35話 護衛依頼の終わり 永久保留の依頼報酬
「キャアアアァァ!!」
廃人になったトートをデムランが背負って樹海を進んでいると、少し前にゴブリンに襲われていた村から悲鳴が聞こえた。
少しの間を置き、デムランがトートを私に渡してシュシアと一緒に村に向かって走り去って行った。
取り敢えず私と悪意の化身は歩いて村に向かう。
到着する頃には全部が終わってた。
地面に転がっているのは人間。多分盗賊。全員のびてる。
「先程の件と言い、本当に本当にありがとうございます!もうどうお礼をすれば良いか……」
深々と頭を下げて来たけど、お礼なんて要らないし……そもそも私が背負ってるトートの状態が……
「あー…………あー、あくい。トート。ん」
背負ってるトートを悪意の化身に見せたら、そうだったと言う顔になった。
トートが廃人になってるから、自主的に口を開かないし強引に食べ物を捩じ込んでも咀嚼できないからそのまま飲み込んで胃の胃酸が負けてお腹を壊すかも知れない。餓死するかも知れない。
だから少し急いで、日が暮れる前にシュッダの街まで進まないと。主に悪意の化身の提案、私は賛成した。そしてデムランとシュシアの2人も賛成した。だから全員で急ぐ。
「ユウ様アクイ様!護衛依頼に行くのなら未然に仰って下さい!今回は1日で戻ってくれましたが、ユウ様とアクイ様が護衛依頼を受け数日帰らないと聞いた時は見捨てられてしまったかと……!」
トートの護衛依頼を朝に受けシュッダの街から出発し、道中ゴブリンに襲われる村を助け、そして遺跡がある洞窟がある穴に到着し、先にある遺跡の塔の更に下にある王国の遺跡に封印されていたあれの封印をトートが解除し、あれを私が消し去ってデムラン達と合流し、2人に何があったかを説明して遺跡を後にして帰還しているとさっきの村が盗賊に襲われ、お礼を受け取らずシュッダの街に直進して今は真夜中。
そんな中、私と悪意の化身が戻るとリンが店内の商品の片付けや整理をすぐに止めて私と悪意の化身を椅子に座らせてきた。取り敢えず従う。
リンの色は怒りと寂しさ。何故そんな感情なのかは私には分からない。すぐにリンが暖かい料理を用意して来たけど、本当に、感情と言うものがもう……分からない。
廃人になったトートを預けてたデムランから、冒険者ギルドに来てくれと朝から言伝がグレイ商会の客越しに来た。
取り敢えず悪意の化身と一緒に冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに到着したら、そこにはデムランとシュシアと困り顔のギルド長がそこにいた。トートがいないけれど、私が冒険者ギルドの入り口で立ち止まっているのを見かねたデムランがこっちに来いと言った。言われた通りにそこに向かう。
「……あー、事情はデムランから聞いた。何と言うかそのー……大変だったようだな。トートとやらは昨夜突然錯乱し出してな。止める暇も無く自害してしまった。ここまでは良いんだ。後は王都のお偉いさん方にトートの身辺調査とか諸々ぶん投げればそれで済む話なんだが……」
どう言う訳か、ギルド長が歯切りが悪そうにそう言った。私としては、トートが錯乱して死んだのは想定内。そもそも精神関連に私よりも秀でた悪意の化身が直接精神を破壊した。そんなことをすれば廃人化して衰弱死か発狂死は免れない。何回か見て来たし。
悪意の化身は加減を間違えたって言う顔をしてるけど。
「それでたな。本題は……昨日の護衛依頼の件で、依頼主が自害して、しかもその依頼主が危険人物。そして1番重要なことは我々冒険者ギルドの目を盗んだのか先払いされていた依頼料が無く、不正に依頼をしていた。つまり……4人全員に払う為の依頼料が無い。ゼロだ」
それだけ?私にしては、それだけとしか思えないけれど。
「つまるところ……依頼料は永久保留という形になった」
デムランとシュシアは疲れた様子。確かに現物と気持ちの見返り無しでこの結果だと、多少暗い色になる。




