一人目の仲間
【学園戦艦:二年四組】
キーンコーンカーンコーン。
授業終了を告げるチャイムが鳴る。
「よし、今日の授業はここまでだ!それぞれ予習しておくように!」
(....ああ、やっと退屈な授業が終わった)
部活に行く者、帰宅する者、人の動きで教室中が賑やかになる。
その中で俺は窓の外を見て思う。
「雲一つない青空、光り輝く太陽こんな日は....家で一日寝ていたいな」
(....そんなことができたらいいのにな(
多分無理だろう....なぜならそろそろ“彼女”が来る頃だからだ。
「ハルトくん!」
...ほら来た。
「やぁ....“シズカ”」
雨音シズカ....俺の幼馴染の名前だ。
腰まで伸びた茶褐色の髪が特徴でチームの援護補佐兵。
容姿端麗で成績優秀、非の打ち所がない自慢の幼馴染である。
....ちなみに胸は大。
使用武器は 旧FN社製のP90というPDW(個人防衛火器)。
通常のSMGは拳銃弾を使用するが、専用火薬を使うことで弾丸が体内を貫通せず、周辺の組織を大きく破壊するために、対“dead”戦闘時において高い攻撃力を持つ武器である。
使用弾薬は5.7x28mmの汎用小口径高速弾。
「....でね、今日は主に近接戦闘の訓練を....ハルトくん聞いてる?」
しっかりと話を聞いているか不審に思ったのか、腰に手を当てた格好で俺を見つめるシズカ。
「ああ、悪い全然聞いてなかった」
「もう....しっかりしてよねっ!訓練だからって真面目にやらないとケガしちゃうから」
なんだかんだ言って俺を心配してくれる良き幼馴染である....少し過保護すぎる気がするが。
「ハルトくん!」
今度は頬をふくらませて俺を睨んでいる。
(流石にふざけすぎたな....よし、ここは軽い冗談でも言っておくか)
「ああ悪い、何の話だっけ?デート?」
そう言った途端、シズカの顔が赤くなる。
「なっ....そ、そんな話じゃなくて!....でもハルトくんが行きたいっていうならそれでもいいけど....」
顔に手を当て、小さな声でなにか呟いているシズカ。
「ああ、そうそう訓練の話だったな」
「えっ....そうね、訓練の話してたのよね」
「?」
(なぜちょっと不機嫌そうな顔をしてるんだ?)
「とりあえず訓練するにしても他の仲間を集める必要があるな」
「ええ、四人一組で“チーム”だものね」
ここで簡単にこの世界での戦い方....チーム編成を説明しておこう。
「一人では戦えない!」
これは世界政府が掲げる対dead戦においての心得である。
その言葉の通り、一人では絶対に「dead」とは戦ってはいけない。
なぜなら....「dead」は数が多い上に、無駄にしぶとい。
一回の戦いで「群れ」と呼ばれる数百体の「dead」と戦うことがある。
その場合は、最低でも10チーム以上での戦闘が基本である。
こっちは噛まれたら即アウト....対してdeadは脳を潰すか、正確に急所を攻撃するくらいしか効果的な殺害方法が無いのだ。
(....なんたる理不尽)
そのため対dead戦において考えられたのが四人一組のチームを組み役割を持って戦うことだった。
四人一組の役割を説明すると。
チームリーダー(作戦指揮兵)....全体の指揮を取る。
サポーター(援護補助兵)....チーム全員のサポートを行う。
アタッカー(強襲突撃兵)....高火力の武器を装備し、真正面から「dead」と戦う。
サーチャー(索敵狙撃兵)....主に戦場の偵察を行い、戦闘になれば長距離武器を使い援護をする。
大体こんなところだ、ちなみに一回の戦闘では、この四人一組のチームが2組くらいで戦場に出る。
(それでも圧倒的に「dead」のほうが数が多いが)
「さて、他の奴らを呼びに行くか」
そう言って席を立つ。
「....ハルトくんとしばらく二人きりか...」
「?」
小声で何か言っているようだが....小さすぎてよく聞こえない。
「シズカ?」
思わず名前を呼ぶ。
「え?ええ!行きましょう、今すぐに!」
なぜかよくわからないが、嬉しそうな顔でシズカが答えた。
(なんで嬉しそうなんだ?)
「さて、まずは....チーム主力の”突撃強襲兵”を呼びに行くか」
俺とシズカは“彼女”がいるであろう訓練場に向かった。