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潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい  作者: 葉方萌生
第六章 真の光

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戻ってきた

「う……っ」


 いつかと同じように、船の上で目を覚ました私は、太陽のまぶしさに思わず両手で瞼を覆った。いつのまにかデッキに寝転んでいて、身体が焼け付くように暑い。命の危険を察知してすぐに起き上がった。


「戻って来たか、朝香」


 不意に聞こえてきた声に、はっと息をのんだ。


「翔、どうしてここに」


 なぜ、目の前に翔がいるのか、分からなかった。

 彼とはこっちの世界で今日、吹上浜で対峙してからとっくに別れたはずだ。一体どうして? 状況を飲み込めずに瞬きを繰り返す。


「お前を追いかけて、この船に乗り込んだ。……お前を追いかけて、渦潮の中に飛び込んだ」


「は……? どういうこと」


「そのままの意味だよ。吹上浜で、朝香にひどい言葉をかけてしまったって後悔して。朝香のこと追いかけた。そしたらお前、『うしお丸』に乗ったから、もしかして、と思って乗り込んだんだ。チケットの販売があと一枚だけ残ってたのはラッキーだったよ。船の出発も少し遅れてたおかげでなんとか間に合った」


 翔は何を言っているのだろう。

 彼の語ることが本当だとして、じゃあ私がタイムスリップをして話していた翔って。


 そこまで考えた時、彼が自分のスマホを掲げてみせた。そこには、「幸運」と書かれた梅の形のお守りがさがっている。慌てて自分のスマホを取り出すと、同じお守りがくっついていた。

 夢かと思った。

 だって、そんなこと。

 そんなことって、本当に——。


「福岡旅行——いや、“再生の旅”、楽しかったな。日帰りになっちまったけど、久しぶりに二人で精一杯向き合えて、幸せな時間だった」


「なんで……」


 もう聞かなくても分かる。タイムスリップをして私が会っていたのは、向き合っていたのは目の前にいる二十八歳の翔だ。


「なんで渦潮に飛び込んだのかって? 一つはもちろん、お前が死ぬかもしれないって思ったからだ。無謀だけど咄嗟に身体が動いてた。助けたかった。でももう一つは……お前と同じで、過去の後悔を消しにいきたいって思った。朝香が抱いているかもしれない後悔。俺が朝香に別れを告げた日に、俺たちお互いがきっと何かしらの後悔を抱えていた。だからその瞬間に戻って、やり直したかったんだ。半分以上賭けだったんだけどな。普通なら渦潮に飛び込んで死ぬかもしれないって思うだろ。だからまあ、しなばもろとも! って勢いでつい」


 つい、とおどけて言ってみせる翔だったが、事が事だけに笑い事ではないことはお互い分かっていた。たまたまタイムスリップが成功したから良かったものの、もしかしたら本当に二人で海の底に沈んでいたかもしれないのだ。


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