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終わりと始まり

【学園戦艦:校長室】

「なるほどね…それが今回の任務の内容か…..」

目を閉じ何かを考えているアズサ校長。

あの後、迎えに来た輸送ヘリで無事に学園戦艦へ帰投した俺たちを待っていたのは….。

賞賛の拍手ではなく..….校長室への呼び出しだった。

「……..」

俺とカズヤは疲れきった体にムチをいれ、アズサ校長に任務の報告をしたところだ。

….正直言って話すことさえ辛い。

「話を聞く限り….随分大変だったみたいだね~」

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか….一人で喋り続けているアズサ校長。

「いやでも…よく生きて帰ってきたね~!えらいえらい!」

「…….校長先生」

カズヤが口を開いた。

「ん?何かな」

「……そろそろ俺たちを呼んだ本当の理由を教えてもらってもいいですか?」

「…….」

無言になるアズサ校長。

……本当の理由?…..そんなものあるのか?

俺がそんなことを思っていると。

「…..フフフ…そうだね君たち二人には…..聞く権利があるよね」

笑みを浮かべながら俺たち二人交互に見る。

「….そして私には….話す義務がある。」

「…….」

「いいよ…..今回の任務について知っている事を話そう…..ただし!」

少しの間をアズサ校長。

……何か言いづらいことなのか?…..まさか!最重要クラスの機密….。

「話しても怒らないって….約束してね」

「……..」

「…..分かりました」

カズヤの返事に安心したのか….アズサ校長は話し始めた。


今回の任務自体がカノン博士という人物による壮大な実験だったこと。

ナナは生き返ったのではなく“新型のdead personウィルス”により強制的に戦わされていたこと。

そして…新型のウィルスは、アズサ校長自身が昔に作り出したものであるという事こと。

「なるほど….そういうことだったんですか」

頷いているカズヤ。

「……そういえばこの学園の七不思議に、なぜ私がこんなにも若く美しのか?っていうのがあったね」

…….恥ずかしがることなく自分のことを美しいと言っているよ。

「良かったじゃないか!…..学園七不思議の一つ….その真相を知ることが出来て」

「ええ….良かったですよ…本当に」

….これで一つはっきりしたな。

今までアズサ校長は人間じゃないと思っていたが…….本当に化物だった。

「ん~….何か今…失礼なことを言われた気がしたな」

「…….」

アズサ校長と目が合ってしまった。

「ハルトく~ん?……..また成績いじっちゃおうかな」

「すいませんでした!アズサ校長…….今“また”って言いました?“また”って!」

「……」

「なぜ無言…..まさか!」

「ハルト….ちょっと黙ってろ」

カズヤが額に手を当てながら言った。

「そうだよ….うるさいぞ~ハルトくん?」

「ぐっ…..元はといえば、あなたが…..」

「…....ハルト」

….ここは我慢して黙ろう…..カズヤの目が怖い。

「校長先生の話を聞いて今回の任務の全容を知ることができました」

真面目な顔に戻りアズサ校長にそう言うカズヤ。

「ですがアズサ校長……俺たち二人を呼んだ理由は、まだ話していないですよね?」

「?」

…..そうなのか?….俺はてっきり任務の全容を聞かされて終わりだと思ったが。

「流石はカズヤくん….ハルトくんとは違うな~」

「…..どうせ俺は…カズヤみたいに思慮深くはないですよ」

「まぁ、そう落ち込まないで……」

….落ち込むようなこと言った張本人が何を…..。

「さて、君たちを読んだ理由はね」

真面目な顔になるアズサ校長。

「……ナナくんの遺体のことについてなんだ」

「!」

「……彼女の遺体ですか」

「そう…..ナナくんの遺体は、君たちを迎えに行ったのとは違うヘリで学園に運んでくる…..予定だったんだけどね」

困った顔になるアズサ校長。

「…何かあったんですか?」

カズヤが質問する。

「それがさ…….ナナくんの遺体がね…..」

「…….」


「…….何処かに行っちゃんだよね」

「…..ハァー!?」

俺とカズヤ….二人して思わず声を上げてしまう。

「うん….そういう反応するよね…..わかってた」

「失礼しました…..一体どういうことですか?」

冷静さを取り戻したのか、カズヤが聞く。

「正確にはね…..学園に向かっていたヘリの信号が消えたんだよ….海の上で」

「…..消えた?」

「そう….詳しいことは明日にでも捜索隊を出して調べようと思ってるんだよね」

……この話の流れは…まさか。

「アズサ校長…まさかとは思いますが…..」

カズヤが恐る恐る聞く。

「….その捜査隊に俺たちも参加しろと?」

「…….」

無言で俺たちを見つめるアズサ校長。

「…..アズサ校長?」

「…….プッ」

突然吹き出すアズサ校長。

「アハハハハッ!…..ごめんね….君たちのそんな顔を見てたらつい….ハハハ」

「…….」

「そんな目で見つめられたら….勘違いしちゃうぞ?」

…..人を不安にさせておいて…この人は。

「….それでは何のために、俺たちを呼んだんですか?」

呆れた顔でアズサ校長を見るカズヤ。

「君たちを呼んだ理由….それはね……」

「!」

「….というわけだから、頑張ってね~」

笑顔で俺たちに手を振っているアズサ校長。

「…それでは失礼します」

「失礼します」

俺とカズヤは校長室を後にする。


誰も居なくなった校長室。

「フフフ……また楽しくなりそうだ」

小さな声でそう呟くアズサ校長。

その顔には……満面の笑みが張り付いていた。


【学園戦艦:屋上】

「まったく…….最後にとんでもないことを頼んできたな…あの校長は」

忌々しそうに呟くカズヤ。

「ああ….そうだな」

俺とカズヤは今、アズサ校長からの頼み事を自分のチームメイトに伝えるため屋上で待機していた。

「それにしても遅いな….連絡してから30分は過ぎてるぞ」

「ああ……そうだな」

腕時計を見ながら話すカズヤに返事を返す。

「…….さっきからどうしたよ、ハルト?」

「ん……何が?」

「何がってお前…..さっきから心ここにあらずって感じだぜ」

….そうだったか?…..自分では気づかなかったな。

「ああ…….実はな…..」

バタンッ!

屋上入口の扉が蹴り開けられた。

「到着!私が一番!」

「くっそ…またアスカに負けた….でも二番!」

息を切らせながらアスカとカグラが入ってきた。

「…私が三番だね」

「もうみんな!廊下は走っちゃダメでしょ!」

続いてレイカとシズカも入ってくる。

「わっ私が5番で…….うぎゅっ..」

「…….私が5番….最下位はサクヤ」

「うぅ~…..」

先に入ろうとしていたサクヤを押しのけてマヤも入ってくる。

「お前たち…..随分と賑やかだな」

呆れた顔でカズヤが言う。

「フフッすまないな…...実はさっきまで、任務達成を祝って皆でパーティーをしていたのだ」

レイカが嬉しそうな笑みを浮かべながらそんなことを言っている。

「パーティーってお前ら…..俺たちが校長室に呼び出されている間にそんな面白そうなことを….」

思わず呟いてしまう。

「だって….ハルトのことだからどうせ遅くなると思ってさ…..先に始めてたんだよ」

「そうそう」

全く悪いと思っていない様子のアスカとカグラ。

..この二人に関しては放っておこう……文句を言うと殴られるかもしれない。

「はわわ….わっ私はハルトさんたちが来てから始めたほうがいいって言ったんですけど….お姉ちゃんが」

「……余計なことは言わなくていい」

トスッ。

「うぎゅっ….」

実の妹に手刀を食らわすマヤ。

…..何度言ってきたか分からないが…….妹に厳しいなマヤ。

「それでハルトくん……緊急集合ってことで集まったけど…何かあったの?」

「…….」

シズカを含め全員の視線が俺に向けられる。

…..こういう雰囲気は苦手なんだけどなぁ。

そう思いつつ話し始める。


「…..アズサ校長から特別任務の依頼がある」


「!」

俺とカズヤを除いて全員が驚いた顔になる。

「………特別任務」

「って…..また~!?」

マヤが呟きカグラが叫ぶ。

「ああ…..残念ながら“また”俺たち全員で行ってこい…..だそうだ」

カズヤが言う。

「随分と急な話だね….帰ってきてすぐに出撃とは…」

「だがこれは….依頼であって指令じゃないからな…別に行かなくてもいいだぞ?」

「….私を挑発しているのかい?カズヤ?」

カズヤとレイカが何やら話している。

「………」

「ハルトくん?」

俺の方に視線を向けるシズカ。

「….….俺は今回の任務…..受けなくてもいいと思ってるんだ」

「ハルト…..」

俺の気持ちを察したのかアスカガ近づいてくる。

「ていっ!」

ドスッ!

「うぐっ…..」

そして….俺の腹部に拳を入れるアスカ。

「アスカ…..一体何を?」

俺の問うような視線にアスカは…。

「何を?…..それはこっちのセリフだよハルト」

「?」

….アスカの言っていることが分からない。

「ハルトくん….私ね」

シズカが呟く。

「ここにいる皆なら….出来ないことなんて無いと思うの」

「…..シズカ」

「だからねハルトくん…....私たちを信じて」

笑顔のシズカ。

「…….そうだな….忘れていたよ」

ガシッ。

「ちょっと…ハルトくん!?」

シズカの肩を掴み、カズヤたちの方を向く。

「俺たちは….最高のチームだってことをさ!」

意気揚々と言い放つ。

….そんな俺を待っていたのは。

「……ハルト….恥ずかしい」

….ん?

冷たいマヤの視線。

「ハルトお前…..よく恥ずかしがらずにそんな事が言えるな」

からかうようなカズヤの視線。

「….プッ…アハハハ」

「……ッ……フフフ」

笑いを堪えきれずに吹き出すアスカとカグラ。

「フム.....なかなか良いことを言うじゃないか?ハルト」

「レッ…レイカさん…今のハルトさんにそれを言っても…逆効果ですよ?」

なぜか感心している様子のレイカと不安そうな顔をしているサクヤ。

….なんだよ….人がせっかくやる気を出したというのに..こいつらは。

「ハルトくん….」

シズカが俺に何かを言おうとしている。

「……なんだよ」

「フフフ….」

笑い出すシズカ。

「なっ…シズカまで笑うのかよ….」

….流石に傷つくな

「ううんそうじゃないの…ただ」

「….ただ?」

真っ直ぐに俺を見つめるシズカ。

「…...私は何か悩んでいる時のハルトくんよりも….」


「….っ…今のハルトくんの方が好きだよ!」


「なっ…!」

「…っ…..!」

それだけ言うとレイカの後ろへ隠れるシズカ。

「….なんだよ…シズカのやつ」

「……」

….好きと言われたのは素直に嬉しいが….場所が悪い。

「……」

…….レイカの視線に殺気を感じる

「ごちそうさま…ハルト」

……なぜかカズヤの視線にもレイカ以上の殺気を感じる。

「お前ら…いい加減にしろ」

「….あとでコロス」

二人がそう呟く声が聞こえた。

バララララッ…。

俺たちを迎えに来たヘリの音がする。

「任務を了承した覚えは無いんだけどな….行くか?ハルト」

カズヤが呟く。

「……」

全員の視線が俺に集まる。

「行くか?じゃないだろ…..全員覚悟はできたか?…..行くぞ!」

「了解!」

俺の合図で全員が敬礼をする。


…そう….俺たちはこれからも戦い続ける。

….人類の奪われた陸地と….失った誇りを取り戻すために。


「さぁ行こう…..俺たちの戦いはこれからだ!」


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