素直だったらな
カサッ小さな音が聞こえた。
私の机に雑にたたまれたメモ用紙が乗っかっている。
「?」
隣の男子からだけどなんて書いてあるんだろう。
『オレ、好きな人いるんだけど』
「っ!?」
何時もちょっかい出してくるヤツだから、怪しい…。
私は自分のメモ帳から一枚とって、
『へー。どんな人なの?』
と書いた。そして隣の机にポイッと投げる。
すると直ぐにシャーペンで書いて折り曲げている。
カサッ…。来た!
『かみがみじくて、身長が低くて、いつもはアホ見たいな事ばっかするヤツ』
漢字が大変なコトになってる。私はクスッと笑ってしまった。
しかし、誰だろう。
『このクラス?』
『うん。あと、』
続きが消しゴムで消してあって読めない。
取りあえず私はクラスメイトを見た。
髪が短くて、身長が低くて…あれ? 私も条件にあてはまる。
でもまさか…って、『アホみたい』は?
コイツ、もしかしてからかってんのか?
『え-? 誰だろう。真奈美ちゃんとか?』
『ちがう』
ふ~。この場合どうした方が良いのかな。
無視? そうだね。それが良い。
私は鉛筆を持って黒板を見た。
ヤバイ。かなり進んでる。
その時、カサッ。…メモ用紙。
『お前のこと』
騙されるもんか。
『何言ってんの? 意味不明だけど(笑)私だってそんなアホじゃないんだから~』
これでいいのかな、不安になってきた。
『ホントのことだけど』
「…ねえ、嘘でしょ? 私騙されないよ?」
書くのが面倒になった私は直接隣に聞いた。
「…ホントだよ」
え、待ってよ。顔赤いじゃない!
突然そんな事言われても私、どうしていいか分からないよ…。
だって、だって…――。
「本当…なの?」
なんで私、涙目なの?
「そうだよ。結構、前から」
力を入れてたのか、シャーペンの芯がいきなり折れた。
もう、お互い真っ赤だ。
目なんて合わせられない。
うわぁ。
良いよ、今なら『なぁ~んてなっ 冗談だよ』って言っても。
「この場合私は、どうした方が良いの?」
自分じゃ何も判断できなくなってる。
「お前…優は好きな人いんの?」
「ちょっ」
いきなり名前? だって今まで『お前お前』って言ってたよね!?
もう! 完全に混乱してるよ。
「い…いるけど」
嗚呼もう!
あんただよ!
折角素直になってくれたのに、私がこうじゃどうもなんない。
絶望的な恋だと思ってた。
でも…
「――素敵な恋だよ。あんたも、私も」
「は?」
やっと、こっちを向いた。
私は大サービスで思いっきり笑った。
「きっと叶うよ!」
「は?」
また顔を赤くして目を逸らす。
いつもちょっかいばっかりされて、私駄目だって思ってたけど…そうでも無いみたい。
もっと早く素直になっててくれればよかったのに。
いや、私も素直にならなきゃだけど。とりあえず、
君が、好き。