は数本ドラゴンに弾き落とされたが、片羽と右腕に当てることができた。

Gyaaaaaaaa!

 ドラゴンは足を止め、痛みに絶叫を上げる。

 その大きな絶叫で大気が震えたためか、メンテ不足のたまものなのか、一本の矢が軌道を逸れカルマの方へと飛んで行く。

 カルマは気付いていないのか、ただひたすら真っ直ぐに走っている。

「カルマァァァァァァァァッ!?」

 冬華の悲鳴が響き渡る。

 矢がカルマに直撃する瞬間、カルマの頭上に風が渦巻く。

ガキンッ

 矢は風の障壁に弾かれた。

「「「 ハァ 」」」

 その場の全員が息を吐きホッと胸を撫で下ろしていた。

 冬華は腰を抜かしたのかペタンと座り込んでいる。

 アルマは平然とそれを見ていた。カルマが怪我を負うことなどないとはじめから知っていたような感じだ。

 よく見ると、アルマの脇に両手を前方にかざした風音が立っていた。カルマを守った風の障壁は風音が放った魔法だったようだ。

 あの二人はアキが救い出してからしばらく共同生活をしていた。それなりに仲良くなっていたはずだ。ならばアルマの指示であそこにいるのだろう。

 だとするならすべてアルマの策だと言うことだろう。

 兵士たちがドラゴンの足止めをし、全員を退避させる。そしてしんがりがドラゴンをおびき寄せ、カルマが最後の誘導をし、バリスタによる狙撃。万が一に備えカルマを守るための防御障壁を張れる風音を呼び寄せておいた。力を使い果たした結衣ではなく、まだ元気な風音を選ぶ当たり見る目がある。

 アルマ、カルマ、風音がしばらく姿を見せなかったのはこの計画を練るためだったのだ。

『なるほど、そういうことですか。さすがはその知力を買われただけはありますね、アルマ。それでこそアキが助けた甲斐があるというものです』

 シルフィは納得し、アルマを称賛した。身内以外を褒めるとは、ずいぶんと丸くなったと言える。いや、アルマはカルマの兄、そしてアキが救った男だ。すでに身内として見ているのかもしれない。名前を憶えていることがその証明ともいえる。そうでなければ褒めもしなければ貶しもしないだろう。

 この作戦はどこまでの人間が知っていたのだろうか?

 冬華を止めていたということは総司も知っていたのだろう。当然総司と共にいた結衣も、シルフィを説得したサラも知っていたのだろう。知らなかったのは先ほど息を吐きホッとした面々と冬華だけだったようだ。知っていたらカルマを心配し、それこそ反対し弱っている体を推してでも自分がやると言い出しかねない。知らせなかったのは正解だった。

 おっと、もう一人知らされていなかった者がいる。冬華の横で目を丸くしている麻土香も知らなかったようだ。

 そうこうしている間に第二射が放たれる。

「放て!」

 すでにカルマは範囲外に逃げている。何の遠慮もなく矢は放たれた。

 矢はドラゴンに向け降り注ぐ。

 ドラゴンは腕を振り回しその爪で矢を弾き落としていく。しかし、それにも限界が来る。

 矢がドラゴンを捕らえようとした時、


ゴォォォォォォォォォォ


 ドラゴンはファイアーブレスで矢を焼き払った。

 第二射を準備している間にドラゴンも対策を講じていたようだ。知能がなかなかに高い。

 そして兵士たちが第三射の準備をしていると、ドラゴンは一気に距離を詰めてくる。

 次は撃たせないつもりのようだ。

 その狙い通り、第三射が放たれる前にドラゴンはこちらに到達した。

 その間兵士たちが矢を放ち、魔法放ってはいたが焼け石に水、ドラゴンには効かずなんの障害もないように一直線に突き進んできた。

 ドラゴンは羽を、腕を貫いた恨みを晴らすように、バリスタを踏みつぶし、蹂躙していく。

「うわぁぁぁぁっ!」

 風音が少しでも助けようと風の障壁を張り防御する。

 ドラゴンは風音の障壁に弾かれ、それを破壊しようと尻尾を振り回し打ちつけていく。

ズガンッズガンッズガンッ

 衝撃が伝わるたびに障壁は小さく、薄くなっていく。

「みんな、早く逃げて……」

 風音が振り絞るように声を漏らす。

 そして、ついに風音の魔力が尽き、障壁が霧散する。

「くっ!?」

Gyaaaaaaaa!

 ドラゴンの咆哮と共に尻尾が振りまわされ、風音は薙ぎ払われる。

「風音っ!」

 戦場の混乱で風音の側に駆け寄れない麻土香が悲痛な声を上げる。

 風音が吹き飛ばされる瞬間、カルマが飛び込み、側にいるアルマを突き飛ばし、風音を庇うように抱き込む。

ズガンッ

「グハッ!?」

 カルマは風音を抱きかかえたまま背中に直撃を受け吹き飛ばされた。

 ドラゴンは地面を転がるカルマと風音を目を細めてみると、自分を誘導した奴だと認識し、蹂躙を邪魔した風音諸共踏みつぶそうとズシンズシンと近づいて行く。

「風音っ!?」

「カルマッ!?」

 麻土香と冬華の声が上がる。

 しかし、兵士が行き交い近づくことができない。

「風音! カルマ!」

 そこへ光輝と汐音が駆け寄る。

 汐音は横たわる二人の容態を確認する。

「風音君! カルマ! 大丈夫ですか?」

 風音に回しているカルマの腕をほどくと、風音がヨロヨロと体を起こす。

「う、うん。俺は平気。でもカルマにいちゃんが」

 風音は心配そうにカルマを見る。

 汐音はカルマの容態を見る。背中に直撃を受けていた為、背中を真っ先に確認した。

 汐音は目を見開き焦るように回復魔法を掛ける。

「汐音! 早くここを離れろ!」

 光輝がなかなかここを離れようとしない汐音に声を上げる。

「ダメです! 今動かせばカルマは二度と歩けなくなるかもしれません! ここで治療しなくては!」

「しかし、このままだと踏みつぶされて全員死ぬことになるぞ!」

 決断を迫られる汐音は目をキュッと瞑る。

 医者となるのならいつかは通る道、生かすために歩くことを諦めてもらうか、死なせるかもしれない治療を続けるか。この場合、治療をし続ければドラゴンに踏みつぶされ死が待つだけだったが。

 汐音は選ぶことができなかった。決断できない自分の不甲斐なさに涙を流し治療を続けている。

「くっ!?」

 光輝はほぼ丸腰のまま飛び出して来ていた。カルマたちを抱えてこの場を逃げるつもりでいた為、武器を気にする余裕がなかったのだ。自分が相手をして時間を稼ぐしかないが、攻撃用の魔法は持ち合わせていない。武器がないわけではない、しかしドラゴン相手に通用するとは限らない。

 光輝もまた選ぶことができなかった。

 ドラゴンは目の前まで迫っていた。

 そこへ突然目の前に風が吹き込むと、シルフィが姿を現した。

『私が何とか時間を稼ぎます。その隙に!』

「はい!」

 背後から返事が聞こえた。

 見るとサラが汐音と共にカルマへ回復魔法を掛けていた。二人掛かりなら回復の時間も短縮できる。しかし、それでも魔力が残り少ないシルフィ一人でどこまで稼げるかわからない。

「僕も手伝う!」

 光輝はシルフィの隣に立ちそう告げる。

『ダメです! あなたはヤツを倒す切り札なのですよ! 私に付き合って死ぬつもりですか!』

 光輝は言葉を失う。シルフィは死を覚悟して時間を稼ぐと言っているのだ。そんな事させられるはずがない。

「シルフィを死なせるわけにはいかない! アキに合わせる顔がなくなるだろう!」

『何を勘違いしているのですか? 私は精霊ですよ? 力を使いはたし、またしばらく休むだけです。しかし、あなたは死んでしまったらおしまいなのです。あなたの代わりはいないのですよ! そのことはあなたが一番わかっているはずでしょう!』

「ぐっ!?」

 光輝は返す言葉を探す。現状シルフィの提案が一番理に適っている。しかし、感情がそれを納得できないでいたのだ。

 どうすることもできない光輝は下唇を噛みしめる。

『わかったら下がっていてください』

 シルフィは柔らかな声音でそう告げるとドラゴンを見据えた。

 すでにドラゴンは目の前で足を振り上げていた。

 そして、シルフィを、この場の全員を踏みつぶさんと足を振りおろした。

『はぁぁぁぁぁっ!』

 シルフィは残りの魔力すべてを吐き出すように風を巻き上げていく。

ガツッ

 風の障壁はドラゴンの足を受けとめ、押し返していく。

Grururuuuuu

 ドラゴンは体重を乗せ押し潰していく。

『ぐっくっ……』

 シルフィの顔が苦痛に歪む。

「シルフィ!」

 風音が心配そうに声を上げる。

『風音、子供が、年上を呼び捨てなんて、感心しませんよ……』

 シルフィは苦し気に言う。もう限界が近いようだ。手足が震え風の障壁も弱々しくなってきている。

Gyaaaaaaaa!

 ドラゴンが咆哮を上げ一気に踏みつぶそうとする。

 シルフィは目を見開き、全魔力を放出しようとする。

 その時、


クエェェェェェェェェェ……


 奇妙な鳴き声が響き渡った。

 そして、


ドガンッ


 重く重低音の音が鳴り響くとドラゴンはよろめき一歩後退する。

 そして、一人の男が降り立った。

 血や泥で汚れたローブに身を包んだ灰色の髪の男がドラゴンを睨みつけ声を上げる。

「クソトカゲが! 俺の仲間踏みつぶそうとしやがって……今度こそ息の根を止めてやる!」

 瞳に憤怒の炎を宿したアキが立っていた。


カルマ無事生きてました。が、また負傷……

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