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潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい  作者: 葉方萌生
第六章 真の光

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太宰府天満宮

 博多駅で降り立った私たちは、長い時間椅子に座っていたせいで身体が凝り固まっていることに気づく。二人で大きく伸びをして駅構内から出た。


「今日は博多に泊まるとして、明日はどうする? せっかくだし鹿児島まで行っちゃう?」


「そうだな。ずっと福岡っていうのも味気ないしな。いいよ、俺はどこへでも。船長についていきます」


 船長、だなんて面白おかしく私のことを呼ぶ翔に、にんまりと笑ってみせる。計画性のない船長だけど、翔と心の距離を縮めたいという想いだけは一丁前だ。


 その日、私たちは早速博多の街を満喫することにした。

 博多駅前は、淡路島から出てきた私にとってはまさに大都会。東京に住んでいた翔にとっては見慣れた風景なのかもしれないが、駅前に聳え立つショッピングセンターやオフィスビルを前に「ほえ〜」と呆けた声を上げてしまう。翔に「田舎娘だなあ」と揶揄われてまたむっとする。


「悪い悪い。本当は俺も驚いてる」


「そうなの? 東京で慣れてるのかと思ってた」


「慣れてはいるけど、博多がこんなに栄えてるって思ってなかったから」


「井の中の蛙大海を知らず、だね」


「お、なんか受験生っぽい」


「残念。私は受験しないんですー」


 自分が悩んでいた進路のことも、こんなふうに茶化されるとなんだかどうでも良く感じられるから不思議だ。


「ねえ、せっかくだし太宰府天満宮(だざいふてんまんぐう)行かない? 福岡の観光地といえば太宰府でしょ」


「いいよ。ついていくって行ったじゃん」


 翔が同意してくれたのを出発の合図に、私はスマホで太宰府天満宮までの行き方を調べた。博多駅から天神(てんじん)という福岡随一の繁華街へ移動し、天神から太宰府までの電車が出ているそうだ。


「天神までバスが出てるんだって。それで行こう」


「おっけー、そうしよ」


 軽い返事を聞いててなんだかほっとさせられる。

 駅前で天神行きのバスに乗ると、ものの十分ほどで到着した。バス停に降り立つと、駅前と同じように背の高い建物が大通り沿いに並んでいる。デパートやショッピングセンターがメインで、ところどころにチェーン店カフェも見られる。なるほど、確かに買い物をするならこの辺りが便利だろう。


 西鉄福岡駅から太宰府駅までは一本で行けるらしい。さっそくやってきた電車に乗り込むと、なんなく太宰府へと運ばれていった。


「なんか、思ったより簡単だったね」


「ああ。知らない街だけどスマホがあればどこにでも行けるな」


 私は、ここまでの道中で意外にも自分でひょいひょいと移動ができてしまうことに、驚いていた。十八歳の自分にここまでのことができたかは分からないが、狭い淡路島の中でうじうじと悩んでいたことが嘘のように感じられる。

 三十分ほど電車に揺られていると、太宰府駅にあっけなく到着した。


「はー! 到着! お腹すいたーっ」


「はは、開口一番に『お腹すいた』はないだろ」


「えーだってもう十二時だよ? 今日は朝早くから活動してるしもうぺこぺこだって」


「まあ言われてみればそうだな」


 その瞬間、翔の腹の虫が鳴った。大笑いしてみせる私。この時ばかりは、翔も恥ずかしかったのか「くそー」と悔しそうに唸った。


「じゃあお昼ご飯食べよ。何が食べたい?」


「うーん、そうだな。あそこなんかどう?」


 翔が指さしたのは、『和食処「お日柄」』というお店だった。店構えからして美味しそうな和食料理が食べられそうだと一目で分かった。


「うん、いいよ。あそこにしよう」


 駅のすぐ目の前にあるお店だったので、すでに行列ができていた。普段なら待ち長いと感じる待ち時間も、翔と一緒ならどうってことない。ゆったりとした気持ちで列に並んでいた。


 やがて私たちの番が来て、窓際の席に案内される。広げたメニュー表には重箱に入った「山菜御膳」がおすすめだと書かれている。確かに、きらきらした宝石箱みたいで美しい。私も翔も、迷わず山菜御膳を頼んだ。


「いただきますっ!」


 料理の見た目だけで空腹が一気に深まってしまった私は、お箸を握るや否や次々とおかずを口に運んだ。


「美味しい〜! こういう御膳って初めて食べたかも」


「俺も、初めて。いろんなおかずがあって美味いな」


 お刺身やお芋の煮っ転がし、菜の花の胡麻和えなど、身体に良さそうなおかずが胃の中に染み渡る。私も翔も、ものの三十分で食事を平らげてしまった。


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