41話 竜の屍を踏み越えたその先 更にお労しきかなビッカ大空洞
ビッカ大空洞の地下3階。特筆するほどの何かは無し。あるとすれば、さっきの赤い竜と暴力の化身との闘争時の攻撃この階にまで到達し、残骸と化した生物の残骸。
特段何も無かった3階を超え、ビッカ大空洞の地下4階。そこで予想外な者に鉢合わせた。
「お久しぶりですユウ様!アクイ様!」
目の前に、ダンジョン内であるこの場に、リンがいた。
「再現度40点」
「低すぎないか?50点くらいだろう」
「0」
十中八九、偽物。悪意の化身がその再現性に点数を付けたから私も付けたけど、生と死の化身である私は姿と一緒に中と色も見えるから、再現度としては0以下。
悪意の化身も中が見えるから点数が低い。50点を出してる暴力の化身は中が見えないからその点数が出せる。
「どうしましたか?ユウさ――――」
「さて、無視して進もうか」
悪意の化身が偽物の上半身を消し飛ばして、行き先を指し示す。
どうやらここは親しい人物の偽物が現れるらしい。悪意の化身曰く、かなり有名でカダッカの街の冒険者ギルドで事前に教えてくれるそうだ。私は知らなかった。
「⬛︎⬛︎。久しぶり」
「あっ」
「……っ!!〈〈強制次元追放〉!」
いた。いた。いたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいた……
「落ち着け!ここにはお前の友はいない!お前は何も見なかった?!そうだろう?!」
「……………………うん」
「取り敢えず俺とヴァレスであそこを掃除してくる。生と死の化身は、そこで落ち着いてくれ。終わり次第迎えに来る」
悪意の化身が世界に戻って行った。
……私はただの人だった。私はただの少女だった。友人がいた。両親がいた。なのに、もう……全てが消失した。あるのは蓄積した彼女の怨念。ただ一つ。
悪意の化身と、暴力の化身と、私は違う。
全部覚えてる。全部忘れられない。だから……怨念も、傷も、感情も、全部が癒えない。
…………幾度となく、事情を知らぬ者が彼女の幻影を生み出し、そして暴走の果てに世界が滅ぶ。何度も起きた。何度も起こってしまった。
ただ世界の歪みに巻き込まれてしまっただけなのに。私が認識さえしなければ、生と死の化身が存在することは無かったのに。延々と続き繰り返されたあの歪みによる精神崩壊と、無限回に等しい死と生の果てに……何故私はあんなことをしたのだろうか。
どんなに自責しても、どんなに後悔しても、彼女は私に傷をつけて、誰の目にも明らかな歪んだ愛で私を包む。私はそれに身を任せても良い。だって、それだけのことをしたから……
「終わったぞ。どうした……?」
「……何でもない」
「そうか」
悪意の化身が私の手を引き、ビッカ大空洞に戻る。
ビッカ大空洞は生命が存在するかも怪しいほどにボロボロな外壁と天井と地面。それだけが目に入る。
そこで暴力の化身と合流し、必要な物は入手したと言うことでもうここにいる理由は無い。と悪意の化身が言い、半壊状態のダンジョンを後にした。




