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6話 少女が憎む者 その名は大山賊ヤガザ

「え……良いのですか……?化身様がお手を煩わせずとも…………」

「なら逆に聞こう。リン。君は復讐したく無いのか?のうのうと生きている悪逆な人間を。この絶好の機会を逃すのか?」

「い、いえ。そう言う訳では……ですが、化身様にとってそんな利益があるとは到底……」

「利益はある。隣のこいつなんだが、目的を自分で作れない、受け身の極地で全肯定マシンなんだ。コイツは。だから目的作りはこいつの為でもある」

「そう……ですか。分かりました。それが化身様の為なら」


私を省いた会話がようやく終わった。


「それでは案内しますね」


3人の死体をリンが地面に埋め、3人全部が持っていた……カード?を回収してから、出発した。




「化身様……どちらをどちらの名前で呼べば良いのか、伺ってもよろしいでしょうか?」


道中リンが私達に質問をした。確かに化身だとしか名乗ってないから、その疑問が浮き上がるのも仕方ない。


「なら俺は悪意と呼んでくれ」

「……私は……」


「コイツは今の名前のゆうと呼んでやってくれ!」

割り込まれた……でも思い付かなかったから良かったかも……


「分かりました!」

さっき目の前で人死にを見たはずだけれど、元気と希望が溢れてる……心が眩しい……


「……アクイ様アクイ様。アクイ様の言うことに全て従っている辺り、本当にユウ様は受け身なんですね……」

「ああ、残念なことにな」


聞こえてる……




「着きました。この山全域が、奴ら、山賊ヤガザが支配している領域です」


今まである程度平坦だった森が、一気に急斜面に様変わり。この場から山を見た限り、数十人の人間がいる。そして全員漏れなく濁ってる。


「ですが本拠地は未だ分からず、冒険者総出で討伐に出ても、尻尾すら掴めませんでした」

「見つけた」


「え?」


「ああ、洞窟の中に根城を造っているみたいだな」

「えぇ?!もう分かったんですか?!」


リンが凄く驚いている。生命を感知できる私と、悪意を感知できる悪意の化身。化身だからこその芸当。驚くのも無理は無い、と思う。


「さて、行く宛は分かった。最短距離を歩いて進もう」

悪意の化身が先頭に立って木々が生い茂る斜面を歩く。私とリンはその後を進む。


かなり歩いて、少し周囲が開けた場所に来た。あと大きな切り立った崖が聳える。


「ここだな」

「そうだね」


「ここ……とは一体?」

リンは人間。人間の視覚情報では、目の前には崖しか見えない。


「ついて来て。すぐに分かる」

そのまま崖に向かう。


崖のすぐ目の前まで来た。私が見えた人間。それがここら辺。軽く生と死を纏って目の前に触れる。


『バチンッ!』


電撃のような音と共に、洞窟が現れた。方法は分からないけど、洞窟をただの崖に見えるように細工されてた。これじゃあ豪運な人間以外には見つけられないと思う。


貴族と繋がっていたなら尚更。息のかかった冒険者がここを探索すれば良いから。


洞窟の奥から声が聞こえる。多分、この細工を破られたことに勘付かれた。


「……」


私に投げられた槍を片手で受け止める。この威力。そして槍に込められた殺意。洞窟内にいる人間の中で、一線を画す者がいる。


受け止めた槍は邪魔だから、そこら辺に放り投げとく。


「貴様等か?隠密魔術を消し飛ばした不快な奴は」


ガシャガシャと金属製の防具を響かせながら、1人の男と複数人の人間が洞窟から出て来て私達を囲んだ。


「俺様の槍を受け止めるたぁ、良くやる奴よ。だからここで殺す。絶対にだ」


私の目と鼻の先に持っていた槍を構え、同時に周りを囲む人間達も武器を構えた。


「こ、こいつです!山賊ヤガザは!」

リンがそう言った。この人間が、目的……


…………


「暗い、暗い、世界の片隅……」


「おい待て!ここで放つ気か?!リン、俺に捕まれ!今すぐここから離れるぞ!」

「へ?えぇ?!」


「……置いてけぼりの、コドモタチ」

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