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34話 竜を退けた者と強者を圧倒した者 化身とは何か

…………

「……疲れた」


何年……いや、数億年くらいかな……化身としての……本来の姿になったのは……


最後の方は怨念が出てきちゃったし、たまには本来の姿にならないと色々と忘れる…………


「ねぇ、あなたはあの頃に戻りたい?私は全部忘れて、戻りたい」

『……………………』


……引っ込んで静かになった。



◆◇◆◇



「何処に行くつもりだ?」


骨はもう何本も折れているだろうに、逃げる勇気は湧くものだな。まさか俺は目を離した隙にこんな場所まで逃げるのは少々予想外。


あっちも終わったし、俺もやることは済ませた。後は……


「?!……な、何故ですか。あり得ない。人智を超えた存在なんですよ!神々ですら苦戦し挙句封印するしか無かった、ドラゴンの全盛期……あの小娘は何者ですか?!アレがまさか神や英雄だと言うのですか!」


完全にこちらが有利だとしても、油断はもうしない。怯えている雰囲気を装い俺の首を切り飛ばそうとするか……槍を弾き折り腹に軽く一撃を入れよう。


「ぐっ……げぼっ!」


おっと加減を間違えた。内臓が幾つか破裂したな。致命傷だがギリギリ生きている。鎮圧できたし結果オーライだろう。


「さて、本当に知りたいのなら、俺とユウ……いや、悪意の化身と生と死の化身が何者かを教えてやろう。神よりも上の存在だとユウが言っていたが、信じてくれよ?」


完全に怯え切っているな。痛みも合わさり、自らが下だと言うことを認識してくれたか。


「我等は化身。概念の結晶体。俺の場合は、悠久の彼方で人間から発生し蓄積し意思を持った悪意。純度100%の混じり気無しの概念存在。故にこの世界の上位存在である神ですら、俺や生と死の化身にとっては下位存在に過ぎない」


……説明の壮大さに理解が追い付いて無い、か。そうだろうな。神と呼ぶ、呼ばれる存在以上が化身だと言っても、理解にはそれなりの時間と実体験が必要になる。実体験はもう終えている。後は理解に掛かる時間。


俺の場合は……例の1つ。生と死の化身は別の道を辿り化身になった。故にあの業を招いた……


「有り得ない……あり得ない……ありえない……」


理解が追い付いたようだ。もう充分だろう。この人間を生かせばその思想と実力的に後々世界に実害をもたらす。だがこの場で殺せば生と死の化身にとって後々面倒なことになる。


ならば……

「〈悪逆浄化あくぎゃくじょうか〉」


まずは身に宿る悪意を浄化する。ただ、悪意がほぼ無いから、そこに悪意を強引に植え付けてそこから精神を破壊。


結果、廃人と化す。これでほぼガワだけの状態になった。喋らない、起きない、覚さない。これで、生と死の化身にとって負となる障害は取り除けただろう。



◆◇◆◇



「何かあった?」


地に伏して虚な目と共に唾液が口から流れ出るトートと、多分何かした悪意の化身がいた。


「こいつの精神を破壊した。これでこちらにとっての害意はもたらされないようになるはずだ。あっそうだ。取り敢えず内臓を幾つか破裂させてしまったから、死なない内に再生してやってくれ」

「……?分かった」




全部終わった。あれを完全消滅させたし、精神を破壊されたトートの内臓の修復も終えた。


「おーい、お前達!下からかなり揺れたが、何かあったんだろ?!」


上の洞窟に開いた穴から、デムランとシュシアが顔を出し声を浴びせて来た。そしてこちらの返答を待つこと無く、デムランが器用に上の洞窟の穴に続く岩の壁を落下死しないように降り、シュシアは浮遊してゆっくりと降りて来た。


降りて来た2人と合流すると、何よりも先にトートの状態に対する説明を聞いて来た。私はほとんど何も知らないから、説明は全部悪意の化身に任せる。


全部の説明を悪意の化身が終わると、今の説明を聞いたシュシアが廃人と化したらしいトートを見つめ、化身である私や悪意の化身にしか聞こえないような静かな溜息を吐いて汚物を見たような目でトートを見つめた。


「あぁ、そうか」

シュシアが手を頭に乗せ押さえつけて、地の底のような声で捻り出すようにそう言った。


「とある山にある槍の道場。多くの実力者を輩出し、槍を学びたければその門を通れと言われたそこには、槍術の基本と地を裂き天を貫くと言われ代々継承されて来た『地裂槍グランドスピア』を教えていた」


急にシュシアが独り言に近い説明のようなものを発し始めた…………ん?ぐらんどすぴあ……?


「けどある時、2人の門下生が突如として師と他の門下生を皆殺しにし、姿を眩ませた。その2人の名は、ヤガザ。そして、トート」


……デムランが凄い呆気に取られてる。悪意の化身は納得しているみたいだけど。


「ヤガザについて調べていた時に知った。もう復讐は終わったから完全に忘れていたけど、まさかこんな近くに……」


「…………今回は、真面目に依頼をやるつもりだったんだがなぁ……」

心の底から捻り出すような声で明後日の方向を見ながらデムランがそう呟いた。

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