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第十三話

「ほらほら、どうしたヒューマンども! そんなんじゃオレ達は倒せないぜー?」



 リサ姐さんに後を任された後、オレはバウルと一緒に戦いを続けていた。オレも結構修行をしてきたからヒューマンの兵士ごとき大した事ないと思っていたが、予想はいい方に裏切られた。



「なあ、バウル。コイツら本当に大したことないんじゃねぇのか?」

『同感だな。多少は警戒していたが、主殿が仰っていたように未熟者なのだろう。少し攻撃を加えただけで気絶もすれば己の使命を投げ出して逃げていく。本当に兵士なのかすら疑わしいぞ』

「だよな……リサ姐さんが所属していた『白金の翼』が連れてきた奴らのようだし、どこかの王国の兵士とじゃなくやっすい金で雇った傭兵達なんじゃないのか?」

『あり得るな。さて、この辺りの連中は全員どうにかした。それならば主殿の元へ馳せ参じるべきだろう』

「だな。よし、それじゃあリサ姐さん達のところへ急いで――」



 その時、何者かの気配を感じてオレ達はすぐにその場から飛び退いた。すると、そこにはヒューマンの頭部程の火球がぶつかり、小さな爆発を起こした。



「な、なんだ……」

「あーら、避けられちゃったわ」

「残念。でも、ドラゴンとシルバーウルフを倒して、それを素材にしたローブをお揃いで作ればきっとお互いに似合うと思いますよ」

「ふふ、いい考えね。流石はアタシのクラリス」

「ありがとうございます、メイジー」



 高級そうな色違いのローブを着た二人組のヒューマンが現れた。一人は先のとがった黒い帽子を被った長い茶髪のスタイルのいい女、もう一人は長いブロンドヘアのスレンダーな女であり、二人の距離が妙に近いことから少なくとも深い関係なのは間違いなかった。



「お前達、何もんだ」

「アタシはメイジー・シアラー。低能そうなドラゴンでも『白金の翼』のメンバー、魔王ディザスターを討伐した勇者パーティーの一員って聞けばわかるかしら?」

「私はクラリス・シンクレア。同じく『白金の翼』のメンバーで勇者パーティーの一員、そしてメイジーの恋人です」

「恋人……どうりでお前達の距離感がなんだか近いわけだ。だが、お前達は勇者の野郎と関係を持ってるんだろ? そっちはいいのか?」



 リサ姐さんからそう聞いていたはずだ。すると、メイジーは苦々しい顔をし始めた。



「ああ、アイツ。たしかに最初はアイツとの関係にハマったけど、アイツって自分だけなところがあるからそんなによくなかったのよね。で、同じ不満を抱えてたクラリスとお試しをしてみたら……」

「私達の相性は抜群だったのでこうして恋人同士となったのです。メイジーったら私の弱いところを的確にいじめてくるのが好きなのかいつも私ばかり……」

「アンタが可愛いのがいけないのよ。今日だって本当はアンタとデートしてその後にめいっぱい可愛がりたかったのにアイツのせいでこんな僻地までわざわざ……でも、さっさとこんなところからおさらばして、その後はいーっぱい可愛がってあげるわ。今夜は寝かせないわよ?」

「もう、メイジーったら今は戦いの最中ですよ?」



 そうは言うが、クラリスはまんざらでもなさそうであり、二人はオレ達をよそにイチャイチャしている。正直ここまでの濃い絡みをいきなり見せられると胸焼けするし、炎じゃなく砂糖を吐いてしまいそうだ。早くコイツらをどうにかしないと色々な意味で命に関わる。



「はん、勇者パーティーの一員だろうがどうせリサ姐さんには敵わねぇだろうさ。リサ姐さんが言うには、勇者の野郎は魔王の弱みをつく事でしか倒せなかった腰抜けらしいしな。そんな奴に何だかんだでヒイヒイ言わされてたよわよわ女なんかにオレらが負けるかってんだ!」

「アンタ……あったま来たわ。シルバーウルフは毛皮をローブにするけど、アンタだけは死ぬまでアタシ達の奴隷にしてやる!」

「それはいいですね。ちょうど移動手段がほしいと思っていましたし、移動手段としてこき使いましょう」



 メイジーとクラリスがそれぞれの杖を構える。それを見ながらオレとバウルも戦いの態勢を整えていたその時だった。



「アレックス、バウル!」



 見ると、ニア姐さんが走ってきていた。オレ達だけでも問題ないが、ニア姐さんがいれば百人力だ。



「ニア姐さん、コイツらが勇者パーティーの一員らしいです。とりあえずやっちまいましょう!」

「ええ。街のみんなへの狼藉、その身を以て償わせてやる!」



 ニア姐さんが扇子を構えながら言う中、メイジーはバカにしたように鼻を鳴らした。



「ふん、誰が来たってアタシ達が負けるわけがないわ。一気に吹っ飛ばしてあげる!」



 メイジーは杖の先をオレ達に向けてくる。



「『雷撃魔法(ライトニングボルト)』!」



 杖の先から走った雷撃はニア姐さんを焼き尽くすために向かっていった。大切なニア姐さんを傷つけるわけにいかない。そう考えてオレはニア姐さんの前に出て『雷撃魔法』を自ら受けた。



「ぐっ、ああぁっ……!」

「アレックス!」



 ニア姐さんの声が響く中、メイジーは高笑いをし始めた。



「ほーっほっほっ! 無様ねぇ、そのくそドラゴンは。わざわざ当たりに来るなんて何考えるのかしら?」

「メイジーの魔法の腕前はぴか一。これを受けて耐えられるわけが――」

「ああぁーっ……あ?」



 その時、不思議な事に気づいた。



「まったく苦しくも痛くもない……むしろ、身体のコリがほぐれていい感じだな……?」



 雷を受けているはずなのに痛くない。一体どういう事なのか。その時、オレはその答えに気づいた。



「そうか……! オレは連続してこれよりも強いニア姐さんの雷を受けてきた。この程度なら大したことないんだ……!」



 喜んでいいのか悲しんでいいのかわからないが、これならオレはニア姐さんとバウルの盾になり、二人には攻撃に専念してもらえる。



「そうと、決まれば……!」



 オレはニヤリと笑ってから雷を打ち消した。すると、メイジー達は驚いた。



「ウソ……!」

「メイジーの魔法が効かない……!?」

「こんな魔法、屁でもないぜ! やっぱり勇者パーティーと言っても大したことねぇなあ!」

「くそ……!」



 メイジーが悔しがる中、オレは地面をしっかりと踏みしめた。



「さあ、続けようぜ。お前達の魔法なんざ全部受け止めてやるよ!」

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