訓練開始その2
【学園戦艦:第三訓練場・市街地エリア】
カグラの相手を、アスカに任せた俺とシズカは、市街地エリアまで進みマヤの通信を待っていた。
「マヤちゃん....無事かしら」
「.....」
ザザー....。
無線機から音が聞こえてくる。
「!」
「マヤ、大丈夫か?」
「....ごめんなさい、少し邪魔が入った...私がいない間に何かあった?」
いつも通りのマヤの声が聞こえてくる。
「ああ、こっちは大丈夫だ、それよりもケガはないか?マヤ」
「....うん、大丈夫....敵の索敵狙撃兵は倒した」
「良かった」
シズカがほっと胸を撫で下ろす。
(それにしてもサクヤ....かわいそうに)
サクヤが受けたであろう、お仕置きのことを考えると、思わず涙が出てきそうになる。
「そうか、ならいい...早速で悪いがカズヤ達の居所はわかるか?」
「.....少し待ってて」
「了解」
...おそらく、カズヤ達はどこかに隠れているのだろう。
学園一位の索敵狙撃兵であるマヤの索敵を逃れるのは、どんなに訓練された兵士でも不可能だ。
「....待ち伏せ(アンブッシュ)か?らしくないな」
つい口に出して言ってしまう。
「どうかしたの?ハルトくん」
不思議そうにシズカが聞いてくる。
「いや....カズヤの性格からするとだな....」
ザザー...。
「ッ...二人とも伏せて!!」
緊張したマヤの声が無線機から聞こえてきた。
「....っ!!」
マヤの切羽詰った声を聞くと同時に、地面に伏せる。
瞬間。
ドドドドドドドッ!
鋼鉄の弾丸が頭の上を通過していく。
「この銃声はSCAR-H...カズヤか!」
銃声に負けないよう大声で叫ぶ。
「大正解だ!ハルト!」
どこに居るのか判らないが、カズヤが答えた。
ドドドドドドドドッ!
相変わらず銃声は鳴り止まない。
「くっ!シズカ無事か!」
「ええっ!こっちは大丈夫....きゃあっ!」
ダダダダダダダッ!
明らかに、カズヤの使っているSCAR-Hとは違う銃声が鳴り響く。
「シズカっ!」
この銃声は...SMG....レイカか!
「フフフッ!君の相手はこちらだよ、シズカくん!」
俺がそう気づいた時には既に、獲物を見つけた獅子のように、レイカがシズカに向かっていた。
「ちょっ!レイカさん、お互いのリーダーをサポートするのが私たちの役目で...」
シズカが必死に役割について説明しようとするが...。
「そんなことは....関係ないよ!」
ダダダダダダッ!
ものすごい速さで弾丸が飛んでくる...どうやら話を聞く気は無いようだ....。
「くっ...このままじゃ挟み撃ちだな.....シズカ、頼めるか?」
シズカの顔を見る。
「こうなったら仕方ないわね....うんいいわよ、ハルトくん!」
少し困った顔をしていた鈴鹿だが、笑顔で答えてくれた。
カチャッ!
シズカがP90(ピーキュウジュウ)を構える。
「レイカさん、私が相手になるわ!」
「フフッ!それでこそ雨音シズカだ!」
嬉しそうにレイカが笑っている。
その笑みを無視して、シズカが俺の方を振り向く。
「こっちは任せて、ハルトくんはカズヤくんを!」
(...いつになく頼もしいな)
そう思うと、自然と口から言葉が出てきた。
「わかった.....シズカ、この戦いが終わったら言いたいことがある」
真剣な顔でシズカの顔を見つめる。
「....ハルトくん、それって...」
フッ...。
ふふっ...。
二人で笑い合う。
「お二人さん....そろそろいいかな?」
銃口をこちらに向けたカズヤが聞いてくる。
「ああ悪かったな....行くぞ、カズヤ!」
「来い!ハルト!」
ガチャッ!
お互いに銃を向ける。
「行きますよ!レイカさん!」
「ああ、いつでもいいよ...シズカくん!」
カチャッ!
四人の銃口が、それぞれの獲物を捉える。
ドドドドドドッ!
ダダダダダダダダッ!
訓練場に銃声が響き渡った。