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潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい  作者: 葉方萌生
第六章 真の光

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幸運守り

「ごちそうさま。なんか、すごく満たされた気分だ」


「本当そうだな。これ食べられただけでも、九州まで来て良かったって思う」


「おーっと少年、ここで満足しちゃダメですよ。九州を満喫するのはこれからなんですから」


「そうでした、船長。早速太宰府天満宮をお参りしましょうか」


「そうしましょう!」


 面白おかしく喜劇を繰り広げる私たちは、互いに目を合わせてお腹を抱えて笑った。こんなふうに心から楽しいと感じたのはいつぶりだろうか。忘れていた翔との青春の日々が今、甦ってきた。


『和食処「お日柄」』を出た私たちは、その足で太宰府天満宮の参道へと向かった。参道には左右に数々のお土産物屋さんが立ち並んでいる。自然と、視線があっちこっちに行ってしまって忙しい。有名な梅ヶ枝餅のお店はいくつもあって、お店によって行列ができているところもあった。


 途中、和小物屋さんや土産物屋さんに寄りながら、参道を抜けた私たちは境内の方へと向かった。中はかなり広くて、太宰府天満宮の威厳を思い知らされる。本殿の前までたどり着くと、二人でぱちんと手を合わせた。


——どうか、翔の後悔がなくなりますように。


 私が願ったのはもちろん、それだけだ。

 願い事自体短かったので、すぐに瞼を持ち上げる。隣では翔が、まだ何か一生懸命祈っている様子だった。


「ちゃんと願い事できた?」


 目を開けた翔に聞くと、彼は「ああ」と神妙そうに頷いた。

 彼は何を願ったんだろう。聞いてみたいけれど、さすがにそこまで尋ねるのは野暮だ。


「ねえ、お守り買わない? あそこに売ってる」


 私は、お守りを販売している建物を指差して言った。


「いいよ。覗いてみよう」


 巫女さんがお守りを販売している場所まで近づくと、色とりどりのお守りがざっと並んでいて、目移りがした。健康、交通安全、安産など、効果も様々だ。私は「幸運」と書かれたお守りを手にした。梅の花の形になっているピンク色のそれは、他のお守りと一線を画す可愛らしいデザインをしていた。それを二つとって、翔に「これでいい?」と聞いてみる。


「“幸運”って、美味しいところ全部詰めみたいだな」


「でしょ。これさえあればすべて上手くいくって」


 納得した私たちは、梅の花のお守りを二つ買った。早速袋から取り出して、お互いのスマホのストラップの部分につける。小さな鈴がついていて、小鳥のさえずりみたいな音が鳴った。


 二人して元来た道を戻る。途中、梅ヶ枝餅が食べたくなった私は、翔と一緒にお店に入ることにした。


 焼きたての梅ヶ枝餅と、温かい緑茶が運ばれてきて、ほっこりとした気分を味わう。梅枝餅を口に入れると、ふわふわもっちりの生地の中で、濃厚なあんこが舌の上で溶けた。なんというかすごく……甘くて美味しい。焼きたて独特の香りも良くて、何個でも食べられそうな勢いだ。


「今日は美味いもの尽くしだな」


「そうだね。たまには贅沢するのもいいねえ」


 翔の家の事情を知っている私は、彼が言葉通り、「美味いもの尽くし」な今日を満喫してくれているならそれでいいと思った。

 行きしなと同じように、お店を見ながら参道を下っていった。時刻は午後三時、まだまだ今日は時間がある。これからどうしようか、なんて話をしながら駅まで辿り着いた。なんだか本当に旅行気分だ。


「今日は博多の街をぶらぶらしない?」


「そうだね。ホテルも探さなくちゃいけないしー」


「ほんとだ。ホテル、どこか空いてるかな」


「都会だから大丈夫って!」


 楽観的に構える私がおかしかったのか、翔はふっと微笑んでいた。


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