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40話 暴力の化身ヴァレスの闘争 お労しきかなビッカ大空洞

先手の打ち合いに勝利した暴力の化身が更なる一手を放つ為に、紅い竜に接近する。


今の一撃を気絶せず耐え切った紅い竜は、暴力の化身の更なる一手を防ぐ為反撃に出る。


紅い竜は全身から壁端にいる私と悪意の化身に届くほどの熱波を放ち、その熱波の直撃を喰らった暴力の化身が一瞬にして焼死体と化し、数瞬で元に戻った。


しかしその隙に紅い竜が暴力の化身の腹にその爪で貫き、ビッカ大空洞の壁にまで投げ飛ばす。その判断は正しい。だってすぐに治るなら、すぐに反撃を喰らうのも同じだから。多分あの竜は暴力の化身が人間じゃ無いことに気付いてる。


「いいねぇその判断!素晴らしいよ。ここで止まらなかったらどれくらいの距離を飛ばされていたか、やはり漫才に負けるが闘争は楽しいな!」


漫才と闘争は比べるものでは無いと思うけれど、暴力の化身がそう言うのならそうなのだろう。


暴力の化身の口角が限界まで上がり、そして首が胴と離れ落下し、地面にぐちゃりと頭が破裂した。弾け飛んだ頭の血肉が膨れ上がり、人の形を成し、暴力の化身がもう一体。


首無しの方は欠損部位を即座に再生。これで二対一。その間に紅い竜からは全身の鱗が剥がれ落ち、そして意思を持ったかのようにそれぞれが空中を飛び始めた。鱗の剝がれた部位は化身に負けず劣らずの速度で鱗が再生。


「……おー、おー、殺意と鱗の雨あられ」


空を浮かぶ鱗の速度が増し、暴力の化身に放たれる。見える限りの鱗一発の威力は、岩盤を貫き天井を砕き、上に放たれた1つの鱗が大地を貫き大気圏を貫き宇宙空間に達するレベル。


そしてそこに爆炎の吐息が追加。もしここに人間がいれば、地獄絵図と形容するだろう。


……終わった。戦闘終了。


「いやー久々に楽しめたよ。まっ、もう飽きたけど。さよなら伝説級ドラゴン」

暴力の化身が私と悪意の化身と合流し、そんなことを呟きながら腕を伸ばす。その手には赤黒い液体が付着していた。


紅い竜は全身に穴が開けられ、そこから赤黒い液体がトロトロと流れ出る。


客観的に見ても、私から見ても死にしか見えない。けれど当の本人はその事実を受け止めきれず、ただ数十秒立ち続け、全ての限界を迎えその場に倒れて逝った。


暴力の化身が指を鳴らす。その音と共に、目の前の暴力の化身以外の暴力の化身が全て消失した。


暴力の化身と紅い竜の闘争の決着は、ただ紅い竜の反応速度に暴力の化身を視認できなかった。ただそれだけ。


「存外呆気ないものだな」

ようやく終わったかと呟きながら悪意の化身が地図を広げ、いち早く歩き始めた。暴力の化身が追いかけ、私もその後を追いかける。

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