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第八話

「魔王ディザスター……私達が討った魔王か。まさかお前がその娘だったとはな……」

「まあ私はあまり表には出てこないから。お父様は苛烈なお人だったし、私も厳しい教育を受けてきた。だからこそ無詠唱で魔法も使えるようになったし、扇子での戦い方も身に付けた。その厳しさと冷酷さから部下達の中にはお父様を討ってでも自分が次の魔王になろうとした奴もいたけれど、お父様の強さは圧倒的だったからその強さの前には誰も敵わなかった。リサ、あなた達『白金の翼』が来るまではね」

「そうなると『白金の翼』は本当に強かったんだな」

「……いや、正直私はあれを勝利とは呼ばない」

「え、それはどういう事ですか?」



 アレックスが不思議そうにする中で私は目元を涙で濡らすヴァージニアを見つめた。



「あの時、リーダーは明らかにディザスターがいたところとは違ったところに魔法を放ったが、そこにディザスターが移動した事で命中し、一転攻勢してそのまま私達はディザスターを討つ事が出来た。アイツはそれをディザスターが『移動魔法(ワープ)』を使う仕草をしたから移動位置を特定してそこに魔法を放ったと言っていたが、あの日、そこにいたのがお前だったんだろ? ヴァージニア」

「……そうよ。お父様を討ちに来た奴らが来たと聞いて、私はお父様なら大丈夫だろうと考えていたけれど、やっぱり少し不安になってその様子を陰から覗き見てたの。そしたら私の予想通りでお父様はリサ達を圧倒していた。ああこれなら問題ない。そう思って私が部屋に戻ろうとした時にあの男の目が私に向けられて、アイツはニヤリと笑ってきたの。とてもイヤな顔をしながら」

「装いから娘だと勘づいたんだろうな。そしてお前を狙えばディザスターはそれを庇う。そう考えてアイツはヴァージニアを狙って魔法を撃ち、ディザスターはまんまとその企みにはまった。そしてそのまま……」



 私は悔しさを感じながら拳を握り締めた。私はあの日、説明された後もリーダーの行動を疑問には思っていた。だからリーダーは私を魔王の内通者だと偽って私をパーティーから追放した上にFランクから上がれなくしたんだ。アイツはどこか格好を気にする奴だったから、ディザスターを倒したきっかけが弱みをついたものだと私から伝わるのを阻止するためにそうしたのだろう。



「お父様亡き後、お父様を倒してでも魔王になろうとした奴らは自分達も『白金の翼』に倒されるのを恐れて全員いなくなったわ。そして小さい頃にお母様も亡くしていて後ろ楯を失った私はお母様譲りのヒューマン似の姿を活かしてヒューマンとして生きる事を決め、よそで暮らしていけない奴らが集まるここまで来たの」

「なるほど……ん、そういやヴァージニア姐さんの話し方が少し違うな」

「本来の私がこれよ。強気で横柄なヴァージニア・リッジウェイは世間を生きるために作り出した仮の姿。本来の私は相手に対して強気にも出られないし誰かに頼らないと生きていけない。それがかつての私、ニアよ」

「そうか、いい名前だな」

「……ありがと。そういう意味では私はリサにも負い目があるの。私がお父様の様子を見に行かなければあなたに迷惑をかけずに済んだから。本当にごめんなさい……」



 ニアが私に頭を下げる。いつものヴァージニアとしての強気な様子はどこにもなく、魔王の娘のニアとしてしっかりと謝罪してるのがハッキリとわかった。それだけ気に病んでいたのだろう。



「ニア」



 私はニアの事を抱き締める。その身体はとても華奢で、力を少しでも入れたら壊れてしまいそうだった。そんな身体でありながらこれまで力強く生き、父親と私に対して悔いを感じてきたのだろう。その努力と高潔さには頭が下がる思いだった。



「お前が悔いを感じる必要はない。お前は父を信じながらもその身を案じて来ただけだろう。その優しさは大したものだ。尊敬に値するよ」

「リサ……」

「私の件に関してもそれは仕方ないことだ。リーダーの事だから、アイツと関係を持とうとしなかった私を疎んで何らかの言いがかりをつけて追放していたに違いない。リーダーはそういう奴だからな」

「でも、このままじゃリサはFランクから上がれないし、『白金の翼』だった事も知られずに冒険者として格が低いと勘違いされ続けるだけよ?」

「そんな事はどうでもいい。あんな奴らの仲間だった過去などいらないし、ここでの暮らしは案外悪くない。だからお前は気に病まなくていい。お前は過去の苦しみにいつまでも縛られなくていいんだ」

「リサ……」



 ニアが涙混じりの声で言う。そして私を抱き締め返してくると、すすり泣き始めた。



「ありがとう、リサ……ありがとう……!」

「今まで辛かったな。だが、私達はお前の味方だ。お前はお前の生きたいように生きろ。その資格がお前にはあるのだからな」

「うん、うん……!」



 ニアを抱き締める中、私はアレックス達に視線を向けた。



「アレックス、バウル。とりあえずニアの事は私達だけの秘密にするぞ。街のみんなも正体を知ったところで騒ぎ立てる事はないと思うが、世間の連中はそうじゃない。変に噂にならないようにあくまでもヴァージニアとしてこれからも接していくぞ」

「了解です、リサ姐さん。俺もヴァージニア姐さんがどこぞの奴に狙われるのは嫌ですし、しっかり秘密にしておきますよ」

「バウ、バウン!」

「ありがとうな、二人とも。さて、レナードから早くヴァージニアを仕事に戻せと言われているし、さっさと戻るとするか」

「まあたしかにそうね。さて、私もニアからヴァージニアに戻るとするわ」



 私が離れるとニアは目を閉じながら静かに息を吐いた。すると、すぐに雰囲気は変わっていき、目を開けるとヴァージニアとしての雰囲気に戻っていた。



「さあ早く戻るわよ。サボりだと思われるのは腹立たしいもの」

「そうだな。ところで、ヴァージニア」

「なによ?」

「いつも顔を赤くしたりなんだか早口になったりするのもヴァージニアとしての演技なのか?」



 その瞬間、ヴァージニアの顔が赤くなり、アレックスとバウルが顔を見合わせながらため息をついた。



「そこは察しなさいよー!」



 なんだかわからない中、ヴァージニアの声が辺りに響き渡った。

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