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旧文明が紡ぐ異世界物語  作者: 蒼空 蒼々
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1-1

スマホ投稿のせいか文頭のスペースが反映されない。違和感ありありですみません。

見渡す限りの深い森の中。

辺りには深い霧が立ち込めており、視界は著しく悪い。

上を見上げても鬱蒼と繁った樹齢何百年かという程の巨木が、その木々を広げており空の色はまったく見えず、太陽の光もほとんど届いていない。

ただひたすらに静寂が支配する森の中で、アスベルはのんびりと歩いていた。


「そろそろ着くと思うんだけどな」


やや長めの黒髪で身長は180センチ程、細身に見えるが、剥き出しの腕だけを見ても無駄なく引き締められた筋肉が身体を覆っていることが分かる。

それなりの起伏のあるこの森を楽々と進んでいることからも、一般人ではないことが分かる。

何よりこの森は一般人ではまず生きて出られない。


ある種神秘的な雰囲気を感じ、普通の人間なら萎縮してしまうような森の中をピクニックにでも行くような気楽さで歩きながら、


「なぁ、どう思う?」


アスベルはすぐ近くに誰かいるように話しかける。

しかし、周りには誰の姿もみえない。


「だよな。俺ももうすぐ最深部だと思うんだよ」


周りには誰の姿もないがアスベルは一人喋り続けている。

はたから見れば完全に怪しい人物である。


「はいはい。文句言わずせっせと歩きますよ」


そんなことはお構いなしとばかりにアスベルは喋りながらも歩みはどんどん進んで行く。


そのとき、静寂の森に似つかわしくない音が聞こえてきた。


「——けて—! だれ————て!!」


「!」


それはまだ距離が遠く、はっきりとは聞き取れなかったが、確かに女性の助けを求める声であった。


「人の声? なんでこんなところで」


アスベルは釈然としないながらも、声の聞こえた方へ向かって全力で駆け出した。


その速度たるや普通の人間では視認することも困難な速さである。

先程までのゆっくりとした歩みが嘘のような疾走は、ものの数秒で声の発生源へと導いた。


その場所では、一人の女の子が10体程の体長3メートル程の巨大な熊のような魔物に囲まれているところであった。

二本の脚で立てば4メートルぐらいありそうである。


囲まれているどころか、その巨大な熊のような魔物は大きく口を開け、今まさにその女の子をおよそ「死」以外感じることのできない絶望の顎へと納めようとしていた。


「ちっ。『雷迅』!」


アスベルは舌打ちすると同時に、今までより強く脚を蹴り出す。

するとその一歩を踏み出した瞬間、眩い紫光が辺りを照らす。


一瞬の光ののち、アスベルは自らの持っていた剣を女の子と魔物の顎との間に滑り込ませていた。


魔物は柔らかい獲物ではなく、硬い金属を噛まされたことで、本能的に怒りの咆哮をあげる。


「間一髪だったな」


アスベルがちらりと女の子の方を見ると、放心したようにアスベルの剣と顔を見ていた。


「あ、あなたは……?」


「まあ、これも何かの縁だ。あんた幸運だったな」


アスベルは一度安心させるようにニッと女の子へ笑いかけると目線を外し、周囲の魔物達へと向ける。


咆哮をあげた一匹に触発されたのか周囲の魔物も興奮したように唸り声をあげていた。


「力量差ってもんが分からないやつは早死するぜ?」


今度は魔物達へとニヤリと笑いかける。

ただしこちらの笑みは地獄へ誘う死神の笑みだ。


「たかが熊の分際で俺にケンカ売るとは100年早いんだよ」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ユウナは見ている光景が信じられなかった。

雷の大精霊様の神殿へ加護を授けてもらおうと、護衛の者と共に都を出たのが三日前。


このヴォルト大森林は高レベルの魔物が棲むことで知られている。

特に、この大森林にしか棲息しないフォレストグリズリーは一匹相手でも、熟練の傭兵パーティで戦う必要があると言われているほどの魔物である。


そのため、護衛の者以外にも、念のために腕利きの傭兵を雇い10人という大パーティを組んで今回神殿へと向かったはずである。


ところが最深部まであとわずかというところで、最悪の敵フォレストグリズリーに遭遇してしまった。

しかも本来群れないはずのフォレストグリズリーが10匹も同時に。


そこからはまさに地獄絵図のようであった。自身も魔法を駆使し戦ったが、なにぶん多勢に無勢。

その腕の一振り、顎の一噛みで命を奪い取っていく圧倒的な力を前に、とうとう自分一人を残し全滅してしまった。


魔力も切れてしまい、頼みの魔法も使えず、死を覚悟したその瞬間、光が見えた。


それは瞬く間の光ではあったが、ユウナには救いの光のように感じた。

そして一瞬の後には、絶望を遮るように一人の男が現れて、正直あんまり似合ってない笑い方で笑いかけてきた。

しかし、その笑顔を見て、不思議と先程までの恐怖はどこかへ吹き飛んでしまっていた。


そこからの男は凄まじかった。

動きが速過ぎて、はっきりとは見えなかったが、男が手元の剣を振るうたびに、フォレストグリズリーの命を刈り取っていく。


フォレストグリズリーも男をまともに視認できないのか、闇雲に腕も振り回すだけで、男に当たる気配はまったくない。


一方男は、その一振りをもって腕を切り飛ばし、首を一刀の元に断ち切り、男より遥かに大きい巨体を軽々と次々に切り伏せていく。


最後に残った3匹はやっと、相手が悪いことを悟ったのか逃走を図ろうとする。


「俺に喧嘩売って逃げれると思うなよ?」


そう呟くと男は腰から何か筒のようなものを取り出し、フォレストグリズリーへと向ける。


「雷弾」


男が呟くと同時に光が辺りを一瞬照らす。

先程自分の命を救ったものと同じような紫光が見えたと思った瞬間、フォレストグリズリーの頭が吹き飛んだ。

残る二体も紫光が見えたと同時に、同じ運命を辿ることとなった。


何がなんだか分からなかったが、こうして自らを襲うはずだった死は、圧倒的な暴風の前に吹き散らされることとなったのである。




不定期に更新していきます。

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