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会いに行くよね?

「ごめん、もしかして気に障った? 無神経だったかな」


 反応が薄い私をみかねた菜々が眉根を寄せている。菜々が悪いわけじゃない。超売れっ子俳優の翔が淡路島に帰ってきたとなれば、喜ぶのは当然のことだろう。しかも翔は友達だったわけだし。


「ううん、突然のことで動揺しちゃっただけだよ。翔が帰ってきたのは嬉しい。というか、半分まだ信じられない気持ちでなんて言ったらいいか」


「そっか、そうだよね。この十年、ずっと姿を見せないんだもん。いくらあっちで忙しいからって、薄情だよねえ。今度会ったら文句の一つでも言っておくわ」


「ふふ、ありがとう。文句なんか言ったら、『もう二度と帰ってこない』なんて言われかねないけどね」


「あいつならありえるなあ。意外とズバズバ言うとこあるし」


「うんうん。普段は明るい自由人って感じなのに、一気に真面目モードになることもあるしさ。なんか、掴みどころがないんだよね」


 高校生だった頃の翔を思い浮かべて、翔の性格のことで盛り上がる私たち。

 翔の爽やかな顔が脳裏によぎる。翔のことを見なくなって十年が経って、記憶に残るのは彼のそういう明るい表情ばかりだ。付き合いのあった当時は、もっといろんな表情を見せてくれていたはずなのに。記憶はいつも、いいようにすり替えられてしまうらしい。


「朝香も会いに行くよね、翔に」


「翔に会いに?」


 当然のように問いかけてくる親友に対して、私はぽかんと口を開けてしまう。そうか、翔に会えるのか。島を出ていってから、テレビの向こうでしか見ていなかったので、どこか遠い存在になってしまっていた。でも帰ってきたのならそうか、会えるんだ。


「え、会わないの? 隼人から来週の日曜日にみんなで集まらないかって連絡があったんだけど。私、朝香も行くだろうって思って、二人ともOKって言っちゃったよ」


「そうなの? 来週の日曜日……」


「もしかしてダメだった? 仕事?」


「ううん、夜だよね?」


「うん。私も昼間はお店の方を開けなくちゃいけないから、夜ご飯をみんなでどうかって話になってる」


「夜なら多分大丈夫だけど……」


 煮え切らない私の態度に、だんだんと菜々の表情が曇っていくのが分かった。


「うーん、ノリ悪いなあ。まあ仕方ないか。やっぱり時効には早かった?」


「そんなことないんだけど、本当に突然のことだったから。みんなで集まる話はちょっと考えてもいいかな」


「分かったよ。隼人にもそう言っておく。気が変わったら教えて」


「うん、ありがとう」


 それだけ言い残して去っていこうとする菜々だったけど、「そう言えば」と話を続けた。


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