水はどうだい?
「こんな辺鄙な所まで人が来るなんてめずらしいな」
「やっと……見つけた……」
荒廃した都市を出て、噂を頼りに砂漠化した荒野を旅して二週間。体力の限界を迎え幻覚を見ているのかと疑ったが、俺達は夢物語だと思っていた場所に辿り着いた。
「おぶってる嬢ちゃんもお前も酷い有様だな! 喉が渇いただろう?」
「み、水を……」
俺達を見下ろす男が、厳重な門と柵を隔てた見張り台の上でグイっと手に持ったコップを仰いだ。
久しぶりに聞く水の音。それなりの距離があるはずなのにゴクッ、ゴクッと鮮明に聞こえてくる嚥下音。体が乾ききっていなかったら渇望で涎が溢れていただろう。
「ぷはぁ! その娘は生きてんのか? 死んでなかったら、水はどうだい?」
「……! ……頼む」
「おにい……ちゃん……?」
「ごめんな……」
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「兄ちゃんが物分かり良くて助かったぜ、旅の無事を祈ってるぜ」
「……ああ」
この先はオチのネタバレです↓
男が申し出たのは「死んでなかったら、(女と交換で)水はどうだい?」だったので、お兄ちゃんはお水を貰って生き延びるために妹を売りました。