[第二話]3人の仮室長
思ったより長文になってるな……
校門は開いていなかった。それもそうである。
開門時間が7時といっても、いつも7時きっかりに開くとは限らない。
その上、両脇に2本の7分咲きの桜が咲く校門の前には、既に先客がいた。
1人は少し背の高い、穏やかな顔をした青年であり、
もう1人は涼しげな表情の女性である。
駆「(これって……邪魔しないほうがいい雰囲気?)」
その女性は顔をしかめてこっちを向く。駆は、その顔には見覚えがあった。
藍「お前らは、朝から何を急いでいるんだ?」
日南 藍、駆のHR、一年四組の仮室長だ
駆「げっ、お前だったのかよ……一瞬でもカワイイと思って損したぜ。」
藍「私で悪かったな。お前こそ口だけはたいそうご立派じゃないか」
駆「何、もっとご立派なお方がおりますよ、俺の目の前に!」
藍と駆が目から火花を飛ばしてる間、通は青年に話しかける。
彼は通のHR、一年二組の仮室長である新堂 英雄だ
通「仮室長さんちーっす。今日もご苦労様で。」
英「やあ。朝から元気がいいじゃないか。次からは俺も入れてくれないか?」
通「ご冗談を。俺たち3人のただの意地の張り合いですよ?」
英「俺はそういうのが好きなんだ……おっと、邪魔かな?」
通「そうだ。新堂仮室長も、意地の張り合いを邪魔されたくはないだろう?」
英「それは俺もよーく分かってる。だよなー」
翔「(何この左右の温度差)」
そんな現場へ、もう一人女の子が駆け込んできた。
食パンを口にしてるけど、運命の人とぶつかることはなかったみたいだ。
彼女は、翔悟のHR、一年一組の仮室長である岩場 陽子
もっとも、彼女のこんな姿、めったに見られるものではないだろう。
翔「あの……何やってんですか岩場さん。
そんなことしても少女マンガみたいなことは起こりませんよ?」
陽「邑野くん違うの!朝起きたら時計が壊れてて、今何時か不安になってるときに
邑野くんたちが走ってるのが見えて……遅刻しそうな時間だと思って
すっごく急いで走ってきたの!
仮室長の私が遅刻なんかしたら……なんて考えるとすごく不安だったの!」
翔「まあまあ落ち着いて、とりあえず遅刻どころか開門前です。」
翔「僕たちを見て勘違いしたみたいですね、すいませんでした。」
陽「いいですよ、勘違いしたのは私ですし」
駆「しっかし、よく仮室長さんたちがこんなにも揃ったものだ。」
藍「当たり前だ、私が来なければお前は教室に入れないのだぞ?」
駆「は?何言ってんだ?」
翔「駆、教室を開錠する権限を持つのは仮室長と担任だけだ。
……まあ、聞いてなかったんだろうけど」
藍「ほお、お前は少しはマシなようだな」
翔「偉そうにしてるが、お前は僕のクラスの仮室長ではないからな」
藍「………(反論の口実を思いつくまで憶えてろよ)」
そんなやりとりをしている間に、校門は開かれる
駆「今だ!俺が一番乗り~―」
校門へ飛び込もうとする駆を、英雄が引き止める
英「そんなやり方で勝っても、後味悪くなるだけだぜ?」
通「あせるなよ、楽しみは後にとっておいてもいいだろ」
駆「……それもそうだな」
そして各々HRに向かうのだった
駆「(……そういえば、三組の仮室長は?)」