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第七話

「やはりヴァージニアの強さは大したものだな」



 ヴァージニアとの戦いの後、私はレナード達と一緒にギルドへ戻ってきていた。その理由はもちろん、次のクエストを見るためだ。



「姐さん、大丈夫ですか? すぐに回復したとはいえ、少し休憩した方が……」

「いや、疲れはそんなにないから大丈夫だ」

「それならいいんですがね……それで、次のクエストはどうします?」

「そうだな……ん?」



 掲示板を見ていた時、クエストの紙がいつの間にか全てなくなっている事にきづいた。



「レナード、クエストはないのか?」

「おや、全てないですね。これはもしや……」

「お前達もクエストを受ける予定だったか」



 振り返ると、そこには鎧姿の短い銀髪の男が立っていた。



「チェスターか。いや、クエストがあれば受けようと思っていた。だがお前が受けるならばそれでいい」

「そうか、すまないな。では受付をしてこよう」



 チェスターがクエストの紙を持って歩いていく中、アレックスは不思議そうな顔でチェスターを見ていた。



「アイツ……なーんか同族の匂いがするんだよな」

「ああ、それは当たりだぞ。アイツはチェスター・オールブライト。ドラゴンの血を引いていて、ドラゴンに育てられた過去を持つ男だからな」

「ドラゴンの血……あっ、そういえば前にドラゴンの雄と女のヒューマンが愛し合って出来たドラゴンの血を引いているヒューマンがいて、ソイツはドラゴンに育てられているらしいって聞いたことがあります! そうか、アイツがそうだったのか……でも、どうしてソイツがここに?」




 アレックスが不思議そうな顔で聞いてくる中、私は以前本人から聞いた話をアレックスに話した。



「アイツも両親を亡くしていてな。その理由がドラゴンなんかと愛し合うヒューマンもドラゴンが化けた奴に違いないと疑われて二人ともチェスターを守りながら死んでいったんだ。アルバートを拐っていった教団の奴らにやられてな」

「うわ……それじゃあアルバートもチェスターもその教団に恨みしかないじゃないですか。ソイツらどうにか出来ないんですか?」

「いや、その教団ならもうないぞ。シヴォーの力を最初に暴走させた時、俺が教祖と信者まとめて抹殺したし、アジトもすべて壊滅させたからな」



 アルバートがなんて事ないように言うと、アレックスが納得顔で頷く。



「あ、そういえば力を暴走させがちだって言ってたな。まあそれなら問題ないのか。いや、ない……のか?」

「そういう経緯もあるからアルバートとチェスターは話す機会も多くて、たまに二人でクエスト外で出掛けたりもするんだが、そういえばアルバートとレナード、そしてアルバートとチェスターのどちらがいいかという話を前に他の職員がしているのを聞いた気がするな」

「へえ、コンビだとどちらがいいってことですか?」

「恐らくそうだろう。アルレナとかアルチェ、あとはレナアルとかチェアルとかも言っていたが、わざわざ略する必要があるのだろうか……」

「あ、えーと……たぶんそれって姐さんが思ってることと違いますよ? というか、自分とこの職員とか所属してる冒険者で何考えてんだソイツら……」



 また頭が痛いのかアレックスが頭を押さえる。さっきの雷でそんなにダメージを受けたのだろうか。それに対して首を傾げる中、アルバートは苦笑いを浮かべ、シルバーウルフは興味なさげにあくびをしていた。



「まあそれはいい。そういえば、ヴァージニアはどこに行ったんだろうな?」

「そういえば、そうですね……シルバーウルフ、お前さんの鼻でヴァージニア姐さんがどこに行ったか探れないか?」

「グル。バウ、バウン!」

「出来るけど、まずは名前が欲しいって? 姐さん、どうします?」

「名前くらいつけるのは造作もない。お前はバウルだな」



 それを聞いたアレックスが感心したような顔をする。



「ほう、シルバーウルフを縮めたんですね。結構イケてる名前じゃないですか」

「いや、バウバウ鳴くからだな。いや、それならガウルでも……」

「いやいや、バウルがいいと思います! ええ、そうしましょう!」

「そうか? ならお前はこれからバウルだ。改めてよろしくな」

「バウ」



 バウルは答えた後、アレックスの手を軽く舐め、アレックスは笑みを浮かべながら首を横に振った。二人とも仲がよいようで何よりだ。



「さて、バウル。ヴァージニアの匂いを見つけて私達を案内してくれるか?」

「バウ!」



 バウルは大きな鳴き声を上げると、床の匂いを嗅ぎ始めた。そしてしばらく嗅いだ後、嗅ぎ当てた様子で私達を見上げた。



「バウ!」

「嗅ぎ当てたみたいだな。レナード、少し出てくるぞ」

「はい、わかりました。ヴァージニアを見つけたら仕事に戻るように言ってください。アルバート、あなたは残ってくださいよ。まだ片付けないといけない書類が山ほどあるので」

「うっす! それじゃあリサさん、アレックス、バウル! また後で!」



 レナードとアルバートに見送られながら私達はギルドを出てバウルの後に続いて歩き始めた。



「そういえば、どうしてチェスターはなんであんなにクエストを多く受けてるんです? 実力はあるかもですけど、一人であんなに多く受けてたら手が回らないし倒れちゃうような……?」

「ああ、それなら問題ないぞ。アイツのスタミナは私達の想像を遥かに超えているし、アイツにはとあるテクニックもある」

「テクニック……クエストをこなすのにテクニックなんて必要です?」

「それなんだけどな――」

「バウッ!」



 バウルが突然吠える。そこはキジョの街の外れにある崖の上で、そこにある墓の前でヴァージニアは静かに跪いていた。



「ヴァージニア」

「……ああ、アンタ達。そっか、シルバーウルフの鼻でアタシの匂いを嗅ぎ当てたのね」

「そうだ。コイツの名前はバウルにしたんだ」

「そう」



 ヴァージニアは答えるとまた墓に目を向ける。これは誰の墓なのだろうか。



「ヴァージニア、これは誰の墓だ?」

「お父様よ。本当は別のところで亡くなったけど、レナードにお願いしてここに建てさせてもらったの」

「ヴァージニア姐さんの父親……それは一体誰なんです?」



 アレックスの問いかけにヴァージニアは真剣な顔で答えた。



「魔王ディザスター、それが私のお父様よ」

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