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潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい  作者: 葉方萌生
第四章 闇の星

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変わる関係

 その日から、翔との関係は少しずつ変わっていたように思う。まるで、シャツのボタンを一つ掛け違えてしまったみたいに。歯車はちょっとずつ噛み合わなくなっていた。


 四月、高校三年生の一年が始まった。

 私は菜々と同じクラスになったが、翔とは違うクラスになった。隼人も別のクラスで、仲良し四人組はほとんどバラバラになった。

 しかしだからと言って、私と翔が相変わらず恋人同士だったことには変わりないし、休みの日には四人で出かけることもあった。ただ、受験生ということもあり、みんなで集まる機会は格段に減っていた。


 四月の模試が終わり、ゴールデンウィークが明けると今度は中間テストがある。三年生になり、みんな目の色が変わっていた。就職組と進学組が半分ずつクラスにいるので、進学組の真剣な空気感に、就職組ものまれているという感じだった。


「はーあ。やっと中間テスト終わったよー。もう、テストばっかで嫌になっちゃうねえ」


 昼休み、一緒にお弁当を食べていた菜々が愚痴をこぼす。菜々も神戸の大学に進学するのが目標なので、三年生になるとキリキリと机に向かっていた。


「本当に。進学しない私たちでさえ気が滅入る……」


「朝香んち、家でも厳しいもんねー。卒業したらそのまま家業を継ぐの?」


「うん、そのつもり」


 何の気なしにさらりと答える。必要以上に考えすぎて心が乱れないように、ぎりぎりの均衡を保っていた。


「翔は、進学するんだっけ? 離れ離れになっちゃうけど大丈夫?」


「……大丈夫」


 今度はなんとか強がりな台詞が口から漏れた。菜々が「はあ」とため息をつく。私の嘘なんて、お見通しとでも言うように。


「あんたさあ、そんな曖昧な感じでいいの? 遠距離恋愛ってしたことある? めっちゃハードだって聞くよ。ちなみに私はないけどー。っていうか、そもそも恋愛自体、ねえ?」


 自虐するようにニタリと笑う彼女が、あえて私を慰めようとしてくれているのが分かって、胸が苦しくなる。


「分かんない。でもやるしかないでしょ」


「ほう。覚悟があるのね。それぐらい翔のことが好きなんだ。まあ、見てて分けるけど。二人、どうしようもないくらい、“二人で一つ”って感じだもんね」


 朝香と翔なら大丈夫か。

 目を細めながら、今度は柔らかく笑ってくれた菜々は、一体どんな気持ちで離れ離れになる運命にある私たちのことを見守ってくれていたんだろう。その時の私は、自分と翔の将来のことで必死になっていて、周りのことはあまり視界に入っていなかった。


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