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スリーライティング・下 Three Lighting  作者: タイニ
第二十九章 LAST SONG

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82 みんなからの門出



「新郎新婦、御入場でございまーーーす!」

「!!」


尚香と章の驚きをよそに、大喝采の中スタッフに促されて入場する二人。

「?」

「??」


聞いたことのある男性の声が響いたと思ったら、正面を見ると信じられない。何とそこは披露宴会場であった。

「えー。もう結婚式も、ご来場の皆様へのご挨拶もこちらで済んでおりますので、全て省略し、新郎山名瀬章、新婦金本尚香の披露宴を始めさせていただきます!!」

「!!」

「……え……」

信じられない尚香と、げっそりしている章。尚香は驚いて、ベールで顔の周りを覆う。



「改めてわたくし、司会を務めさせていただきます株式会社ジノンシー・コンサルティング、金本尚香の先輩だけど部下、兼代と申します。金本先輩故にたくさん仕事をして彼女を逃しましたので、金本先輩に貸しのある者です!」

「いや、披露宴のMCが逃したとか言うなよ。」

四谷があきれている。そして今は部下ではない。



先まで教会にいたメンバーも既に到着。ビュッフェ形式でそれなりに広い会場である。お父さんとお母さんが手を振ってくれほっとするも尚香もげっそりだ。



「ちょっと待った!!」

「…あ?何?」

「兼代さん!」

章は楽しそうな兼代のマイクを奪った。

「日本人はサプライズは嫌いだと言ってたんですけど??尚香さんビビりまくってるじゃないですか!披露宴はしないと言ったのに!」

怒る章に対し、怒る招待客。主にイットシー。

「招待客に対してその態度は何だー!!!」

「ふざけんな!これだけ人に迷惑かけて来て、勝手に報告だけとか許すか!!!」

「お前には何も決める権利はない!!」


招待した覚えのない招待客、みな偉そうである。

「何?この茶番!」

「黙れ、功!」

「どんだけじらしてきたんだ!ひな壇から引きずり落しても遂行する!!」

めちゃくちゃ攻める大人に、学生たちがドン引きしていた。イベント部美香は仕切り直したい。

「いや、だから結婚式で茶番とか、引きずるとか落すとか使わないでほしいんだけど。」


「伊那!伊那の披露宴は俺が主催する!!」

「え?つわりひどいからやらないんだけど。それに功、絶対主催なんてできないだろ。」

自分の誕生日も逃げる男なのに。


伊那の彼女の由梨も妊娠したので、今は籍を入れて夫婦になっていた。



そして兼代、調子に乗る。

「先までご覧いただいた結婚、写真撮影。皆様いかがだったでしょうか。これから超略式で指輪交換に誓いのキッスをお願いいたします!」

柚木の渡した新しいマイクで言いたい放題である。

「はあ?」

章はちょっとブチ切れ気味であるが、何とここにはエナドリメンバーも一部来ていて「コー!オネーサン、ポ(キス)ポー!」とスマホを構えて手を振ってた。尚香の知らない人々もいるが、おそらく音楽関係である。


小さな声で驚いてしまう尚香。

「え?まさか先、結婚式中継してたとかじゃないよね??」

後方でナオが教えてくれる。

「大丈夫です。ウチの技術スタッフが超高速で美しく楽しく編集しているので、変顔とかはありません!」

「……え……」

そういう問題ではない。



指輪をはずせさせられ、なぜかもう一度指輪交換をした上に、誓いのキスをとか言われるので、章はしょうがなくアワアワしている尚香に向いた。


しかし、ものすごい数のスマホを向けられ、尚香がベールで顔を隠してかわいそうだ。

「…………」

けれどせっかくみんなが設けてくれた場。少しだけベールをよけて、章はそっとおでこにキスをした。


おおお!!!という拍手歓声と共に、

「なんでオデコ!」

「日本人おかしい!!」

と言葉が飛び交う。外国圏勢も多いのでみんな物足りなくて不満である。



「………」

正直章は何もしたくない。なぜなら尚香が、結婚式をすると決めた後から少しマリッジブルーっぽかったのだ。あれこれ上の空で心配だ。


背を低くして顔を覗き込むと一応大丈夫そうだが、念のために被っていたベールをもう一度きれいに顔に掛けてあげる。

「尚香さん、大丈夫?」

「……うん。」




それでも最前列辺りまで行って感動しているのは、太郎と朝ちゃんであった。新郎新婦、凝視である。触れもしなかったのに、キスまでして感極まりない。


「朝ちゃん!!」

尚香が朝に手を広げると、朝は無言で駆けつけ尚香に抱き着いた。尚香は太郎に会うのは去年のコンサート以来、なので朝はもっと前になる。

「尚香ちゃ~ん!!」

もう高学年なのに、男泣きする太郎。

「尚香ちゃん、また演奏会来てね。」

「うん、ごめんね………」

「僕が大きかったら、僕が幸せにしたるのに………うぅ……」

なんつーガキだと呆れる章。尚香は子供にもモテるのかと思うが、功が頼り無さそうに見えていたたまれないのである。子供心に。


しかしそこに、様子を伺っていた他の園児たちも飛び出して来る。

「しょーちゃん!」

「とよ、ちい!」

手が空いている横の章に抱き着く二人。

「しょーちゃん!!」

章はそのまま二人を抱き上げてぎゅっとしてあげた。愛知県から来た陽の子供たちだ。

「とよとちいも来たんか?かわいい服着て来たな!」



それにショックを受ける朝ちゃん。

「!」

章の懐はいつも自分の物だったのに、自分より小さな女の子に占領されてしまった。

「…………朝、独占欲強い女みたいな顔止めろ。」

兄に言われるも泣きそうである。



そこで出てきたのは、陽と星南であった。

「尚香ちゃん、章、おめでとう!!」

「陽くん!星ちゃん!」

章は陽にコクッと挨拶をする。星南はめちゃくちゃテンションが高い。

「尚香ちゃん!エナドリいるんだけど!!」


「え?もしかしてソンジいる?」

章が聞いてしまうもソンジは仕事でアメリカである。そういえば、なぜ自分の休暇に合わせてくれないのかと怒涛のスタンプが入っていたのを思い出す。

「星ちゃん、残念だったね。」

と、尚香が言うも「このくらいがちょうどいい!これ以上は受け止めきれない~!」と、訳の分からないことを言っていた。



「……それで尚香ちゃん、俺らからのプレゼント。」

「?」

陽が改まると星南が人を連れてくる。


「!」

人をかき分けて来た二人に尚香は胸が詰まる。


「園長先生、瑛子先生!!」

尚香が育った施設のご夫妻であった。

「尚香ちゃん!!」

尚香を抱擁する瑛子先生は、本当に良かったと言いながらただ泣いていた。


これだけでも尚香は、やっぱりこうして宴を開いてもらったことに感謝した。



そんな中、先までバチバチだった女の子たちは、いつの間にかテーブルの方に行って既に3人仲よく遊んでいた。




そこに現るまたうるさい人。

「コーー!!!」

チュンゾモ(曽祖母)!!」

「オー!ウリ、チャランスロウンソンジャ!!」

道の母方の祖母で、功の慶北の義曽祖母である。誇らしい孫だと言う曽祖母に舞台を降りて章は抱き着く。

『なんで式に来なかったの?!』

『バカか!東京、広すぎるわ!!』

『ハハハ……』

後ろで同行した曽孫が笑っている。本当は式に参加するつもりが、彼が間違えて違う場所に行ってしまったのだ。以前日本のタクシーの高さに驚愕し、タクシーを使わなかったのが間違えであった。全然違う駅で降りたのである。

『……そっか、車出してあげればよかったね。チュンゾモも少し足が悪いのに……』

『反省してます。』

忙しくて気が回らなかった道が謝っている。道の母は日本に慣れているので全部してくれたと思っていたのだが、来たいと言ったソウル側の一行を連れてくるので精一杯であったのだ。


『いい、いい。功が見れたから。』

韓国語で話しているのでキョトンとするも、尚香も説明されてチュンゾモと手を握り抱擁し合った。



ソウル側の一行は親戚以外に、チェ氏のいる教会の人々も少し来ていた。事務所関連はイットシーが受け持ったがそれ以外も多い。


牧師が出て来て二人に挨拶をした後に、思わず言ってしまう。

「章、なんで私に祝福させてくれなかったんだ!」

結婚の誓いのことだ。

「日本の教会も韓国の教会も超絶狭苦しくてきらいっス。」

章が式を挙げたのは、叔父さんのアメリカ教会。

「ははは、はっきり言うなあ。」

すごい勢いで抱擁し手をブンブン握手する外国人たちに、尚香、驚くしかない。みんな濃すぎる。



この後、仕方ないのでキャンドルサービスをして回った。

「尚香さーん!!」

「利帆ちゃん!結花ちゃん!」

「功だ………本当に功だ………」

結花が感動しているので、功が拳を合わせるボーズをしてくれ、このテーブルはキャーキャー騒ぎまくっていた。


元緑川の学生たちと、Lushクラスティンの担当だった先生も来ている。大和が利帆も立役者だと言い、利帆が来るなら他も呼ばないとと数人が来ていた。

実はマンガ部山ちゃんもだ。山ちゃんはあの後普通に大学に通いながらも、功に真理と気に入られ、新曲のイメージイラストの担当になってしまったのだ。勉強の合間に、シューナエンターテイメントにも通い、出世頭筆頭だ。

その後に続くわけではないが、いい思い出になったと山ちゃんは満足である。


照明の山本さんや和歌さんたちは仕事で来れない。イットシーは半分以上のスタッフが参加できず、その分たくさんのメッセージが届いていた。


実はラナもこの会場に来ている。少し気まずそうに、でも大きな花束などを尚香たちにプレゼントしていた。


後は、道の日本側の親戚や貴世さんなどである。




いろんな演出があり、尚香ももう少し軽いドレスに替えさせてもらい普通に食事をする。



またもや信じられないことにメモリービデオまで作られていた。

道が隠し持っていた秘蔵写真がいろいろ出され、めちゃくちゃな章の写真の一方、尚香の方は極めて平凡で和やかな家族写真であった。時々幼少期の物もあるが、敢えて言わなければ施設生活の風景だとは分からないだろう。


「尚香ちゃん、かわいいねえ。」

太郎、なんでもうれしい。大人の世界に揉まれたはずの太郎が一番純粋で嬉しそうであった。


「あいつはなんであんなにも憎たらしい顔をしてるんだ?」

功の写真は、超絶笑顔のお兄ちゃんの横でさえ目つきが悪い。



久しぶりに聴いた太郎と朝ちゃんの演奏に尚香も涙が出る。

途中で功も加わり、アンコールが起こっていた。



「えー、ではお次は俺。兼代が歌います!」

と、兼代はいかにもサラリーマンなカラオケを披露。カラオケで定番過ぎて聴きたくないベスト3の歌を敢えて歌う。


そしてお手紙披露では、なぜか尚香ではなくエナドリのハジュンと、太郎が手紙を読み二人とも泣いていた。親か。

「え?そこ、花婿か花嫁がするとこちゃう?」

と、思うも尚香は式の方で、既にお父さんお母さんにお礼を言読んでいる。




「尚香さん、もうここで二次会状態だよ。ご飯食べなよ。」

と、功も食べているので尚香も少し手を付けた。



そこに、また信じられない人がお酒を持って現れた。





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