最終話
「……よし、これでいいな」
あの一件から数日後、私はキジョの街で行われる宴会の準備を手伝っていた。街のみんなもこれから始まる宴会を楽しみにしているようでその表情は明るかった。
「リサ、休んでるんじゃないわよ。早く手を動かさないと準備が終わらないじゃない」
「ああ、ヴァージニアか」
いつもの制服姿のヴァージニアがそこには立っていた。その表情はどこか柔らかく、ヴァージニアもこの平和を楽しんでいる様子だった。
「それにしても、なんとかなってよかったわね。あの一件をグランドギルドにバレたでアーノルドは勇者失格になって今度は自分が万年Fランクになり、あなたはグランドギルドのギルド長から謝罪を受けた上にSランクまで戻ってこれたんだから」
「階級についてはどうでもよかったが、ホッとしたというのは本当だな」
のんびりとした気持ちで話していた時、ヴァージニアは咳払いをしてから顔を赤くし始めた。
「あの、さ……あなた、同性同士だろうとお互いが好きなら一緒にいればいいって言ってたわよね?」
「言ったな」
「あなたは……私の事、好き?」
「そうだな……」
問われて私は考える。いわゆる色恋的な好きとは違うが、ヴァージニアは私にとって理想の相手なのは間違いないし、一緒にいて楽しいとは思うから好きなのだろう。
「ああ、好きだぞ」
「え……ほ、ほんと……!?」
「ああ。そういえばヴァージニア、一つ教えてほしい事がある」
「な、なに?」
ヴァージニアが何かを期待するように見てくる中、私は一つの疑問を口にした。
「ツンデレとはなんだ?」
「……え?」
「以前、街のみんながお前をツンデレだと言っていたんだが、その言葉の意味がわからない。だから教えてほしいんだ」
途端にヴァージニアは身体を振るわせ始める。
「……そんな事を一々聞いてんじゃないわよ、このバカー!」
ヴァージニアはそう言ってそのまま走り去ってしまった。よくわからないがああいうのがツンデレなのだろう。だが、その姿を見ている内に私はもう一つの疑問が浮かんでしまった。誰かそれを問いかけられる者はいないだろうか。
「リサ姐さーん」
するとアレックスが近寄ってきた。ちょうどよかった。この答えはアレックスに教えてもらうとしよう。
「アレックス、一つ教えてほしい事がある」
「なんですか、リサ姐さん?」
アレックスが首を傾げる中、私はそれを口にした。
「ツンデレの受付嬢が冒険者の私よりも強いんだがどうしたらいい?」