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やはり文頭スペースが反映されない。PCからだと直せるのでしょうか?今度まとめて修正します。
今回大分短いです。
「怪我はないか?」
「あ。はい。ありがとうございました」
凄まじい戦闘を繰り広げた後にも関わらず、アスベルには息が乱れた様子もない。
「どうしてこんなところにいるんだ?ここが危険な場所なのは有名だろ?」
アスベルは質問しながら、女の子に本当に怪我などがないかを確認していく。
桃色のロングヘアーを、頭頂部よりやや後ろで一纏めにしたヘアースタイルで、歳は16、17歳程であろうか。高級そうなシルバーに輝く胸当てなどの軽鎧を装備している。
非常に整った顔立ちにはどことなく気品が感じられ、やや大人びてみえる。
そして何より目をひくのがそのスタイルである。
出るとこは出ているのに、腰は折れそうな程に細い。
先程とっさに助けに入ったときは意識していなかったが、改めて見てみるとかなりの美少女である。
「? どうかしましたか?」
「い、いやいや。なんでもない。とにかく無事で良かった。」
アスベルは内心の動揺を悟られぬように次の質問を投げかける。
「ところで自己紹介がまだだったな。俺はアスベル。傭兵だ。あんたは?」
「私はユウナと申します。アスベル様のおかげで助かりました。」
「まぁ、大したことじゃないから気にしなくて良い。」
フロストグリズリー10体を相手にして、大したことないとは、もしや世界で数える程しかいないというSランク傭兵なのでは?とユウナは考えた。
実際、アスベルの服には返り血一つ付いていない。
「もしやアスベル様は傭兵ギルドに所属のSランク傭兵様なのでしょうか?」
傭兵ギルドというのは世界規模の組織で各国に支部を持つ、ある意味国家よりも大きな組織である。数あるギルド組織の中でも、特に戦闘力に特化したギルドでもあるため、傭兵ギルドと事を構えようとする国家はまずない。
そのためユウナはそんなギルドの秘密兵器ともいえるSランク傭兵に助けてもらったとなったら、どれほど多額の謝礼をすれば良いのか分からなかったのである。
「いや。俺はギルドには所属していない。フリーランスの傭兵さ」
「そうなのですか? それ程の力をお持ちであるならばかなり上位ランクの傭兵になれると思うのですが……」
「組織に縛られるのが嫌でね。一度登録しようとしたけど、色々あってすぐやめた」
そのときのアスベルの顔は昔を思い出したのか、口をへの字に曲げかなり微妙な表情をしていた。
そんな子供っぽい表情をするアスベルが面白かったのかユウナは口に手を当て上品に笑っていた。
「ふふ。アスベル様は面白いですね。先程までの姿が嘘みたいです」
そんな可憐なユウナを見て、ますます動揺したのかアスベルは慌てて話題を変える。
「と、ところでこれからユウナ……さんはどうするんだ?護衛もいないとなるとこの森を抜けるのは辛いと思うが」
「あら。さん付けだなんて、ユウナで結構ですよ」
「そ、そうか。ならユウナ。改めて聞くがこれからどうするんだ?」
完全にユウナにペースを握られっぱなしのアスベルである。
男相手ならどんな筋骨隆々とした巨漢であろうとも物怖じしないのだが、女、子供となると途端にペースを崩してしまう。
「それについてはアスベル様を今から護衛として雇わせていただくことは出来ないでしょうか? 報酬は無事に帰ることができれば必ずお支払いします」
「俺は別に構わないぞ。ただ、この森の最深部に用事があるから少し付き合ってもらうことになるが……」
「それについては構いません。私も最深部に向かおうとしていたところでしたので」
ここでユウナは少し目を伏せ、申し訳なさそうにアスベルを見て言う。
「一つお願いがあるのですが……」
「? なんだ言ってみろ」
「実は少し離れたところに、ここまで私を護衛してきてくれた者達の亡骸があるのです。せめて埋葬だけでもしてから向かいたいのですが……」
それを聞いてアスベルは内心そんなことしてる間にまた魔物が来たらどうするんだと思ったが、自分がいれば滅多のことにはならないだろうし、真摯にお願いしているユウナを無碍にはできなかった。
何よりその長いまつ毛とアメジスト色の大きな瞳がよく分かる上目遣いは反則だった。意図してやっている訳ではないことが分かるだけに尚更である。
「……分かった。俺も手伝うよ」
「! ありがとうございます!」
アスベルが了承すると、途端に花が開いたかのようにパッと表情を明るくし、笑いかける。
それがみれただけでも良いかとアスベルは思い、ユウナの案内で護衛達の亡骸を埋葬しに向かったのであった。