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はじめての旅立ち

「ん~~~、いい天気」

 出発には申し分ない天気だ。そう言えばこっちに来てから天気が崩れたことないんだけど、雨とか降るのかな?そりゃ降るよな、川が流れてるくらいだし。まさか地中から吹き出てるわけでもないんだろうし。

 そんなどうでもいいことを考えていると後ろからばあちゃんに声を掛けられた。

「気持ちは変わらんのだな」

「うん」

「そうか、ならばもうなにも言うまい」

「アキさん、これを」

 サラさんがローブを着せてくれた。まるで新婚さんの「はい、あなた」みたいだなぁ。なんだかくすぐったい。

「ありがとう」

「このローブには魔法耐性が掛けられていますので、敵の魔法を多少防ぐことができます。ですが強力な魔法には効果がないので、くれぐれも油断はしないでください」

「うん、気を付けます」

 ちなみに今の俺のスタイルはというと、こっちの世界の服に着替えている。さすがに制服の上から胸当てとか着けられないし。制服は部屋に置いてきた。しばらく着ないだろうしね。

 防具はオール皮製の胸当てに脛当て、アームカバー、そして今着せてもらったローブで、初心者冒険者スタイルに包まれている。

 あとは最小限の荷物を入れるためのウエストポーチを着けている。全部サラさんが準備してくれたものだ。ホント優しいよね。当然だけどネックレスは標準装備!

 最後に手に持っていた剣を腰に差す……あっ

「ばあちゃん、指輪返すの忘れてた」

「よい、少しでも回復手段はあった方がよいじゃろう。戻った時にでも返してくれればそれでよい」

「そっか、じゃ借りとく」

 俺ははずそうとしていた指輪をはめなおす。

「ワシらは明日ここを発ちローズブルグ城に戻る。じゃから二人を見つけたら城まで戻るのじゃぞ」

「お城の位置は地図に記してありますから、必ず戻って来てくださいね」

 そういうとサラさんは地図を渡してくれた。

「うん、必ず」

 俺は返事をすると地図をウエストポーチにしまう。

「わたし待ってますから、ずっと待ってますから」

 サラさんは懇願するように言う。

「大丈夫だよ、お守りもあるから」

 俺はネックレスを見せて微笑む。

「死ぬでないぞ」

 ばあちゃん心配してくれるのはいいんだけど、言い方が直球過ぎる。

「うん。……それじゃあ、行ってきま~す」

 学校に行くようなノリで歩き出す……



 サラはアキの後ろ姿を見送る。目に焼き付ける。

 次にいつ会えるかわからない……本当は一緒について行きたかったのに……

 サラは喪失感で胸が苦しくなる。

「アキさん……」

 そんなサラを見てマーサが一つため息を漏らすと口を開いた。

「サラ、ワシは男が苦手なおぬしのためにアキに仲良くしてやってくれと言っておったのじゃが……まさか本気で惚れておるのか?」

 俯いて何も言わないサラにマーサは続ける。

「アキは異世界人、いつか還ってしまうかもしれない。じゃからお互い本気にはならないと思っておったのじゃ。あやつは意外と真面目なところがあるしの」

 サラはうつむいたままとつとつと話し始める。 

「わからないんです。でも一緒にいるとドキドキして、ずっと側にいたいって思ってしまう。お母さんに言われたことが切っ掛けで意識し始めたのかもしれないけれど」

「マリアに?」

 サラは思いつめたような表情になる。

「だからこそ側にいなくちゃいけなかったのに、離れちゃいけなかったのに……」

(このままだと本当に予見も予知夢も当たってしまう)

 サラはアキの言葉を思い出す……


『 未来は自分の行動次第で変えることができる 』


「必ず戻ってきてください、アキさん……」

 サラはアキの姿を思い浮かべ呟いた。



 俺はサラさんに教えてもらった道を通り森を抜けようとしている。

 ヤバッ、ちょっと緊張してきた。これはじめての一人旅じゃね? こっちと向こう両方の世界合わせて……はじめてはもっと安全で楽しいものにしたかったのにこんなデンジャラスなことになるなんて思いもしなかったな。

 飛び出してくるのは車じゃなくて魔物、金を狙ってくるのはヤンキーじゃなくて盗賊……どっちも危険だった。安全な世界ってなかったんだ!? 

 そう思うと心細くなってくる。しかーし、俺にはこれがある! パラララッララー、ス〇ホ! ……なんか語呂が悪いな。まあいい。これだよ、写真! んふふ~こっそり撮ってしまった。サラさんの寝顔写真! (俺とツーショット)バレたら盗撮で捕まりそうだけど。イヤ、頼めば普通に撮らせてもらえたかもしれないけれど、ほら、俺チキンじゃん? 無理じゃん? というわけで仕方なかったんや~。と・に・か・く、これさえあれば俺は頑張れる!


 おっと、そうこう言ってる間に森を出たぞ。

「へぇ~、結構広い道だな」

 川に沿って続いてるな、堤防も兼ねてるのかな? 土手になってるし。人通りは……

「人いねぇじゃん」

 魔物が出るんだし、そりゃそうそういないか。日本と一緒にしちゃいかんな、うん。たしかこの道を北だったな……

 なんか朝から土手歩いてると登校してる気分になるな……登校か、あの時さっさと追いかけておけば……後悔してもはじまんないか。

「……ん?」

 この川、俺が修行してた川よりも大きいんだけど、なにあれ? 魚? デカくね?

 俺は無意識に身を屈めていた。

「プッ……うっそだろ……ぎょ、魚人だ」

 デカイ魚に小さい手足が生えてる……あんなシルエットの魚人なんてあり?

「ぷっははっはははは……あ!?」

 俺は声に出して笑てしまった……ちなみにあの魚人顔も微妙に人間寄りで「あん?」って顔してこっち見てる~~~

「あははははっはははは、ヒィッ、死にそう……」

(異世界で笑い死にする~!)

 そんな俺の態度が気に入らないのか魚人がこっちに向かって走ってくる。ビチビチッビチビチッっと尾ヒレをフリフリ、顔を左右にフリフリしながら……

「もうダメ……息できっない、ははっはは……」

 魚人は口から水の塊を飛ばしてきた。

「うおっ!? あぶねぇ」

 水の塊が足元に着弾した。

 えっと、確かこの魚人は口から水の弾丸をぶっ放してくるんだっけか? あと尾ヒレの一撃が強烈だったか。

 俺はばあちゃんに見せてもらった書物に書いてあった内容を思い出す。あの書物は文字だけだったからな。写真付きとかじゃないから……こんなだとはプフッ、もっと厳ついの想像してたよ。

「さて、どーしよ……」

 こんなおもしろいの倒すのもったいないような……むしろ飼いたい。あくまでもこの世界でだけど、最後まで面倒できないから仕方ないか。ま、俺がどう思おうと魔物だしこれ以上成長されても困るだけ……倒すか。

 俺がそう決断する間に魚人は狙いを修正して水の弾丸を飛ばしてくる。

 俺はそれを横にズレてかわすと土手を下り魚人の側面、少し離れたところに移動して石を拾う。

 さすが魚、側面は的がデカイ!

ビュッ!

 俺は投石すると魚人の胴体を貫通した。(もちろん魔力を籠めてたからだよ)が、まだビチビチ動いてる。心臓狙わないとダメ? ……魚の心臓ってどこ? 俺は魚の知識がないことに気付く。

「ヤバイ……イヤだけど仕方ないか」

 考えてる間に魚人がこちらに向き直って、水の弾丸を飛ばす。

 俺は石を二つ拾い投げる。

ビュ、ビュッ!

 一つが水の弾丸に当たり弾けた!(まぐれ当たりラッキー!)そしてもう一つは魚人の顔に当たりめり込む、ヘッドショットを決めた。

 魚人をたおした。

「うわ~……」

 微妙に人寄りの顔だから……なんかグロイ。

 俺は魚人のヒレや尾ヒレが売れるらしいことを思い出した。とりあえず、戦利品ゲットしとくか。軍資金はいくらあってもいいからなぁ。

『魚人のヒレを手に入れた、魚人に尾ヒレを手に入れた』

 とはならない。手作業での採取……地味な作業だ……ハァ

 ゲームのようにはいかないか。あ、でも最近のゲームは回収作業しないと取れなかったりするのもあるか。クリエイターさんのリアルへの追及、頭が下がるよ。面白いゲームをいつもありがとー。

 っと、回収終わり~。

「じゃ、北上しますか」

 俺はふと疑問が浮かぶ。

(魚人の身って食えるのかなぁ? 顔見てるからちょっとあれだけど……)



 徒歩で一日、長いな……まだ昼だよ。ちなみにこの一日っていうのは日の出ている間を意味する。一般的に日が沈んだら仕事は終わりだからだそうだ。

 つーかこのペースで大丈夫なのか? 距離で聞いとくべきだった。地図も手書きっぽいから縮尺もわかんないし……ひたすら歩き続けるしかないか。

 それよりも腹減ったなぁ。やっぱり魚人の身取っとくべきだった?

 と考えていると後ろから猛ダッシュしてくる人影が見えた。

 そしてその後ろに魚人。噂をすればだ。例の如くビチビチ走っている。

 ん? さっきのより速い。手足が長いぞ! まぁ、それでも笑えるんだけど……

「ププッ!」

「ハァハァ、笑ってないで助けてよ!」

 怒られてしまった。そりゃそうか、必死に逃げてるのに笑ってるんだもんな。

「はいはい」

 俺はまたまた石を拾って投石の構えをとり声を上げる。

「横に避けろ!」

「!?」

 走る人物が横に飛び退くのと同時に魚人の顔面めがけて投石すると、魚人はジャンプして回転、尾ヒレで打ち返しやがった!?

「マジか!?」

 俺は目を見張り打ち返されてバラバラになった石をジャンプで避ける。魚人はそこを狙って水の弾丸を飛ばしてきた。

「くっ!」

 咄嗟に剣を抜いて弾丸を切り裂く。

「こいつ!?」

 俺の着地と同時にまた弾丸が飛んでくるがサイドステップで避け、魚人に一気に距離を詰めて胴を打ち込むように切り裂いた。


「ふぅ」

 俺は魚人の思わぬ反撃でかいた冷や汗を拭うと魚人を見下ろす。 

 こいつ手足が長いと思ったら見た目も結構ごつくシャープになってるな。知能もついてたし……成長するとマジでやばいんじゃない? でも最終形態見てみたいって思うのは俺だけ? ちなみにこいつの名前はフィッシャーマン、だったか? 生意気にもなかなかカッコイイ名前だ。きっと最終形態がカッコイイに違いない!

「終わった?」

「ん?」

 俺が魚人について思いにふっけていると横に飛び退いた人がフードをとって声を掛けてきた。土手を転げ落ちてたみたいだけど怪我とかしてないかな?

「ふ~~~助かった~なんか手こずってたみたいだけど」

「ぐ、余計な一言を……このちびっ子が」

 余計な一言がなければかわいい子なのに……


 そう、逃げていたのは女の子だった。おさげ髪の女の子だった。


なんだかやっと話が進み出したような・・・気のせい?

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