37話 悪意の化身の助っ人 その名は……
悪意の化身の言われるがままに着いて行って、到着したのは半円状に掘られた空間。
円周は中心に向かって下に降りる階段になっていて、1番下の中心には複数人の人間が変装して何か言っていた。
「あ、公開劇場ですね。偶にここで劇団の人達がここで劇をするんですよ。結構人気で、私もこの街に来た時はほぼ必ず観に来ます」
確かに、階段にはまばらに座ってあれを聞いて見ている人間が沢山。数十人はいる。
「……気配はここのはずだが……」
悪意の化身がそう呟きながら周囲を見回す。
そして、1番端っこにブツブツと呟いてる……化身が1体。
「……真面目に頑張ろうとする気は感じられるが……気張り過ぎて体が硬い……その上観客側をチラチラと見て様子を伺う……誤魔化しているが主役が何度か言い間違い、しかもヒロインもかなり……ミスで転んだのをアドリブで何とかしたが普通に失態……脇役の棒読み多数……アタシの耳に聞こえる範疇だと、裏では小道具を落として幾つか修理不可……さらには笑い無し。興味が冷めた、ゼロ点だ」
メモ帳を片手にダメ出しを呟く女性の姿をした存在に、悪意の化身が早足で近寄る。
「笑いを求めるなら日本に帰れ。劇にはお門違いだろうが」
「そっちから呼び出しといて中々酷いな。そして相変わらず生と死の化身には甘々だなぁ?悪意の化身」
「久しぶり」
「あぁ、久しいな。そうだ!少し前に面白い新人が現れたんだ!今度一緒に漫才を見に行こう!お前も気に入るはずだ!」
「ふぅ……念の為、周帯無吸音具を起動して置いて正解でした……」
リンがいつの間にか持っていたそれを起動し、額を拭った。
「紹介する。助っ人の暴力の化身だ。この世界にいる時の呼び合う名前は生と死の化身はユウ。俺はアクイ。そして暴力の化身はボウと呼ぼう。それで良いな?」
「…………ぶっ!はははっ!はは、ははは!暴力の化身だからボウって、安直すぎ!ははは!はははははっ!」
「因みにかなり笑いの沸点が低い上に笑いのツボがかなりおかしい」
確かにおかしい。笑うと言う感情を化身が持っているのは。私も悪意の化身も笑う、それもツボと言うものとは完全に無縁。化身の中で唯一の様々な感情を持つ存在。それが暴力の化身。
「せめて直読みじゃ無くて捻った名前にしてくれ。案は無いのか?無いか。ならアタシが決める。ふーむふむ。アタシに関係がある名前となると……暴力を別言語で直訳すると『ヴァイオレンス』。なら、それから文字を取って…………ヴァレス」
ヴァレス……
「ヴァレスか。よし、それで行こう。それでは再び受付に向かい、大会への参加をしようか」
そう言うと悪意の化身があのコロシアムに向かって歩き始めた。リンがその隣を歩き、私と暴力の化身はその後ろを歩く。
「事情は知ってる?」
「まぁ大体。周りの会話に聞き耳を立てれば嫌と言うほど現状を理解できる。それで……下に潜む元親友とは、仲良くやってるか?」
「…………分からない」
「……そうか」




